2019.3.5 06:40/ Jun
ひとは、根源的に「変化」を嫌うものです。
できることなら、ジッとしていたい(笑)
ひととは、
今日も、明日も「変わる」よりは、
今日も、明日も「昨日」のようにありたい
と願う生き物のようです。どうやら、そのその「根っこ」では・・・(笑)。
そのような性質をもつ、ひとには、いわゆる「現状維持バイアス」というものが働きます。
ここで「現状維持バイアス」とは、ワンセンテンスで申し上げるのならば「現状維持の価値を高く見積もるバイアス(偏見:囚われ)」のことをいいます。
今、仮に、何かを変化させてしまえば、何らかの「利益」も生じるかもしれないけれど、「損失」が生じる可能性もあがる。ひとは「利益」と「損失」が目の前に差し出されると「損失」の方がすごく大きなもののように見えてくる。
つまり、得られるかも知れない「利益」よりも、今から失ってしまう「損失」の方が、気になって気になって仕方が無い。
かくして、
「何かを変化させるくらいならば、現状維持することの方が得じゃねーか」と「現状維持の価値」を高くみつもるバイアスのかかった判断が生まれます。
▼
ここで問題は、
「本当に、何かを変化させなくても、現状が維持できるのか?」
ということの「1点」につきます。別の言葉で申し上げるのならば、「本当に、何かを変化させなくても、現状のまま利益を享受できて、損失を回避できるのか」ということです。
「何かを変化させなくても、現状が維持できる」のであれば、先の「バイアス」は「バイアス」ではなく「正常な判断」です。
何も好き好んで「変化」そのものを「目的」にしちゃう必要はない。「革命家」でもない限り、「変化させること」が「自己目的化」するのは本末転倒です。もし「現状維持」で「現状維持」できるのであれば、その方がいいに決まっています。
しかし、シャバに、あまたゴロゴロと転がっている事例では、多くの場合、そうではありません。
今、変化しないと、沈没する、以上。
この日本には、そういう事例が、3万6000事例くらい転がっているのです。
悲しいことにシャバの世界では「今、何かを変化させなければ、おそらく、近い将来に沈没してしまうもの」が、あまたございます。しかし、ひとは「現状維持バイアス」に囚われているので、それを見ようとしません。たとえ外部環境が「変化」していることには気づいていても、「まだ、いけるはずだ」と「現状維持の価値」を極大化して見積もってしまうのです。あるいは「しめしめ、おれだけは逃げ切れるぜ」と考えてしまう。
かくして、
船底に「小さな穴」があいていて、少しずつ沈没しかけている「巨大豪華客船」のなかで、カクテルパーティが繰り広げられている
といったような「滑稽すぎる組織事例」が生まれます。
今日も、昨日みたいに、カクテルパーティかまそうぜ!ウェイウェイ!
あのさ・・・船の底に、穴があいて、水入ってきてるよ。
少しずつ、船、傾いてるよ。
関係ねーぜ、そんなの、じきに塞がるぜ! ウェイウェイ!
誰か、修理をしてくれるぜ、ウェイウェイ!
飲もうぜ、ウェイウェイ!
かくして「現状維持バイアス」は「約束された沈没」を引き起こします。
周囲を見渡せば、そのような組織は、数多くございませんか?
▼
今日は「現状維持バイアス」ということについて書きました。
この「現状維持バイアス」というやつは、非常に強固で、変化しにくいことで知られています。最大の問題は、こうしたバイアスにかかったひとを、いかに「変化させるか」ということですが、それはまた次回のお話で。まぁ、個人的には、3つくらいしか方法がないんじゃないか、と思われますが、皆さんでしたら、どうお考えになりますか?
あなたの周囲には、「船底に小さな穴があいているのにカクテルパーティしている豪華客船」は、ございませんか?
あなたは、現状維持バイアスに囚われていませんか?
あなたの組織は、「船底に小さな穴があいているのにカクテルパーティしている豪華客船」ではありませんか?
そして人生はつづく
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