NAKAHARA-LAB.net

2018.11.14 06:48/ Jun

「この仕事をやり続けた先に、何があるのかシンドローム」と「会社は意味製造器じゃねーんだぞ!」の激しい葛藤

「なぜ、わたしは、この仕事をやっているんだろう?」
「この仕事をやった先に、いったい、どんなキャリアがひらけるのだろう?」
「このまま、本当に、ここにいていいのだろうか」
  
  ・
  ・
  ・
  
 多くの企業・組織で「2年目問題」とか「3年目問題」と呼ばれる問題が起こって久しいものです。
 いわゆる「2年目問題」「3年目問題」とは、新入社員等の若手人材が働き始めて数年たち、たとえば、2年目・3年目以降に、冒頭に述べたような思いに駆られ、離職をしていくことです。3年目以内の離職なら「早期離職問題」といっても差し支えないのかもしれません。
  
 早期離職に至る原因は、様々なことがわかっています。
 それは、職場の人間関係のトラブルではないか。それは仕事のマッチングがうまくいっていないせいではないか・・・。労働環境・職場環境の悪化のせいではないか。
  
 離職の原因は、ケースバイケース。そして、どの「層」の若手によってかによって、それらは大きく変わってくることが予想されます。
  
 ただ、僕が知っている若手の離職に絞って言えば・・・直接の引き金になっているのは、どうも、そういうことでもありません。
  
 端的に言ってしまえば、それは「今、ここで働く意味が見失われていること」ーすなわち「働く意味の喪失」にあるような気がします。

 それが冒頭に申し上げたような思いです。
    
「なぜ、わたしは、この仕事をやっているんだろう?」(Why me?)
この仕事をやった先に、いったい、どんなキャリアがひらけるのだろう?」(Why work?)
「このまま、本当に、ここにいていいのだろうか」(Why here?)
  
 このような3つの「Why」があたまをもたげ、ついつい、「仕事人生のリセットボタン」を押してしまう人も少なくありません。
    
 もちろん、このようなお話をすると、世代によっては、こんな反応を思わずかえしたくなる方もいらっしゃるかもしれません。
  
 オマエは、意味だけで、食ってんのか?
 会社は、意味製造器じゃねーんだぞ!
  
 気持ちはよくわかります。おそらく、意味など問わず、ただただ前にある仕事をこなし、ひとつの組織で働いてきた方から、それが「何ぬるいことを言ってんだ」という思いがもたげてきます。
 ただ、おそらく、日々の長時間労働に疲れ、満員電車に乗る日々がつづき、ふと、我にかえったとき、若手を襲うのは「働く意味の喪失」なのかな、と思います。
  
 俗にはよくミレニアル世代は、「意味の世代」とも言われます。「働くことの意味」「働いた先、自分がどのようなキャリアがひらけるか」という意味が、彼らの大きなモティベーション要因になっていると言われます。
  
 最近のことばでいえば「Purpose(目的)」を重視したマネジメントが喧伝されるのは、そういうが後景にあるのではないか、と思います。
  
  ▼
  
 それでは、このような状況に、なぜ若手は陥ってしまうのでしょうか。
 それはおそらく、「ドカーンとチョロン問題」と僕が呼ぶ問題も、その理由のひとつでしょう。
  
日本の人材開発は「ドカーン」と「チョロン」?:「手厚い新人教育」と「手薄な管理職支援」の謎!?
https://news.yahoo.co.jp/byline/nakaharajun/20170824-00074876/
  
 
  
 端的にいってしまえば、日本の人材開発投資は、しょっぱなの新人教育時期に「ドカーン」とやるのはいいのですが、その後は、「チョロン」とした感じの「放置プレイ」が多いのです(上記の記事では管理職支援が手薄だと書いてありますが、実務担当者時期以降、ずっと手薄です)。とりわけ、今は現場のヒーヒーに動き続けておりますので、そうした傾向は強いような気もいたします。
  
 その結果として、
  
1.実務担当者になって以降、長い期間、仕事漬け・仕事三昧の状況に置かれる
2.上司や先輩とのコミュニケーションなどが不足し、目標「握れず」、フィードバックも不足する
3.「自分を映し出す鏡」などが不足するため、「働く意味」が喪失しやすい
  
 ということなのかな、と思いますが、いかがでしょうか?
  
  ▼
  
 今日は「働く意味の喪失」という観点から、若手の離職問題について述べてきました。くどいようですが、離職の理由は、若手がどのような職場で過ごしているのか、はたまた業界によって異なりますので、一概には言えません。
  
 また、離職が一概に悪いというわけでもありません。会社経営の観点からいえば、残って欲しい人材に残って欲しい、というのが本音でしょうけれど、さりとて、人手不足時代にあっては、現場は常にひとを欲している、というのもまた現実でしょう。
  
 そのようななか、今日、僕が「働く意味の喪失」という問題を掲げたのは、
  
 ひとは、自ら「意味づけられないこと」を長く継続できるほど、強くはない
 ひとは、自ら「意味」をもとめる存在である
  
 ことをお話ししたかったからです。
  
 たかが意味、されど意味
  
 でしょうか。生命を脅かされない程度に充足した先に、ひとを待ち受けているのは、「今、自分はなぜここで働いているのか」という「意味」の問題です。
  
 これからの組織は、きっと働く人々が、「今の仕事を意味づけるか」という機会を与えることになるのではないか、と思います。端的にいってしまえば「引き留めの重要性が増す」ということになるのでしょうけれど、そういう現場は増えていくような気がしています。
  
 あなたの組織の若手は、「働く意味」を見失っていませんか?
 あなたの組織の若手は、「ここにいて、いいんだろうか」という思いにかられていませんか?
 あなたの組織は、「意味のマネジメント」がきいていますか?
  
 そして人生はつづく
  
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