NAKAHARA-LAB.net

2018.10.17 06:33/ Jun

あなたは、聞き手をただちに「どん引き」させてしまう「言葉」を用いていませんか?

 言葉ひとつで「どん引き」
 言葉ひとつで「シャッターを降ろされる」
   
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 大人・成人相手のワークショップや研修の場合、こうしたことが、本当によく起こります。
 (子ども相手のワークショップや研修もそうなのかもしれません)
  
 どんなによいコンテンツを持っていても、使う「言葉」をひとつでも、間違えてしまうと、受講生が「カチン」ときてしまい、それ以降は、何を言っても聞いてくれなくなる。そうしたことがよくおこります。
 感覚的には、効果の出ない研修やワークショップのほとんど、参加者からの満足度やその後の研修転移度が低いワークショップの7割は、こういうところで生まれます。
  
 伝えている内容は、悪くない
  
 しかし
  
 その際に用いている「言葉」が悪い
  
 だから
  
 シャッターを降ろされる、「どん引き」される

 効果はでない
 だから、実践されるわけがない
  
  ▼
    
 もっとも気をつけなければならないのは、「相手のこれまで(過去)を安易に否定してしまう言葉」です。
 自分としては、そのつもりはなくても、聞いている側からすれば、「えっ???」と感じてしまうと、アウトです。だから難しい。
  
 とりわけ、注意が必要なのはこちらです。
  
「過去からしばらく、学習者本人も、ずっと気にかけてきて、これまで一生懸命実践してきた内容」
  
 について、レクチャーを行うときには、「用いる言葉」の「一言一句」に神経を尖らせる必要があります。これは自戒をこめて申し上げます。
  
  ▼
  
 たとえば、わかりやすいので「働き方改革=長時間労働是正の研修」を例にだしましょう。
   
 長時間労働是正のための研修やワークショップでは、「無駄な残業時間を減らしましょう!」としょっぱなから脳天気に述べてしまうと、受講生のシャッターは、ただちに閉まるでしょう。どんなに内容がよくても、です。
  
 なぜか?皆さん、おわかりになるでしょうか?
  
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 先ほどの文言の「無駄な残業時間」の「無駄」とは、講義をしている側が勝手に意味づけていることです。また、相手は過去に一生懸命仕事をしてきたのであって、それを「無駄」とは思っていません。
 自分が一生懸命努力してきて「無駄」だとは思っていないことを、研修のしょっぱなから「無駄」だと言われれば、そりゃ、カチンとくるのが関の山です。
   
 なに、コルァ!おのれ、研修のしょっぱなから、
 わたしのやってきた仕事が「無駄」だって、抜かすのか、このアホンダラ!
  
 と0.0001秒で陥るのが関の山です。
 シャッターがらがらがらがら(涙)
  
  ▼
  
 もうひとつの事例。
 わかりやすいので「女性活躍推進」を事例にして話しましょう。
   
 女性ばかりを集めた研修で、研修のしょっぱなから、「みなさん、これからは、どんどん活躍いただけるよう、頑張りましょうね」なんて、脳天気に述べてしまえば、瞬殺・シャッターがらがらの刑です。

 なぜでしょう?
  
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 きっと聞いている側は、こう感じるのです。
    
 なに、コルァ!
 わたしは、これまで一生懸命頑張ってきたのに
 おのれは、わたしを活躍してない、と抜かすか!
 このアホンダラ!
    
 きっと、0.0001病で、勝負がつきます。
 どんなにその後の内容がよくても、シャッターがらがらの刑です。
   
 なぜなら、聞いている側には、「どんどん活躍してください」という言葉の背後には、「これまでは活躍していなかった」というニュアンスを感じてしまうからです。
    
 おわかりになりますでしょうか?
 神はディテール(細部)に宿るのです。
相手の過去」にリスペクトがない言葉は、ただちに相手に検出されます。
    
 たかが「言葉」、されど「言葉」
      
  ▼
    
 今日は、研修やワークショップで用いる「言葉」についてお話をしました。これは僕自身も失敗を積み重ねてきた内容です。
 
 現在では、僕が研修開発をするときには、一言一句、用いる「言葉」について吟味をチェックします。それを聞いている人が、どのような気持ちで、何を思って聞くのかを検証するのです。
 研修開発とは、非常に緻密な緻密な「言葉の精選」と「意味づけの組み立て」なのです。「パワポをスコーンとつくること」が、研修開発ではありません。
  
 いいことを言ってるはずなのに、どうも聴衆の反応が今ひとつ。
 こんなに自分の言葉が響かないのは、聴衆のせいだ
  
 と思っている方々がもしいらしたら、自戒をこめて申し上げますが、注意が必要です。とりわけ、一度でも「聴衆が悪い」と思ってしまった方は黄色信号かもしれません。「相手に刺さらないプレゼンには、たいてい、プレゼンの側にわけがあります」
  
 もし本気で、それを改善したいのならば、プレゼンをビデオで撮影したり、音声録音して、聴衆に近いひとに聞いてもらえば、ただちに厳しい部分が「検出」できるはずです。研修開発では、こうして「品質チェック」をします。
  
 あなたは、些細な言葉ひとつで「シャッターがらがらの刑」を誘発していませんか?
  
 あなたは、自分が受けた研修で、講師のひと言で、「どんびき」したことがありませんか?
  
 そして人生はつづく
  
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