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2007.2.20 17:00/ Jun

もう生かしてくれなくっていいんだよ:伊丹十三「大病人」

 先日、ビデオ屋さんをプラプラしていて、ある趣向を思いついた。同じモチーフをもった映画を2つ借りて見比べる、という「遊び」である。
 初回は「生きること/死ぬこと」にした。それで借りてきたのが、伊丹十三監督の「大病人」と黒澤明監督の「生きる」である。
  
 どちらの作品も主人公が、「ガン」におかされ、余命を宣告される。「死ぬこと」が目前に迫ってはじめて「生きることの意味」が意識されるようになる、というモチーフが共通している。
 —
 昨日は「大病人」の方を見た。
 ある有名俳優がガンを突然胃ガンを宣告される。余命は1年。今から14年前(1993)の映画であるので、当時の様子がよくわかる。
 当時は、「告知」はまだまだ多くなかったんだろうね。あと、「緩和ケア」という考え方もなかった。
「死を安らかに迎えたい」患者と、「生かすことを優先する」患者と医者の対立が、当時としてはセンセーショナルだったのかな、と思う。
 下記の台詞が印象的だった。
 —
 オレにとって一番重要なのは、今から死ぬまでをどうやって生きるかってことだ。もう直してくれなくってもいいんだよ、先生。もう生かしてくれなくってもいいんだ。
 よーく考えて欲しい。
 オマエがオレの立場だったらどうする? 抗ガン剤や放射線で一ヶ月寿命を伸ばして欲しいと思うか?
 これがオマエがホントウの医者になれるかどうかの正念場だ。よく考えて答えろ。
 死なすと考えるなよ。死なすまでこのジジイを生かすと考えればいいんだよ。
(オレは)ホントウのことを教えてもらってよかったよ。
 オレは死なないつもりで生きてた。結局生きてなかったんだ。オレはね、先生。今、生まれてはじめて生きてるんだ。
 オレは幸せだよ。
 —
 今日は、「生きる」を見よう。黒澤映画の最高傑作のひとつと言われる作品です。恥ずかしながら、今まで見たことがなかった。楽しみだね。
  

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