2018.7.11 05:52/ Jun
360度フィードバック(多面評価)という手法があります。
今、組織内に、評価を与えたい、フィードバックの機会を与えたい「Aさん」がいるとします。360度フィードバック(多面評価)は、Aさんの上司、同僚、部下など、Aさんの仕事環境にいる「多様なステークホルダー」から、Aさんの行動や振る舞いを、いくつかの観点から、評価してもらいます。
たとえば「(Aさんは)話を傾聴することができる」という質問項目があったとします。上司や先輩は、Aさんの仕事ぶり(傾聴できるかどうか)を評価して、「まぁまぁだ」ということで「3」をつけるかもしれません。
しかし、同僚や部下にあたるようなひとは、Aさんはいつも話を聞いてくれないので、この項目に「1」をつけるかもしれません。一方、Aさん自身は、自分の仕事ぶりを高く評価しているので、この項目に「5」をつけるとします。
このように360度フィードバック(多面評価)では、「本人の評価」と「周囲の評価」とのあいだに「ズレ」が生まれます。
360度フィードバック(多面評価)では、この「ズレ」をAさんにフィードバック(現実通知)することで、Aさんの仕事ぶりを「改善」したり、「補正」したりすることをめざします。
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360度フィードバック(多面評価)では、いまや様々な企業などで、幅広く、管理職の行動改善などに導入されている手法です。リーダーシップ開発の手法としても、もっとも「定番」。レビュー論文などを読みますと、先行研究の数も、もっとも多い手法のひとつでしょう。
360度フィードバック(多面評価)は、当然のことながら、組織への「導入時」には、大きな「抵抗」を生んだり、「葛藤」を生み出します。
たとえば、この場合の「抵抗」や「葛藤」としては、
部下のあいつに、オレの仕事ぶりが評価できるわけがねーじゃねーか、コルァ
とか、そういった現場マネジャーからの「怒り」を予想すればいいのではないでしょうか。
組織内においてメンバーが相互に評価を行うので、そのあとで生じる様々なコンフリクトを考えると、及び腰になってしまうのです。「評価されることに関する不安」、いわゆる「評価不安」が、組織内に一時的に増幅します。
しかし、経験上、360度フィードバックの導入で本当に怖いのは、こうした「導入時の抵抗や葛藤」ではありません。
そういうのは、一時的に高まりますが、しっかりと説明をして、目的と意義を説明すれば、乗り越えられない壁ではありません。
実際、僕の周りでは、かつて360度フィードバック(多面評価)を導入しようとして「頓挫」した事例を知りません。結局、最後は導入できます。
要するに、他の多くの変革時に対するメンバーの振るまい同様、
総論賛成、各論反対
大筋OK、懸念は表明
頭では理解、感情的にはNG
なのです。
もっとも怖いのは、360度フィードバック(多面評価)を複数回経験したあとにおとずれます。
360度フィードバックを連続的に受けてくると、今度は、参加者の方が「フィードバック慣れ」をしてくるのですね。
あー、いつもの、360ね。だんだん慣れてきたね
結果でたから「回覧」ね、やりゃいーんでしょ、やりゃ。
へー、ほー、はー、ふーん。
おれ、傾聴が「1」だったんだ。
ダメダメだよね、オレ、、、わかってんだけどね。
ま、結果は見ましたよ。
毎回毎回変わらないねー。
じゃ、仕事、仕事。
客先、いってきまーす。
人は、おんなじようなフィードバックを複数回受けると、確実に「フィードバック慣れ」をしていきます。フィードバックに慣れてくると、このように「フィードバック不感症」に陥っていくのですね。
とりわけ、360度フィードバック(多面評価)の結果を「回覧」で済ませたり、本人に送って終わりにしているような企業では、こうした症状が多く見られるような気がします・・・経験上。
皆さんの組織では、「フィードバック慣れ」が広まっていませんか?
フィードバック慣れが広がった組織では、
どんな惨い360度フィードバック(多面評価)のデータを見せられても「ああそう、そうだよね。私もそういうところあるし…」で終わってしまいます。
反省するべき360度フィードバック(多面評価)のデータを見せられても、「へー、ほー、はー、ふーん」で、「華麗なるスルー」をかまします。
皆さんの組織では、「フィードバック不感症」に罹患した人が増えていませんか?
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このように、360度フィードバックは「慣れ」や「形骸化」との「闘い」です。
いったん「フィードバック不感症」に罹患してしまった人のメンタリティを「解除」するのは、「導入する」ときよりも、大変です。
重要なのは、360度フィードバック(多面評価)をすること、ではないのです。
きわめて大切なのは、360度フィードバック(多面評価)の結果をいかに、しっかりと「かえして」、本人に現状を理解させ、行動を補正するために「考える」ための時間と機会をもつのか、ということです。
すなわち、フィードバックをしっかりと「活用すること」が極めて重要。
そのうえで「フィードバック慣れ」を防ぎ、さらにその先に広がる「フィードバック不感症」への罹患を防止することが、何より大切なことであると感じます。
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今日は360度フィードバック(多面評価)について書きました。
360度フィードバック(多面評価)は、Webツールの導入もあって、最近は簡単に行うことができます。
しかし重要なのは、
360度フィードバック(多面評価)を導入・実施こと
ではなく
360度フィードバック(多面評価)を、いかに返すのか?
です。
あなたの会社には「フィードバック不感症」に罹患した管理職が、ふえていませんか?
そして人生はつづく
(かつて「人がひとを評価することなんか、おこがましくてできない」とおっしゃって、360度フィードバックを拒否していた管理職の方がおられました・・・でもさ、あなたは「管理職」として、部下をゴリゴリに評価してるんぢゃないの? それは「おこがましく」はないの? 世の中は、喜劇よりずっと面白いですね。)
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