2018.5.17 06:17/ Jun
世の中に、研究の「やり方」や「方法論」や「手続き」を論じている本は、たくさんあります。
しかし、
研究とは「何」であるのか?
あるいは
研究とは「何」でないか?
を論じている本は意外に多くはありません。
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学部生向けの授業で、「研究とは何か?」を教えなくてはならないので、この数週間、研究方法論にまつわる、いろいろ本を読みました。自分でも過去の読書遍歴をたどり考えましたが、考えに煮詰まり・・・
「どなたか、よい本がございましたら、ご紹介ください・・・」
と、Facebookでも、質問をなげかけさせていただいたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
専修大学の望月先生、神戸大学の服部先生、武蔵大学の森永先生、京都外国語大学の村上先生、中原研の代が均整の伊倉さんなど、多くの方々からご助言をいただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。ありがとうござました。
そのあと、先生方からいただいたアドバイスを読みつつ、うだうだ読書をすすめてみて、僕の領域で、僕のゼミ生にあう、しかも僕の好みと独断と偏見で選んだベストな本は、下記の組み合わせかなと思いました(分野によって、この答えは違うと思います・・・どうかご容赦を!)。
まず「研究とは何か?」を知らせる本としては・・・
+
かな、と思いました。
(僕にとっての)結論は、高根正昭先生の「創造の方法学」と田村正紀先生の「リサーチデザイン」です。
前者は、いまから25年くらい前、僕も自ら恩学部時代に読んだものですが、今読み返しても、古くなっていない印象がありました。後者は「リサーチをデザインする」という観点から「研究とは何か」を論じている本です。
次に、それらがわかったうえで、さらに一歩進み「定量研究とは何か?」とか「定性研究とは何か?」を知らせる本としては、定量の方が、ハンス・ザイゼルの「数字で語る―社会統計学入門」、ロウントリーの「新・涙なしの統計学」。
定性の方が、佐藤 郁哉先生の「フィールドワーク―書を持って街へ出よう」、小池和男先生の「聞き取りの作法」かな、という印象を持ちました。
【定量的手法】
+
【定性的手法】
+
ザイゼルの「数字で語る」は、僕が学部生の頃に読んでいた本です。今読んでも、クロス表だけで、これだけの論理をつくりあげることができるのが圧巻です。
「新・涙なしの統計学」は、「数式がない=涙なし」という点で、人文社会科学系の学生にはいいな、と思いましたし(?)、網羅的であったことがポイントです。
定性の方は、やはり佐藤郁哉先生の書籍は、体系的かつ網羅的で、必要な知識をすべて押さえておられる、と思いました。小池先生の本からは、聞き取りにかけるパッションといいましょうか、ひたむきな研究の姿勢を大いに学べる印象がありました。
当日はおそらく、これらの本からえた知見を引用しつつ、僕のヘタクソな絵だらけの「板書」で、「研究とは何か?」を解説することになると思います。さてどうなることやら。
▼
僕は、学部生にも大学院生にも、「魚の釣り方」を覚えて、大学・大学院を、卒業・修了にしてほしいと願っています。ここで「魚の釣り方」と申し上げているのは「研究の方法論」であり、「知的生産の武器」です。
お腹がすいたとき(知識が必要になったとき)、シャバワールドでは、誰かが、いつも、口をあけたあなたに「答え=魚」を与えてくれるわけではありません。
そうしたときに、竿をいかにもち、餌をどのようにつけ、どのようなかたちで糸を水面にたらせば「魚が釣れるか=知識を自らつくることができるか」をわかっているひとは、自ら「知識」をつくりあげ、「知的生産」を行うことができます。
「魚の釣り方」さえ知っていれば、誰も魚を与えてくれなかったとしても、「魚」を自ら「釣ること」が出来るのです。
自ら魚を釣って、たらふく、食べて欲しい
武器をもって、町に出て欲しい!
そして願わくば
自ら釣った魚を、他者や社会にもお裾分けして欲しい
そんな思いをもちながら、研究方法論に関する読書を続けていました。
魚の釣り方は、上記のような本で最低限の知識を得ながら、自ら竿を水面にたらし、実践しないことには実につきません。
知識を手に入れたなら、大海原にでて、魚を実際に釣ってみよ=実践せよ!
それがもっとも大切なことかも知れません。
そして人生はつづく
ーーー
ここから数ヶ月、小生、新刊ラッシュが続きます(笑)。
おそらく秋あたりまでに6冊ほどが続けてでていくことになります。
まことにありがたいことです!
トップバッターを飾る新刊のタイトルは「研修開発入門 研修転移の理論と実践」です(ダイヤモンド社)。研修転移とは「研修で学んだ内容がいかに現場で実践され、成果をあげるか」ということです。当日、「研修中は学べてはいる」けれど、「転移のない研修=現場」は実に多いですね。本書は、「研修転移をいかに高めるか」についての理論と、それにまつわる企業事例を論じた本です。
本書の共著者は関根 雅泰さん、鈴木 英智佳さん、島村公俊さんです。ダイヤモンド社の編集者・間杉俊彦さんが伴走してくださっています。
研修転移をうながす企業実践事例では、ここでは名前を差し控えますが、大変多くの方々にお世話になりました。ありがとうございます!
もう、あともう少しです!
どうぞお楽しみに!
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