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2018.5.11 06:08/ Jun

日本のインターンシップとは「いんたーんしっぷ」かもしれない!? : 3日間で「仕事」のことがわかるんですか?

 今年の大学院の授業では、院ゼミで「The Oxford Handbook of Human Resource Management」を原著で読んでいます。また授業「人材開発特論」の方では、「人材開発研究大全」を1章ずつ読み進め、みなでディスカッションをしています。
   
  
  
 せんだっての授業「人材開発特論」では「人材開発研究大全」に収録されているインターンシップの章(北九州市立大学・見舘先生による章)を、みなで、読みました。
 この章は、1)インターンシップとは何か、2)インターンシップの経験が個人にもたらす効果とは何か、3)日本の新卒一括採用の雇用慣行がかわるなかで、インターンシップが現在、どのような問題を抱えているか、を論じている興味深い章になります。
  
 この章をよみ、みなで議論をしていて興味深かったことは、「日本のインターンシップの特殊性」です。
  
 実は、今年の大学院授業は、半分の方が日本人、それ以外の方が海外ご出身の方です。
 そういたしますと、授業で議論をしておりますと、同じ「インターンシップ」という現象でも、日本と海外では、まったくその様式、めざすところ、そして抱えている課題が異なることがわかります。
  
 たとえば、日本のインターンシップは、
  
1)海外からみると圧倒的に「短期間」です
 場合によっては1day(1日)のインターンシップ!?もあるくらいです
  
2)組まれている活動が非常に「多様」で、何を提供されるかは「千差万別」です
 「採用の説明会的なインターンシップ」から、「職場見学」、そして本来の意味での「就業体験」まであります。同じインターンシップというラヴェルで、多様な機会が流通しています
  
3)「採用直結型インターン」は社会的にNGとされています
 「採用直結インターン」は「学業のさまたげ」になるからという理由で、社会的には、表向きにはNGとされています。が、実際は、ファストパスとして機能していたり、インターン時の情報が採用に共有されています。
  
 これに対して、国によって、インターンシップは異なりますが、たいていの場合・・・
  
1)3ヶ月から1年の期間はたらくことを求められる場合があります
 休学をしてインターンをする国、学業が一区切り着いた段階で一時期大学から離れる国まで、いろいろあります
  
2)いわゆる仕事経験そのものであり、「単なる労働」になりはててしまうという脆弱性もある一方、比較的長期をかけて一揃いの仕事を経験させてくれます
  
3)インターン生を採用しようが、しまいが、第三者は知ったことではありません
 基本的に、採用は「採用したい側」と「採用されたい側」のマッチングです。国や行政やら経済団体などの第三者が、とやかくいう問題ではないと認識されている傾向があります。
  
 このように日本のインターンシップは「日本型インターンシップ」と形容しても、よいくらいの特徴があります。いっそのこと、その特殊性を表現するには「インターンシップ」と書くのではなく、あえて、「ひらがな」で「いんたーんしっぷ」と書いておくのがよいのかもしれません(笑)。もちろん、「いんたーんしっぷ」が「悪い」といっているわけではありません。それが様々な歴史的経緯、日本的雇用慣行の事情から、そうなっているのです。
  
 インターンシップが、今のかたちになったかは「新卒一括採用」という雇用慣行と密接に結びついています。新卒一括採用で、もともと横並び意識がつよく、かつ、採用解禁日などが定められている日本と、そうでない海外では、インターンシップの形態も異なります。
 また、日本におけるインターンシップの成立には、海外のインターンシップが行政主導で輸入され、大学や企業がこれに押される形で推進されてきた経緯は大きな影響をもたらしています。
 もともと、自分たちからインターンシップが見いだされたものではないので、大学の送り出し体制、企業の受け入れ体制、またそのメリットがかならずしも、把握されてこなかった経緯があるのかもしれません(最近は変わってきています)。
 そのような事情のなかで、「インターンシップ」が輸入され「いんたーんしっぷ」になっていきました(笑)
    
 ただ、授業のなかで、ある海外の学生さんが思わずもらしたひと言が非常に印象的でした。
  
「日本のインターンシップは、3日間くらいのものもあるようですが、その短い期間で、「仕事」のことがわかるんですか? わたしは半年、インターンシップをやりましたが、それでも、まだ仕事が、わからなかった」
  
 僕は採用や就職は専門外ですので、あまり詳細を知りませんが、さてどうなんでしょう。
 最近では、ここで掲げられている状況もかなり変わりつつあることは承知しておりますが、今なお、上記のような課題は多かれ少なかれ、残されているような気がします。
    
 3日間で、「仕事」のことがわかるんですか?(笑)
 どうなんでしょう・・・。仕事の大枠なら、感じることはできるかもしれません。
 ま、半年やっても、一年やっても、どんなに長くやっても、仕事がわかるようになるとは限らないのかもね、とも思います(笑)。
  
 ▼
  
 大学院の活動も、いよいよ本格化してきました。
  
 立教大学の研究室には、新たに辻和洋さんが博士課程に、そして修士課程には伊倉康太さんが入学してくださり、研究が本格化してきています(おめでとうございます)。また立教の院ゼミには、東大の大学院生であった田中聡さん、高崎美佐さんもご参加いただき、博士の研究に邁進してくださっています。
  
 志あふれる大学院生とともに、よき研究を引き続き成し遂げたいものです。
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
「人材開発研究大全」(中原淳編著、東京大学出版会)、いよいよ電子版が刊行になりました!,AmazonのKindle、紀伊國屋書店のkinoppy、楽天koboなどで購入できます。人材開発研究の最前線を、4部構成・全33章であますところなく所収する国内初のハンドブックです。日本型雇用慣行が崩壊しつつある現在、日本の組織は「能力形成システム」を再構築する必要に迫られています。新人育成・OJTからリーダーシップ開発。民間企業の育成から教師教育・看護教育・医療者の学習まで。どうかご笑覧くださいませ!
  

  
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(この画像は下記のビデオよりスクリーンキャプチャしたものです。ビデオをご覧ください)
    
 昨日ご案内させていただいた授業見学会のお知らせです。6月2日「立教大学経営学部・ビジネスリーダーシッププログラムの授業見学会」を開催させていただきます。300名の学生の行うポスターセッションで「愛にあふれた厳しいフィードバック」をいただけませんでしょうか?
 
■6月2日 BL2・中間発表会 参加申し込みフォームはこちら!■
https://bit.ly/2KL7L9R
  
 当日は、中原からも、立教経営におけるリーダーシップ開発の基本的考え方、BL2の授業開発方針について、フィードバックのお楽しみ方などについて、ショートレクチャーなどをさせていただく予定です。最新のリーダーシップ開発の考え方、トランジション論についてご理解を進められることができるかもしれません。
  
 おかげさまで、もうそろそろ「3桁」に迫る企業人事の方々、高校教員の方々、大学教員の方々からお申し込みをいただいております。さすがに見学者だけでキャパシティの関係上、120名を超える方々はお引き受けできませんので、募集を早期に打ち切らせていただきます。
  
 どうぞお早めにお申し込みください!
 立教経営でお逢いできますこと、楽しみにしております!
  
300人の学生で行うポスターセッションで「愛に満ちあふれた厳しいフィードバック」をいただけませんか?(笑):公開授業・中間成果発表会への見学のお誘い
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/8900
  
 なお、ビジネスリーダーシッププログラムの概要は、下記のPDFをご覧ください。
    
ビジネスリーダーシッププログラムパンフレット(概要:PDF)
https://bit.ly/2I0kbg6
   
 また、当日のポスターセッションのイメージは下記の動画をご覧ください
    

   
(※こちらは2017年「リーダーシップ入門(BL0)」のポスター発表の様子です)
 撮影:尾花俊弥さん(立教大学経営学部2年:2017年度時点)
 動画作成:佐々木李希さん(立教大学経営学部2年:2017年度時点)
  
■6月2日 BL2・中間発表会 参加申し込みフォームはこちら!■
https://bit.ly/2KL7L9R

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