2018.3.12 05:56/ Jun
ワンショットのタイムマネジメント研修で、残業は減らないかもしれない・・・
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先だって、パーソル総合研究所さんと中原の共同研究「希望の残業学」の知見(一次成果)を、公開させていただきました。
「希望の残業学」プロジェクトは、1)残業が生まれるメカニズム、と2)残業を是正した後に生まれる成果(インパクト)について探究する2年間の研究プロジェクトです。すでに公開させていただいた知見の一部は、下記をご覧ください。
残業は「集中・感染・麻痺・遺伝」する!? : 「希望の残業学」プロジェクトの研究成果が発表されました!
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/8540
パーソル総合研究所×東京大学 中原淳准教授 「希望の残業学プロジェクト」 会社員6,000人を対象とした残業実態調査の結果を発表
https://rc.persol-group.co.jp/news/201802081000.html
その後、プロジェクトは「第二弾調査の実施」さらには「打ち手の開発」に近づいています。
まず「第二段調査」は第一次調査では十分彫り込みができなかった部分の探究(たとえば残業麻痺の実態や、残業代との関係)を目的に実施されます。こちらはメンバーの小林さん、青山さん、田井さんと、あーだこーだ議論しながら、すすめております(お疲れ様です!)
後者「打ち手の開発」はいよいよプロジェクトのクライマックスです。
先日は、いつものメンバーに櫻井さん、岩崎さんにジョインしてもらい、議論を行いました(お疲れ様です!)。
「調査」だけで終わるのではなく「現場を変革する打ち手」も考える。
これが、このプロジェクトメンバーで共有されている大切な価値かと思います。
先だっての議論では短い時間ながら、活発にやりとりがなされました。易しくはない課題に向き合うのは、大変ですけれども、知的にエキサイティングなものです。
今後、さらなる問題の深掘りを行っていきたいものです。
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ところで、先だっての会議の折、非常に印象に残っている話題のひとつに、
(長時間労働是正の打ち手としてよく実行されがちな)ワンショットのタイムマネジメント研修だけでは、長時間労働の解決にはならないかもしれない
というものがありました。
もちろん「タイムマネジメント研修がまったく無駄」という気はないのです。
ただ「長時間労働の是正? だったら、タイムマネジメントでも、学んでもらえば?」という安易な着想は、課題解決に向かわない可能性がある、と申し上げたいのです。
たとえば調査の下記の知見からすると、「安易なタイムマネジメント研修への期待」は、一歩割り引いて評価をする必要があるということになります。
1.長時間労働に対する「個人由来の要因」は、「仕事由来の要因」「職場由来の要因」「上司由来の要因」に比べて、相対的に大きくはない
=「個人でできる努力」にはかなり「限界」がある
=「組織ぐるみの変革」「職場ぐるみの対策」
「仕事の変化」を伴わなければ、長時間労働は変わらない
(残業は感染・遺伝する)
2.長時間労働に寄与する「個人由来の要因」のなかで比較的大きい要因は、「個人が残業代を込みにして生計を組み立てている」ということにある
=個人にいくらタイムマネジメント研修だけをあてても、
彼 / 彼女へのインセンティブが働かない
3.長時間労働は、職場の中に業務負担の不均衡が生じ「できるひと」に仕事が寄り集まるなかで、その人が長い労働時間をかけて働くことで生まれる傾向がある(残業は集中する)
=タイムマネジメント研修で「できる人」が生産性をあげても、
同時にはやく帰ることを慣習にしていなければ、その分、空いた分
を埋めるだけになってしまう可能性がある
(ただし、一般に、できる人はタイムマネジメントはすでにマスターしている)
=タイムマネジメントを学ぶことで「できない人」の能力向上全般が果たせる
のならば意味があるかもしれないが、ワンショットの研修には限界がある
いかがでしょうか?
結局、この問題を解決するには、
1.職場ぐるみで問題を見える化し、対策を講じること
(=職場開発や組織開発が必要であること)
2.長時間労働を是正しても、個人にとって損にならない仕組みをつくること
(=究極にはインセンティブシステムの調整が必要であること)
3.仕事の能力を伸ばすことに中長期にわたって取り組むこと
(=3は僕がこのプロジェクトにかかわる理由にもなりますね)
が重要ではないか、ということです。そしてそれを行うためには「トップマネジメント」から「ミドルマネジメント」に至るまでの「コミットメント」が必須です。
もちろん、リソースも限られている中で、何をどこまで行うかは、議論が必要なのですけれども。
なかなか「手強い課題」ですね。
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今日は長時間労働是正の「打ち手」の話をさせていただきました。プロジェクトは今後ますます進展して、本格的な打ち手の議論に向かうことが予想されます。今後には、樋口さんや井上さんらもジョインして、書籍「希望の残業学」の執筆にも向かいます(楽しみにしています!)。
プロジェクトの成果にどうぞご期待くださいませ
そして人生はつづく
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