2018.2.15 05:58/ Jun
うちの上司のフィードバックって「なぞなぞ形式」なんですよ!
先生、何とかしてくださいよ!
・
・
・
少し前のことになりますが、ある若手ビジネスパーソンのAさんが、こんなボヤキをなさっていました。嗚呼、「何とかしてくださいよ」とのAさんからのご依頼に、僕が直接お答えするのは難しいのですけれども(笑)、ぜひ、そういうフィードバックがこの世から減り、「成仏」することを心より願い、このブログでご紹介させていただこうと思います。
Aさん曰く、「なぞなぞ形式のフィードバック」はこんな感じだそうです。
上司 「ねー、Aさん、ちょっと時間、いい?」
Aさん「はい」
上司 「なんで呼ばれたか、わかる?」
Aさん「えっ?」
上司 「わかる?」
Aさん「いえ・・・突然なので、すみません。わかりません」
上司 「そうか、わかんないか」
Aさん「はい、すみません・・・なんでしょうか?」
上司 「悪かったよね」
Aさん「えっ、悪かった?」
上司 「Aさん、悪かったよね」
Aさん「B社の営業の失敗のことですか?」
上司 「ピンポーン、あたり! あれ、悪かったよね」
Aさん「あ、はい、思い通りにいかなくて・・・すみません」
上司 「なにが悪かった? 自責で考えた?」
Aさん「そうですね・・・」
上司 「何が悪いのかな?」
Aさん「そうですね・・・アプローチが遅かったのかな、と」
上司 「ブー、違う」
Aさん「そうですね・・・クロージングの押しが足りないとも思いました」
上司 「ブー、違うよ」
Aさん「・・・・」
上司 「わかってるよね?」
Aさん「そ、そ、そうですね。お客様のニーズ・・・」
上司 「ピンポーン、それよ。ニーズを最初からとらえてないの」
Aさん「すみません・・・以後気をつけます」
上司 「なんで?」
Aさん「ですので、ニーズを・・・申し訳ございません」
上司 「で、なんで?」
Aさん「わたしがしっかり、ニーズをとらえてなかったと思います」
上司 「わかってんじゃん。今度、気をつけてね」
Aさん「はい、わかりました。以後、気をつけます」
なぞなぞ形式フィードバック、以上終了(笑)。
まことに興味深いですね。世の中、これだから、面白すぎて、退屈しません。
さて、皆さんでしたら、このフィードバック、どのような部分が「特徴的」だと思われますか? どこが改善のポイントでしょうか?
・
・
・
・
・
・
・
・
なぞなぞ形式フィードバックの特徴は、僕は、下記のように感じました。
1.上司とAさん(部下)とのやりとりは、「質問ー回答ー正解・不正解の通知」の連鎖になっている。
つまりは、ここが「なぞなぞ形式」たる所以です。部下は上司があらかじめもっている答えを「当て」にいかなければならない
上司 「何が悪いのかな?」(発問)
Aさん「そうですね・・・アプローチが遅かったのかな、と」(返答)
上司 「ブー、違う」(評価)
(※かつてミーハンという会話分析の研究者が、教育指導場面に「IRE連鎖」といったような会話のパターンが繰り返されることを見いだしました。IRE連鎖とは、「Initiation(発問)-Reply(返答)-Evaluation(評価)という教育指導場面で繰り返される会話のパターンです(Mehan 1979)。これに似てますね。)
2.上司と部下は「行動改善のポイント」については何一つ話し合ってはいない。
上司は「なんで?」という問いかけを行っているが、これには「答えること」よりも、「謝罪すること」が求められている。すなわち、この上司の問いかけは、「具体的に行動の改善のポイント」を、部下に考えてもらう機会にはなっていない。
上司 「なんで?」
Aさん「申し訳ございません」
上司 「で、なんで?」
Aさん「わたしにニーズをとらえてなかったと思います」
上司 「わかってんじゃん。今度、気をつけてね」
さて、皆さん、いかがでしょうか?
こんなフィードバックをされた経験はないですか?
本来ならば、フィードバックとは「耳の痛いことを通知」しつつも、立て直しのお手伝いをすること。
対して、こうした「なぞなぞ形式フィードバック」の「効果性」は、おそらく低いと思います。
なぜなら、「答えのあてっこ」は「わかってんなら、最初から言えよ!」という反感を部下の頭に生み、自責思考にはつながらないからであろうから。
また上司は最後に「なぜ?」と理由を聞いていますが、それは「謝罪」で終わっており、「行動の改善」について1歩踏み込んだ会話は、何もなされていないから。
すなわち、部下の頭には、
感情としては「反感」
認知としては「思考停止」
が生まれてしまうから(泣)
▼
今日はフィードバックのお話をしました。
みなさんは「なぞなぞ形式のフィードバック」を経験なさったことはありますか?
あなたは「なぞなぞ形式のフィードバック」をしていませんか?
そして人生はつづく
ーーー
新刊「実践!フィードバック」が重版2刷決定、前書「フィードバック入門」は3万部突破です。耳の痛いことをいかに部下に通知し、そこから立て直しをはかることができるか。全国各所の管理職研修で用いられて居明日。はじめてリーダーになる方、管理職になる方におすすめの2冊です。どうぞご笑覧くださいませ!
DVD『フィードバック入門』
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
ーーー
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
中原研究室のLINEを運用しています。すでに約5100名の方々にご登録いただいております。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
最新の記事
2024.11.22 08:33/ Jun
2024.11.9 09:03/ Jun
なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?
2024.10.31 08:30/ Jun
2024.10.23 18:07/ Jun
【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)