2018.2.13 06:01/ Jun
人材開発の言説空間では、よく、芸道・武道の言葉が引用されることがあります。
もっとも有名で、誰もが引用するのは「守破離(しゅはり)」
守破離とは、さまざまな解釈はあるものの、一般に、
「守」とは、師匠の薫陶のもと、その技をそのまま真似ること
「破」とは、他のやり方に学び、これまでのやり方を改善すること
「離」とは、これまでのやり方を変え、新たなやり方を創造すること
といわれています。
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ところで、ちょっと前のことになりますが、せんだって読書をしていたら、「守破離」とは異なる新たな「芸道の概念」に出会いました。
読んでいたのは、哲学の西平直先生、精神分析の松木邦裕先生らが、二人の対談をつづった「無心の対話」という本です。西平先生が研究なさっている「無心」という概念や「世阿弥の稽古論」という観点から、「対話とは何か」をつづった本になります。
この本のなかで、西平先生は、「世阿弥の稽古論」を紹介します。世阿弥が、稽古のプロセスを
「似せる」(にせる)
「似せぬ」(にせぬ)
「似得る」(にえる)
という3つの概念(プロセス)で語っていることをお話になっておられます。以下は、同書からの引用です(今、自宅であるため、引用ページがかけなくて恐縮です)。
西平先生曰く、「似せる」「似せぬ」「似得る」とはこんなプロセスです。
「似せる」とは言うまでも無く、弟子が師匠の技に近づくために、徹底的に師匠に「似せること(真似をすること)」を意味します。
しかし、熟達したての頃は、それでもいいかもしれませんが、弟子は師匠の真似ばかりしていると、いつの日か「自分を失う」ってしまいます。
よって、弟子が到達するべき、次のプロセスとして重要なのは「似せぬ」です。敢えて、師匠の技と自分の技を「似せないよう」にして、自分を師匠から遠ざける。
しかし、ここがまことに興味深いところなのですが、最終的に、それでも弟子が到達する地平は「似得る」ものです。「似得る」とは、「最終的に、本質的ものを追いかける弟子の技は、師匠に似てくること」をいいます。
自分が失われることを恐れ、師匠の技から自分を遠ざける。しかし、師匠と弟子が本質を追いかけている限り、その技は最終的には「似てくる」。
弟子の一生をかけたこのプロセスは、師匠と弟子の世代継承のプロセスでもあります。この部分が、非常に面白いと感じました。
いかがでしょうか?
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今日は「無心の対話」という西平先生、松木先生の語著書から、世阿弥の稽古論を引用させていただきました。
人はだれしも、熟達のプロセスにおいて、誰かに近づきたいと願い修練し、しかし、そこから敢えて自分を遠ざけ、いつか邂逅を果たすようなプロセスがあるようにも思います。
あなたは、誰にあこがれ、「似せる」「似せず」をしてきましたか?
あなたと、その人は、今、「似得て」いますか?
連休明け、今週も、一週間、頑張りましょう!
そして人生はつづく
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