2017.11.20 06:12/ Jun
仕事をしていく上で「いかなる目標を設定され、そこに腹おちするか」というのは、パフォーマンスにかなりの影響を与えます。ここ十数年、この領域で研究をしていて、このことは切に感じることです。
「たかが目標、されど目標」
まったくをもって基本的なことですが、目標とは、まったくあなどれません。
先のセンテンスで重要なのは、「目標を設定される」だけでなく「目標に腹おちするかどうか」まで考えていかなければならないねぇ・・・と密かに述べているところです。
目標は「腹におち」なければ、「設定」されただけでは、「実行」を伴いません。あるいは、仮に重い腰をあげて「実行」したとしても、「コミット」が弱いので、あまり「成果」に結びつかないことが予想されます。
「たかが目標、されど目標」
なのです。
しかし、これほど重要な目標設定が、きちんとマネジメントをする側に理解されているか、というと、かなりおぼつかないところがあります。
は? 目標? 要するに「割り算」しとけばいいんでしょ?
というのが最もありえるケースです。これを僕は「割り算型の目標設定」と呼んでいます。
「割り算型の目標設定」とは、めちゃくちゃ極端にいえば、こういうことです。
来期の会社の売り上げ目標は2割増しの100億円です!
うちの会社には10個の部門があります!
1部門あたりの売り上げ目標は10億です。
1部門には10人がいるので、要するに一人の目標は1億です。
以上(笑)。
まー、あながち間違っているとはいえないのだけれども、この目標設定には、「取り組む意味」や「何から取り組んでいくべきか」のヒントは1ミリもありません。また、この目標設定自体には、少し「切ない」ものを感じてしまいます。
「割り算型の目標設定」の切ないところは、
管理職なんて存在していなくても、メンバーが自ら割り算すれば、答えはわかってしまう
ということです。
だって売り上げ目標が100億で、部門が10個あって、各部門のメンバーが10人ならば、割り算すれば、自分の目標は1億とわかります。
暗算でわかるので、管理職は必要ありません。
メンバーが自分で計算して、自分で取り組めばいいということになります。
というわけで、「割り算型の目標設定」とは「マネジメントの存在否定」なのです。
こうした安易な目標設定でも、自分を鼓舞できる人はいいのでしょうけれども、たいていの人は白けてしまいます。
あるいは、これまでの2割増しといっても、何から手をつけていいのか、さっぱりと理解できません。よって実行力に陰りがみえはじめます。
そうではなく、ここで重要なのは、意味と取り組み方に関する情報です。
なぜ、2割増しの100億に会社は挑戦しなくてはならないのか?
部門としては、これまで何をやってきて、何を見直して、目標を達成するのか?
個人は、これまで何をやってきて、何を見直さなければならないのか?
個人の目標は、結局、いくらなのか?
などの「取り組む意味や意義」を丁寧に説明していく必要があります。
たかが「意味」かもしれません、が、されど「意味」です。
目標のストレッチ度が高いほど、メンバーのコミットを引き出すためには、こうした「意味づけ」が重要になってくると思われます。
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今日は「目標の設定と腹おち」という非常に基本的なことを書きました。
目標の設定とは、基本的すぎて、誰も教えてくれないというのが現状のように思います。自戒をこめて申し上げますが、「割り算型の目標設定」に陥らないようにしたいものです。
あなたは、割り算型の目標設定をしていませんか?
あなたに課せられた目標は「割り算の計算結果」になっていませんか?
そして人生はつづく
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