2017.6.16 06:44/ Jun
数日前、ふとしたことで「成人の読書量ってどんなものなんだろう?」と思い調べておりましたら、財団法人 出版文化産業振興財団が2009年に行った調査結果を見つけました。
現代人の読書実態調査 – 出版文化産業振興財団
http://www.jpic.or.jp/press/docs/2009JPIC_research_R.pdf
その結果をざっとだけ見てみますと、成人のうち「1ヶ月の読書量が最も少ない」のは30代で27.4%が「0冊」とのことでした。
「0冊」は、他の世代だと23.9%、40代だと24.5%、50代だと21.6%、60代だと21.0%になります。30代の読書量は、4ポイントから6ポイントほど、他の世代より低いことになります。
最大の理由は「仕事、家事、勉強が忙しくて本を読む時間がない」というもの。20代は45.9%、30代は42.4%と最も大きな回答比率を示したようです。
20代も、30代も、働き盛りで、かつ家庭を持ち始める時期。ひとによっては、子育てで、それどころじゃない毎日が続きます。わかります、痛いほど、わかります(笑)。毎日「ブレーキのないジェットコースター」にのって爆走しているような日々。嗚呼、痛い。僕も、30代のある時期、読書量が落ちたような気がします。
先ほどのデータ、ローデータを見ているわけではないので、これ以上の詳細な解釈はなかなか難しいのですが、なかなか、感じ入るものがありました。得意の「妄想力」で、下記に感じ入ったことを書きます。
(もしこのデータに労働時間のデータがあれば、読書量とクロスするとか、年代別に集計しなおすとかして追加分析が可能ですが、ここではそれができないので、下記の記述は僕の妄想です。あしからず!)
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といいますのは、せんだって、あるプロジェクトのミーティングの際、ある議論をしていました。
長時間労働の最大の問題って、自己学習・自己研鑽に当てる時間が失われることだよね
仕事場で働きまくって、そのあと、本を読む気になれないよね
ということを、皆で話し合っていたのです。
しかし、このことは中長期で考えますと本人にかなりのリスクをもたらします。
「自己学習・自己研鑽にあてる時間がない」ということは、自分のキャリアのことを考えたり、能力を伸ばす機会が失われるということを意味します。そういう時間が長く続けば、ひとによっては、市場での本人の価値は次第に色あせていく可能性が高まります。
もちろん仕事をバリバリ進めていくことで、キャリアや能力を伸ばす、という筋もございましょう。
しかし、外部環境の変化がめまぐるしく、かつ、サバイブしなければならない仕事人生が長期化する現代は、組織の中の仕事経験を蓄積するだけでは、新たな環境や市場に対応した知識やスキルをつけていくのは、限界があるとも考えられます。バリバリ仕事をすることも大切ですが、自己啓発、自己学習に当てる時間を確保することが必要になる人も増えてくるでしょう。
しかし、「自己学習・自己研鑽にあてる時間がない」状態がつづき、かつ市場がかなり変化してしまったあとでは、本人の市場での価値が失われて、しかも年齢が上がってくるため、今度は組織を出られなくなります。
もし仮に、年功序列が維持されていれば、組織にいさえすれば、それなりの給与が保証されるので、いわゆるホステージ(とらわれ)の状態に陥るのです。これが、いわゆる「働かないおじさん」が生まれるメカニズムです。
かくして、長時間労働で「学ぶ時間がない」とか「気力や体力がとうに失われていて、学びなおす気すらおきない」という状態は、めぐりめぐって、「組織へのしがみつき」をうみ、「働かないオジサン」を生み出すことになるのです。
働かないオジサンの生産メカニズム?につきましては、拙著「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」(本間浩輔・中原淳共著)をご覧ください。なかなかしょっぱいメカニズムをご覧いただけるかと思います。
先ほどの「読書量」は「成人が学ぶこと」「成人が学び直すこと」の代理指標のひとつにしかなりませんが、それでも、なんか感じ入ってしまいました。
働き盛りの30代・・・長時間働いているのかなぁ・・・読書する時間もないんだろうなぁ・・・とかね。このまま、とらわれちゃうのかな、、、働かないオジサン予備軍になっちゃうのかな、とか。
ま、妄想ですけれども(笑)
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今日は「成人の読書」について書かせていただきました。
今日の話題は、自分もまったく他人事ではございません。日々研鑽に努めねばな、と思いました。
ところで、皆さん、最後にご質問です!
皆さん、今月は何冊本を読みましたか?
仕事人生は長期化の模様です。願わくば、いきいきと学び続けていきたいものですね。
自戒をこめて
そして人生はつづく
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