2016.4.15 06:40/ Jun
理事を仰せつかっているNPO法人カタリバの理事会が、先だって、都内某所で開催されました。
NPO法人カタリバ
http://www.katariba.net/
今回の理事会は、今村さん、岡本さんらのファシリテーションによって、「いつもとは異なるかたち」で行われました。
これまでの理事会は、各事業部からの報告を理事が伺い、コメントをするというかたちー「論文指導」のようなかたちーで行われていたのですが、これをお二人が「変革」なさったのです。
今回、今村さんや岡村さんをはじめとして執行部の皆さんは、カタリバのルーツである「対話」と「語る」ということに立ち戻られました。理事も語る、カタリバ執行部のメンバーも語る、というかたちで、「対話型の理事会」を構成なさったのです。雰囲気は下記のような感じです。
様々なトピックに関して、皆で意見を言い合う雰囲気ができ、理事は「各事業部から報告を受けて厳しくフィードバックする指導教官のような存在」から「事業の方向性をともに考える存在」に少しだけ変化したような気がします。
僕個人としては、非常に嬉しいことですし、前回の理事会のフォローアップの際、お二人にお願いしていたことでもありました。大学の外に出てまで、「指導教員」ではいたくありませんので(笑)・・・というより、「指導教員」スタイルで、よいコメントができるとは思えなかったので(笑)。
(それにしても、これまでの理事会で僕は「怖い存在」だったようです。カタリバのみならず、最近の僕は「怖い」というイメージをもたれることが多くなっています。偉そうになってきたのか、フィードバックをする役回りが増えてきたのか不明ですが、ありゃりゃりゃりゃ、という感じです。前者だとしたらまことに申し訳ないですね。そういえば、ちょっと前に慶應MCCの保谷さんから「貫禄つきましたね」というご指摘を受けました。年齢なのかなぁ・・・)
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このことは何度も申し上げておりますが、NPOカタリバは、他者に対して「対話」と「サンプリング」と「語り」を促す存在です。それならば、その「鋭い要求」は「自己」「自分たち」にも向けられるべきではないか、というものが僕の一貫した主張です。
もちろん「折りに触れて」でよいのです。カタリバが「アクションオリエンティッドな団体」であり、「前のめりな志あふれる人々」が参加している団体だからこそ「折りに触れて」、きっちりと対話と内省を繰り返していくことが大切であるような気がしています。
確かに、様々な時間的困難はあるかと思います。が、ぜひ、こうした行動を繰り返し、習慣化し、組織文化として大切にしていっていただきたいなと思います。
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現在、カタリバは、多方面に、かつ、多角的に事業展開しています。
従来からの「カタリバ事業」ー高校生に対して大学生がキャリアを語る場をつくる事業ーは、未来に不安を感じる高校生に「学ぶ意味」「働く意味」をつむぐお手伝いをする事業展開を行ってきました。
さしずめ、その様相は、現代社会の特徴である「不確実性の拡大」と、そこで生きる人々の「意味の喪失」という事態に対して向き合う事業だったのではないかと思います。現代、わたしたちは「学ぶ意味」「働く意味」「生きる意味」を紡ぐことが、なかなか見えにくい社会を生きています。カタリバは、高校生の「意味喪失」にあらがい、彼らの「意味構築」を支援してきました。
昨今はそれらに加えて、
1.東北での「コラボスクール運営事業」
東北被災地に、子どもが放課後過ごすことのできる居場所・学びの場をつくる事業
2.中高生が集える場をつくる事業ーblab、雲南などの拠点で展開
そして昨今では
3.高校生ひとりひとりがプロジェクトをもつことを推奨する「マイプロジェクト事業」
などを今村さん、岡本さんほか、各ディレクターののリーダーシップのもと展開しつつあります。
昨日の理事会でも申し上げましたが、カタリバは、今、「対話することを通して未来をつくる」という従来のカタリバ事業をルーツにしつつ、「もうひとつの軸」に向かって、様々な事業展開を行っているように見えます。
その軸こそが「未来を拓く経験格差を子どもたちのあいだに生み出さない」ということです。別の言葉で申し上げるのだとすれば、「未来に希望を感じる経験を、多くの子どもたちに提供する」ということです。
昨日の理事会でも申し上げましたが、僕は、昨今、世の中には「経験格差」というものが生まれているような気がします。といいましょうか、カタリバの面々とお会いする度に、この言葉が僕の脳裏に思い浮かぶのです。
経験格差とは、
「ある社会階層の子どもは、子ども時代に多様な経験を行うことができて、ある層はそうでない。それら両層との間の経験値の格差が開いていき、それが入試や就職などの指標として用いられていく」
ということです。
箇条書きにすれば、要するに、こういうことですね。
1.従来の入試のように標準テストで測定しうるような基礎的学力は「あってあたりまえのもの化」「相対化」される方向に動いている。それ以上の「社会的成功」をなすためには、さらに「上位の指標」が意味を成すようになってきている。
2.基礎学力とは異なる「上位の指標」のひとつにあるのが「他人とは異なる差異化の記号となるような経験を成し遂げて」、そこから「どのようなことを学び」、「何を今後していきたいのか」?という「ストーリー」がある。それらが「評価指標」として用いられるようになってきている。それらは従来の標準テストで測定されるのではなく、まったく異なる「定性的な評価手法」によって測定されはじめようとしている。
3.「定性的な手法」は、多くはヒアリングや面接として具現化される。よって、それに挑戦する子ども達は、自分の経験を振り返り、ストーリー化し、他者に対してアカウントする能力が求められる。文化的コンテキストを共有しない他者とコミュニケーションし、自らの経験を伝えることが求められる。
4.しかし「成長に資する経験」「社会的成功につながる学習経験」の獲得は、生まれた家庭の経済階層・文化的資本に強く影響を受ける。また、言語的コミュニケーションの質も同様に、再生産の範疇になりえる。このような中で、いわゆる「格差」がさらに拡大していくことが予想される。
5.「生まれながらの格差」の根源は、指摘するのは簡単だが、なかなか埋めようがない。ならば、「生まれながらの差」をいかに「縮小」する政策や施策を社会にどのようにデザインしていくかが求められるようになる。
ということです。
もちろん、このことはこれまでもそうだったのですけれども、入試が「多様化」し、選抜手法もよりコミュニカティブな方向に向かっているなかで、こうした物事が幅をきかせることが以前より多くなっているように感じるのです。このことは、以前にもブログで何度か申し上げていたことです。
今、カタリバは、事業を多角化していく中で、もともとルーツとしてもっていた「対話の経験」をコアにして、さまざまな「問題解決の経験」「創造の経験」「葛藤の経験」を高校生などに提供する方向に事業展開を行っているような気がします。
特に、行政とともに「子どもたちの居場所と出来事(コト)をつくる事業」や、今村さんが率いておられるような高校生に「マイプロジェクト」をもたせることを推奨する事業は、その最たるものでしょう。今はまだ規模はそれほど大きくなるかもしれない。しかし、ビジョンは、「すべての高校生にマイプロジェクトを推進すること!」です。これらは、子どもに「経験」と「振り返り」の機会を与える契機になるような気がします。
全国の高校生にマイプロジェクト
http://myprojects.jp/
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今日はカタリバの理事会について書きました。
カタリバの皆さんには、いつも本当によくお仕事をなさっているように思います。
今村さん、岡本さんを筆頭に、カタリバ事業・東北事業、その他経営部門を引っ張っておられるディレクターの方々、見事なフォロワーシップを発揮なさってフロントラインで努力なさっているスタッフの方々に「お疲れさま!」を申し上げたいと思います。
最後に、ぜひ社外取締役的な理事として、皆さんにお願いしたいことはこういうことです。
カタリバのメンバーは、まずは「語る」のです。
どうか、もともと持っていたルーツを大切にして欲しいと思います。
ルーツを、自分たち自身にもしっかりと課してください。
どうか「語ること」や「向き合うこと」から逃げないでください。
そしてその上で
心ゆくまで暴れてください。
皆さんのアクションによって生み出される「問題解決の経験」「創造の経験」「葛藤の経験」を、多くの子ども達が待っているような気がいたします。
繰り返します。
語ることから逃げないでください。
そして、心ゆくまで暴れてください。
またお逢いしましょう!
そして人生は続く
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