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2015.12.7 06:10/ Jun

「知性のある人」にみられる3つの特徴?:あなたの会話に「ギフト」はついてますか?

 私たちは、日々、生活をし、様々な人々に出会うと、「あっ、この人、頭がいいな」「この人、知性的だな」と感じる瞬間があります。
「知性とは何か?」という形而上学的問いは、それだけで本が40冊くらい書けそうですので、このインスタント・オフザケブログには、全く「身の丈」にあっていません。
 ここでは問いを少しだけズラして、僕自身が、「あっ、この人、知性的だなぁ・・・」と感じる瞬間、何を判断根拠にしているかを振り返り、書いてみることにします。
「知性とは何か?」という問いと、「自分が知性的だと感じる一瞬はどんな瞬間か?」といういわばプチ現象学的な問いは、似ているようでいて全く異なります。そして、後者ならば、このブログにでも30分で書けるかもしれない。
  ▼
 僕が、他人をみて「この人、知性的だな」と感じる一瞬は、下記の3点です。
1.「会話ギフト力」のある人に出会ったとき
2.「本題戻り力」のある人に出会ったとき
3.「自己言及力」のある人に出会ったとき

 ここからは、これについて書いてみましょう。
 まず「1.会話ギフト力のある人」というのは、「相手側の発話」をまずは「受けとめ」、そのうえで、その内容に「プチ情報=お土産」をプラスして、投げかえしてくることのできる人のことをいいます。
 自分の投げたボールに「ギフト」がついてくるのですから、こうした人との会話はとても盛り上がります。嬉しいですね。
 自戒をこめて申し上げますが、非常に簡単なようですが、これがなかなか難しいものです。
 まずは、相手が言っていることをいったん「聞き切ること」が大切です。話の腰をおったり、途中で遮ったりすることなく、相手の言うことを聞きとり、受け止めることができる。これだけでたいした能力です。いわゆる傾聴力や、概念力が求められます。
 その上で、相手が好きそうな「ギフト」をつけて渡さなければなりません。そのためには、どんなボールにでも「相手にとってもらってよかったと思えるお土産」をつけることのできる「豊富な知識ベース」が必要です。ここまでできれば、すごいなぁ・・・と思ってしまいます。
  ▼
 次に「2.本題戻り力のある人」というのは、これも簡単なようですが、なかなか難しいものです。
 
 会話というのは、録音してみればすぐにわかりますが、いやはや、あっちゃこっちゃ、好きな方向に飛んでいってしまうものです。
 要するに会話は、ほおっておけば、「本題」からすぐに外れていき、支流をあっちゃこっちゃするものです。ドリフトしちゃうのよ、すぐに。
 そんなときでも、「本題戻り力?」のあるひとは、本題が何かをしっかりグリップしつづけ、支流に自分たちの会話が流されていたとしても、話を元に戻すことのできます。
 これができるためには、支流で相手との会話をやりとりしながら、本題を常にグリップしつづけ、そこに帰ることを企図しながら会話を続けなければ鳴りません。これができるためには、高度なメタ能力が必要になるでしょう。
  ▼
 最後に「自己言及力のある人」というのは、要するに、物事を分析・思考していつつも、常に自己を振り返りつつ、「自分へのやじるし」を忘れない人のことをいいます。
 どんなに高度な分析をしても、概念化をしても、「自分だけはその対象に入らない人」というのが一方でいます。他人のことはあーだこーだ言えるし、注文はできるのに、自分はその対象に入らない。自分をつねに「かっこ」の中にいれてしまう思考法です。
 一方で、自分を常に謙虚に振り返りながら、自己のあり方を変化させられる人がいます。僕は、後者のような思考のあり方を「知性的だな」とみなします。
 自戒をこめて申し上げますが、人はみな、「自分は特殊である」と思いたいものですし、「自分を分析・思考の対象にすることは苦手である」ものです。自己を対象にした自己言及性のある思考を心がけたいものです。
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 今日は、僕が、「この人、知性的だな」と感じる3つの瞬間を書いてみました。
 逆にいうと、僕が「残念だな」と思うのは「会話が平行線をたどる」「会話が常に本題からずれる」「常に自分以外のものを批評する態度しかもてない」人です。
 皆さんの定義はいかがですか?
 世の中で必要になる知の力は、さらに高度化していきます。
 知性的な人が、さらに増えることを願います。
 僕も「自己研鑽」を積むことに致します。
 そして人生はつづく
 ーーー
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