2015.4.24 06:28/ Jun
先だって、あるところで行ったリーダーシップに関する授業の中で、僕は「たてなおす」ということをテーマにして授業をしてみました。
リーダーシップと申しますと、やれ「サーバントリーダーシップ」だの「変革型リーダーシップ」だの「リレーショナルリーダーシップ」だの群雄割拠四面楚歌?状態で、さまざまなリーダーシップが主張されています。
先だっての大学院・中原ゼミで、博士課程の吉村さんがご発表なさった英語レビュー論文でも、その百家争鳴っぷりがよくわかりました(Avolio, B. J. et al(2009) Leadership : Current theories, research, and future direction. Annual review of psychology. 60:pp421-449)。もう、わやだわな。
が、そういうリーダーシップの「種類」ー学術的タイポロジーには「敢えて」一線をおき、リーダーシップが「街で起こっているどういうリアルな状況」に対して行使されるのかを考えるとき、大きく分けて4つくらいの状態が、組織の中ではよく起こりえるかなと思います。ここでは、それらを敢えて戯画的にわけて、下記に描き出してみましょう。
1.「0から1を生み出す状況」(新規事業創造系)
2.「1を生み出し続ける状況」(日常のオペレーション系)
3.「1を2にする状況」(事業規模拡大)
4.「−1を1にする状況」(立てなおす)
「0から1を生み出す状況」とは、いわゆる「新規事業創造系」です。全く何もない「0の地平」から、様々な人々の協力をえて「1」をうみだすのは、リーダーシップといえそうです。
最近は「0から1を生み出せる人材」のように、こうした人材を求める声が、人事・経営界隈では、よく聞かれますね。
また2「1を生み出し続ける状況」とは、日々のオペレーションを滞りなくまわす力です。これは、場合によっては「それって管理じゃないの?」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここではあえてその是非はといません。
目標にしたがい、人々を動かすことがリーダーシップなら2も、それに入れてもよいのではないかと、僕は思います。
次に「1を2にする状況」とは、たとえていうならば「事業規模の拡大」です。タネになる「1」はすでに誰かがつくってできてはいるけれど、それを「2」とか「3」に規模拡大したい。そういうときにも、やはりさまざまな人々の協力は必要で、リーダーシップは行使されるでしょう。
最後が、先だって授業で行った「−1を1にする状況」、すなわち「立て直す系」です。
環境変化のせいか、前任者の怠慢なのか、すでに職場の状況は「−1」です。これを何とかして「0」にまでもってきて、さらには願わくば「1」の状況までもっていかなくてはならない。そういうときにも、様々な苦難を乗り越え、人々の協力を得なくてはなりません。こちらは、なかなかのハードシップです。
で、僕がなぜ、この「−1から1のリーダーシップ」を授業で扱ったのか、というと、実際に、これまでマネジャー向けにおおくの調査をしてきますと、これらの「立て直し経験」を、リーダー就任前に経験することが、想定よりも多いことがわかっているからです。
僕は、公益財団法人・日本生産性本部さんと「マネジメントディスカバリー」というマネジャー向け調査+フォローアップ研修の開発プロジェクトでご一緒していますが、そちらでも、これに類する結果が見受けられました。
マネジメントディスカバリー:マネジャー向け調査+フォローアップ研修
https://jpc-management.jp/md/
もちろん、リーダーとして最前線にたって行動することは限られているにせよ、そうした「立て直し」の局面に、なんらかのかたちでサポートにかかわることは、非常に多いことがわかっています。もちろん、人や場合によって、「組織がひっくりかえるくらいの立て直し」から、「プチ立て直し」までいろいろありますけれども。
これから職場に出て、人を率いて仕事をする人にとっては、「立て直し」という問題は、「誰かの問題」ではなく、「みんなの問題」なのです。もちろん、程度の差はあるとは思いますが。
考えてみれば、こうもいえます。
2「1を生み出し続ける状況」の状態は、いわゆる「日常」そのものなので、これはさておき、要するに、1「0から1を生み出す状況」のように「0の地平」を「ほら、ここから何かを生み出してごらん」と「与えられること」は、もしかすると「希」なのかもしれません。
また、3のように、すでに「売れるタネができている状態」なら、前任者が手放したり、更迭されることはあまり想定されないので、それを「1を2にする状況」を他者に頼むというのは、少ないのかもしれません。
「−1から1へのリーダーシップ」というのは、初期状態が「−1」であるがゆえに、職場のメンバーに変容的学習(痛みをともなう学習)やアンラーニングを迫らざるをえない局面が出てくることが予想されます。
しかし、リアルな現場で本当に実際に起こっていることは、そういうドロドロの痛みをともなう状況の中で、何かをつくりあげることであり、そうしたことのリアリティやアクチュアリティを、授業ではお伝えしたいなと思いました。ま、限られた時間の中で、どこまでお伝えできたかはわかりませんが。
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最近、自分自身は、「0から1」とか「1から2」とか、そういうことが大切だと言うこともわかりつつも、「−1から1」とか「マイナスの状態をたてなおすこと」にリアリティを感じます。
別に「マイナス」が好きなわけではないのですが、年齢を重ねつつあるせいか、「綺麗なもの」「まっさらなもの」「これから拡大だけしていけばいいもの」には、相対的に、あまり魅力を感じないのです。これは個人的な問題です。だんだんと、ドロドロ系?が好きになってきました。
「−1」をそのままほおっておけば、マイナスのままです。そうではなく、「−1」の状態から、痛みや苦しみをともないつつ、「1」を信じて、いかに状況を変えうるか。
「街で起こっているリアル」や「誰もが経験しているアクチュアリティ」を、いかに研究の中に盛り込んでいくかが、僕の課題です。
あなたは「−1から1へのリーダーシップ」を経験なさったことがありますか?
そして人生は続く
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