NAKAHARA-LAB.net

2013.11.25 08:22/ Jun

せこせこ、やいのやいのつっこみながら、ドロドロ血をうにょうにょ生き抜くリーダー!?

 現在、「マネジャー本」を、シコシコと書いているせいでしょうか。最近、マネジメントのことについて、よく考えます。
 書いていて、疑問に思うのが、「リーダーとマネジャーの違い」という、世間に広く広まっている概念です。おそらく創始者はKotter, J.の影響力がもっとも強いと思います。よく知られているように、彼のリーダー論では、リーダーのあり方を、マネジャーのそれと対照づけることを特徴としています。
 まずは共通点からです。
 リーダーもマネジャーも、ヴィジョンを描き、そのヴィジョンを実現するネットワーク構築を行うことは一緒です。
 しかし、それらの相違点は、実現に至る手法とプロセスにあります。
 計画立案・進捗確認・組織づくり・人材配置を行うのがマネジャー。その特徴は、ひと言で表現すれば「コントロール」と呼べるでしょうか。
 対して、リーダーは、目標に対する共感を喚起し、多くの人々をひとつに統合していくといいます。その特徴は、先ほどと対照づけるのならば「エンカレッジ」ということになるのかもしれません。
 Kotter自身も、これらの二分法は、相互補完的であることは述べているのですが、「そもそも」、実務的にはこれらを分けることには慎重であった方がいいよな、と思います。
 なぜなら、リーダーの行う「エンカレッジ施策」は、短期的には奏功するものの、中長期の観点から考えるのであれば、「計画立案・組織づくり・人材配置」といったハードでフォーマルなマネジャー的仕事に落ち着く必要があります。つまり、中長期に考えるのであれば、ヴィジョンはそれとは対極にある「オペレーション」に落とさなくてはならない。
 また、そもそもヴィジョンがどんなに素晴らしいものであっても、どんなに素晴らしい人的リソース、人的ネットワークを準備できても、物事を達成するためには、丁寧でしっかりした「進捗確認」が必要になります。そういうことからも、マネジメントとリーダーの違いを二分法で語ることの限界がわかります。
  ▼
 それに人は「リーダーを描くとき」は、そこに「ロマンス」を見たくなるものです。
 つまり、リーダーとは「偶像化」され、「理想」を重ねられがちです。
 そして「リーダの理想」を描くときに、「せこせこ来年度のプランをたてつつ、ペーパーワークに従事したり」、「重箱の隅をつつくような細かいことを、やいのやいの、つついて進捗確認」したり、ポリティカルに動きながら、「組織内政治をウニョウニョと生き抜く姿」を描写したくないでしょう。いやだよね、そんな「せこせこしてるリーダー」の姿を夢想するなんて・・・。
 でも、おそらく、物事を成し遂げるためには、「大言壮語的なビジョン」とともに「細かくて、ドロドロ血的な作業をせなアカン」のが、実際のリーダーなのかな、とも思います。
 そして、そんな人々の姿を ー もはや、今になっては、リーダーと呼んでも、マネジャーと呼んでも、どっちでもいいですが ー データに基づきながら描き出すことが、僕の今書いている本の役割かなと思っています。
 そして人生は続く
 —
追伸.
 マネジメントとリーダーは「Function(機能)」と考える方が、妥当なようにも思います。ひとりの管理者の中には、リーダー的機能とマネジメント的機能が必要である。そして、もし、現在の自社の管理者がマネジメント的機能が強く、リーダー的機能が弱い現状があるのだとしたら、後者を前者と対照づけて、強調したくなる気持ちはわかります。

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