NAKAHARA-LAB.net

2013.7.17 16:53/ Jun

「予想を裏切り、期待を裏切らない研修」と「予想を裏切らず、期待を裏切る研修」

 研修やワークショップなどの「大人の学びの場」には、参加者の「予想を裏切ること」も、また大切なことだろう、と思います。
「予想を裏切る」というのは、「学習者を裏切る」「期待を裏切る」ということではありません(泣)。
 そうではなく、「学習者が、きっと、こうなるだろうな」と思っている「これからの展開の予想」を「敢えて裏切り」つつ、そのことで「いつもと違う感」を演出し、学習者の「注意(Attention)」を確保した上で、その後の学習を組織化するということです。
 ひと言でいえば、
 「脱・予定調和」
 もっと端的にいえば、
 「!」
 ということです。
   ▼
 研修やワークショップに対して、ネガティブなイメージをもっている人々も、世の中には、少なくありません。
 後者の方が前者よりも、まだ100倍マシかもしれませんが、ここ数年のワークショップバブル以降は、多種多様なものが「ワークショップ」として形容され、実施されていますので、もしかすると、たいした変わらないかもしれません。
「惨いグループワーク」から学習されてしまうもの
http://www.nakahara-lab.net/blog/2013/06/post_2024.html
「ワークショップ疲れ」という現象の背後にあるもの
http://www.nakahara-lab.net/blog/2013/02/post_1948.html
「惨い研修」「惨いワークショップ」への参加履歴を通して、「研修」そのもの、「ワークショップ」そのもののイメージは、ネガティブな方向に変容していきます。
 そして、変容しているのは、イメージだけではありません。そこでは、典型的な研修の手続き、ワークショップの手続き – ここではスクリプト – も学習されています。
すなわち、
「一般には、研修だったら・・・・最初に、こうなって、次にこうなって、最後はこう終わるに違いない」
「ワークショップって言ったら、最初にアイスブレーキングがあって・・・次にこうなって、こうなるに違いない」
 そういう典型的な手続きと流れも、同時に学習されているのです。
 ですので、この典型性、この予定調和化したスクリプトを、よい意味で「裏切る」ことが、時に必要になります。「裏切ること」で、学習者の「注意(Attention)」を確保するといったことが必要になる局面があります。
 来週は、僕が講師を務める250名規模の会が、3個、予定されております。
 250名規模で初対面、しかも相手がミドルクラス、マネジャークラスということになりますと、初期状況の注意確保(Attention確保)は、容易なことではありません。たかが「注意」ですが、されど「注意」です。注意が確保されないことには、その後に、どんなコンテンツをデリバーしようとも、受容はされません。
「学習者を裏切ること」「期待を裏切ること」を避けつつ、どんな風に「予想を裏切ろうかな」。
(予想を裏切らず、期待を裏切る研修というのは、なかなか最悪な状況ですね)
 今、必死に考えています。
 いや、マジで。
 
 そして人生は続く
 ーーー
追伸.
 来週担当させていただくのは、ひとつは、企業のマネジャークラスの研修です(日本全国3地点で250名以上の方々が遠隔受講されるとのことで、かなり緊張しています)。
 もうひとつは横浜市の現場の先生方の10年次研修です。10年次研修は、250名の研修を2セット。計500人の方々が参加者です。
 後者は、横浜市教育委員会ー東大・中原研の共同研究として、1年目教員、2年目教員、3年目教員、5年目教員、10年目教員、管理職の方々と、3年間にわたって、調査データを蓄積してきました。それらの知見をまとめ、サーベイフィードバックの手法を用いて、研修で皆さんにお返し、それらを素材にして、対話をしていただきます。
 この研修は、いわゆる「サンドイッチ方式」になっていて、2回目は2014年1月です。2回目は、1000人規模の大ホールで、10年次教員の方々の中で校内で実践を積み重ねた方々が、いわゆるTED風のスーパープレゼンテーションをする、という感じになっています。先生方のプレゼン、去年、かっこよかったですよ。
 僕が学校教育を離れて長い長い時間がたっていますので、僕自身が学校研究をすることは、もうないですが、いろいろなかたちでご縁がありましたので、横浜市教育委員会の方々とご一緒させていただいています。ありがたいことです。
 この知見は、教育現場の人材育成を研究する大学院生、元大学院生らと、書籍出版する予定です。

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