2012.7.29 16:33/ Jun
母や父、妻や夫、子ども、また友人や恋人がつくってくれたおべんとう、そして、そのおべんとうを食べる人を通して、その「向こう側」にあるものを見たかった。
(阿部 了)
ANA「翼の王国」の人気連載である「おべんとうの時間」の単行本を読みました。
デコ弁(デコレーションされた弁当)でも、キャラ弁(キャラクタが描かれた弁当)でもない、普通の市井の人々の「素朴な弁当」を紹介しつつ、その人の語り、生き方、仕事を語る、という短いエッセイ集です。
取り上げられている人々は、海女さんから、プロレスラー、大学教授、幼稚園児まで様々。
何とも素朴で、何とも温かい、読んでいて、清々しい気持ちになる書籍です。
インタビュー王とよばれるスタッズ・ターケルさんの名著に「仕事!」というのがあります。かつてターケルは、115の職業、133人の実在の人々のインタビューを行い、それを一冊の本にしたためました。
「おべんとうの時間」はそれに似たテイストを、敢えて、「おべんとう」というモノを媒介することで、描き出したような気がいたしました。
おべんとうは、通常、誰かから誰かに対して創られることが多いと思います。あるいは、自分でつくるのなら、そこには、そうせざるをえない物語がある場合があります。
「おべんとう」を敢えてインタビューのきっかけにとりあげる、ということは、おべんとうの「背後」にある、そんなドラマを浮き彫りにします。
人には、それぞれ物語があります(Everybody has a story)。「おべんとうの時間」は、「おべんとう」を取り上げることで、「モノ」の背後にある、それぞれの人々の物語を浮き彫りにしていきます。
何度もいえない読後感です。
嗚呼、人って面白い。
そして、何時の日か、僕もこんな仕事がしたいと願うのです。
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