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2011.12.8 06:57/ Jun

人生は「坂の上の坂」なのか?: あの坂を登れば、海が見える!? 

 ずっとずっと気になっていた、いっぺんの詩をようやく探しました。確か中学生の頃だったと思うのですが、教科書で目にした詩で、「あの坂をのぼれば」といいます。作家は杉みき子さんという方だそうです。

 つい、先日、ある会合で「人生は、”坂の上の坂”だよね」という話が話題になりました。
 お気づきのとおり、このメタファ”坂の上の雲”にひっかけたメタファで、なかなか”雲”が見えず、”坂をのぼったら、また坂だよね”というアイロニーが込められている秀逸なメタファだと思います。
 そのときの話題に寄りますと、このメタファは、元和田中校長の藤原和博さんが、シニアの生き方を論じた新刊の書名らしいです(僕はまだ読んでいないです)。が、僕は、その書名を聞いたとき、まっさきに脳裏に浮かんだのは、「あの坂を登れば」なのです。
 中学生の頃、この詩を目にしたときは、小生、まったくの「アホズラ」で「あー、坂のぼっても、海みえないなーって話ね、ほんで、どーしたのかな?」と思って、授業を聞いていました。ハナクソほじりながら、はやく大人になりてーな、なんて思っていたのかもしれません。
 そして、それから25年・・・・
 でも、今、あらためてこの詩を読み、その内容を想像すれば、坂をめぐるこの「旅程」そのものが、「人生」のメタファなのかもしれませんね。
 あの坂を登れば、海が見える
 あの坂を登れば、海が見える
 あの坂を登れば、海が見える
 自分も、「あの坂をのぼれば海が見える」と思って、ここまで坂を登ってきたような気がします。しかし、まだ僕に「海」は見えません。それどころか、「潮騒の響き」もしません。アホズラな小生は、今もアホズラなまま。
 今もなお、坂は、目の前に広がっています。
 あなたは、いくつもの坂を越えてきましたか?
 あなたには、もう、海、見えましたか?
 あの坂を登れば、海が見える
 下記、一部引用させて頂きます。
 —
「あの坂をのぼれば」
杉みき子
あの坂をのぼれば、海が見える。
少年は、朝から歩いていた。
草いきれがむっとたちこめる山道である。
顔も背すじも汗にまみれ、休まず歩く息づかいがあらい。
あの坂をのぼれば、海が見える。
それは、幼いころ、添い寝の祖母から、
いつも子守歌のように聞かされたことだった。
うちの裏の、あの山を一つこえれば、海が見えるんだよ、と。
その、山一つ、という言葉を、
少年は正直にそのまま受けとめていたのだが、
それはどうやら、しごく大ざっぱな言葉のあやだったらしい。
現に、今こうして、峠を二つ三つとこえても、
まだ海は見えてこないのだから。
それでも少年は、呪文のように心に唱えて、のぼってゆく。
(中略)
あの坂をのぼれば、海が見える。
少年は、今、どうしても海を見たいのだった。
細かくいえばきりもないが、
やりたくてやれないことの数々の重荷が背に積もり積もったとき、
少年は、磁石が北を指すように、
まっすぐに海を思ったのである。
自分の足で、海を見てこよう。
山一つこえたら、本当に海があるのを確かめてこよう、と。
あの坂をのぼれば、海が見える。
しかし、まだ海は見えなかった。
はうようにしてのぼってきたこの坂の行く手も、
やはり今までと同じ、果てしない上り下りの繰り返しだったのである。
もう、やめよう。
急に、道ばたに座りこんで、
少年はうめくようにそう思った。
こんなにつらい思いをして、
坂をのぼったりおりたりして、いったいなんの得があるのか。
(中略)
あの坂をのぼれば、海が見える。
少年はもう一度、力をこめてつぶやく。
しかし、そうでなくともよかった。
今はたとえ、このあと三つの坂、
四つの坂をこえることになろうとも、
必ず海に行き着くことができる、行き着いてみせる。
(中略)
少年の耳にあるいは心の奥にか、
かすかな、潮騒の響きが聞こえ始めていた。
 —
追伸.
 確か、植木等さんの晩年の話だったと思うのですが、彼が役者として成功し、60歳になったときの頃の話です。「オレには、まだ自分がどうやって生きていいか、わからないんだ」とどこかで語っていたことを憶えています。そのとき、僕は驚愕しました。植木さんほど成功して、60にもなって、「まだ自分がわからないんだ」と。人生、そんなものかもしれませんね。
追伸2.
 先日、あるワークショップで、40歳代の方と20歳の大学生がペアになって作業をするセッションがありました。大学生に向かって、40歳の方が、自分の人生を語ります。大学生は、それを黙って聞いています。セッション終了後、大学生が口にしたひと言が、僕は忘れられません。「40なってでも、人は、自分がわかんないっていうんですね。で、悩むもんなんですね。私が悩むのは仕方ないんですね」
追伸3.
 先ほど、FacebookでアラムナイのIさんから、こんなメッセージをいただきました(Iさん感謝です!)。かのフランク・シナトラは、「年取っていけばいくほど、世の中のことがわからなくなる。だがそれでいいんだろう」と言っているそうです。
 あの坂を登れば、海が見える?

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