2011.10.28 17:34/ Jun
「愛することって何?」
「肌の色が違うとは、どういうこと?」
「なぜ、貧しい人とそうでない人がいるの?」
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ちょっと前のことになりますが、話題になっていた映画「ちいさな哲学者たち」を見にいきました。
ちいさな哲学者たち
http://tetsugaku-movie.com/
ちいさな哲学者たちは、フランスのとある幼稚園で、4歳児を対象にはじまった「哲学」の授業の様子を、2年間にわたって追いかけたドキュメンタリーです。
この幼稚園での、哲学の授業は、月に数回、1回約20~30分間かけて行われます。哲学の授業がはじまると、一本のろうそくに火がともされます。そこからは、先生は、ファシリテータ。問いかけを行いますが、答えは決して述べません。
先生は、時に脱線し、時に意図せざる方向で議論が沸騰する、幼稚園児たちの会話を、手際よくファシリテーションしていきます。
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映画を見ていて、いくつかのインスピレーションがわきましたが、まず真っ先に思ったのは、1) この子ども達の「哲学対話」こそが、子どもたちが置かれている社会的環境を如実にあらわしているのだな、ということです。
子ども達の哲学対話は、決して「予定調和」ではありません。それはむしろ「スリリング」で、「リスキー」なものです。
「僕は白人になりたい。黒人は嫌いだ」
「なぜ、女の人は女の人を好きになってはいけないの?」
「パパとママが仲良くならないと、離婚になって、子どもがどちらかに行かなくてはならなくなる」
この会話の奥には、彼/ 彼女らが置かれている社会的状況が垣間見られる気がします。こういう発言がでてくるということは、それを発話せしめる、何らかの「出来事」があったのだと思います。
もちろん、映像では、明示的にこれらが語られていたわけではないですが、そんな子ども達の周囲の、現代的な、錯綜し、かつ、複雑に入り組んだ社会的文化的環境を「妄想」しながら、作品を見ることができました。
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次に思ったことは、2)やはり、対話環境を与え、辛抱強くファシリテーションを行い、時間を重ね訓練すれば、対話はできるようになるのだ、ということです。
当初4歳児の頃は、子ども達の対話は、どこかぎこちないものです。しかし、時を重ねる内に、「賛成か、反対か」を述べたり、それに対する意見陳述を行ったりするようになっていきます。つまり、彼らの対話は、少しずつ「洗練」されてくる。
この熟達のうちどこからどこまでが、加齢・発達によるものかはわかりませんが、そのうち幾分かは、彼らが対話を経験するうちに、それに対応する能力が社会的に構築されているのではないか、と妄想していました。
子ども達同士の対話もさることながら、実は、子どもは子ども同士で話し合ったことを、親にも報告し、そこでも対話が生まれています。こうした社会的相互作用が、熟達のリソースなんだろうな、と考えていました。
ただし、今回哲学の授業に参加していたのは、おそらく15名ほどだと思います。映画では、そのうち8名ほどがフィーチャーされていました。フィーチャーされていない子どもは対話が不可能だったのか、あるいは、編集制作意図に8名が選ばれたのかは、興味深いところだと感じます。
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最後に思ったことは、「場をつくることの重要性」です。考えてみてください。4歳児の子どもが20分間、愛、人生、宗教などの難しい課題を対話するのは、本当は大変なことであると思います。
しかし、それが可能になるのは、先生のファシリテーションの妙も当然ありますが、「哲学の授業がはじまると、ろうそくをともし、そこからは自分の頭で考える」という「場作り≒ルール作りの徹底」にあるような記がします。
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というわけで、面白い映画でした。保育関係者はもちろん、対話とか、コーチングとか、ファシリテーションとか、そういうことに興味のある方も、興味深く見られるのではないでしょうか。こちらにトレイラーがありますので、もし興味のある方は除いてみてください。
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