2010.6.19 07:12/ Jun
昨日のTwitterで話題になったのは、下記の記事です。
楽天の三木谷社長が「英語ができない執行役員は、2年間猶予を与えるが、2年後にできなかったらクビにする」という発言をなさったことでした。
三木谷浩史・楽天会長兼社長――英語ができない役員は2年後にクビにします
http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/810ee47297d49033c2a4b43a0a5216e0/page/1/
三木谷さんは、楽年を「世界一のインターネットサービス企業にする」という企業戦略をかかげた上で、こうおっしゃっています。
■インド人、中国人も積極採用し、幹部候補生として育てている。
もう国籍は問わない。中国人、インド人は今までエンジニアが中心だったが、今後はビジネス系の職種も採用する。そのために英語を公用語化した。日本語だと、日本語がしゃべれないとハンデになるが、英語になった瞬間に全員が平等になる。
昔から「英語だけしゃべれて仕事ができない奴がいっぱいいる」という人が必ずいるが、もう英語は必要条件。読み書きそろばんのそろばんと同じ。その意味で、英語がしゃべれない社員は問題外です。
そうはいっても、「いきなり明日から英語をしゃべれ」というのは無理でしょうから、2年間は猶予を与える。2年後に英語ができない執行役員はみんなクビです。
(同Webより引用)
■部長以下の役職の社員についてもそれは同じですか。
グローバルに展開していくんですから、業務進行上の支障があれば、降格せざるをえない。
(同Webより引用)
その上で、三木谷さんは自ら中国を学ぶことにも挑戦なさっているそうです。リーダー自ら言行一致することを、おそらく、自らに課しているのでしょう。
中国語を学ぶ意味は二つある。一つ目に、僕は英語は半分ネーティブなので、みなに英語を義務づける分、僕も新しいことをやれば文句ないだろうと(笑)。二つ目に、中国市場は楽天のビジネスにとって将来的に極めて重要。最低でも30年後には、中国語圏のマーケットは英語圏を超えるでしょうから、中国の人と片言でもしゃべれるようになっておきたい。
(同Webより引用)
実際に楽天では、5月あたりから、社内の公用語を「英語」にしたといいます。経営会議から始め、一般業務の会議も英語に徐々に英語にしているそうです。日本人同士の会議においても、英語を使う、というのですから、ものすごい徹底ぶりです。一時的に業務効率が下がることは気にしていません。
■日本人同士で英語を話すと、効率が落ちるのではないかという声もありますが、そうした問題は乗り越えられますか。
簡単に乗り越えられる。1年後にはまったく問題ないでしょう。
(同Webより引用)
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楽天ほどラディカルではないにしろ、グローバル化に関する動きは、今年になってからビジネス界に、急速に広がっています。
若手社員を1年間新興国で研修させたり、中国・インド、あるいは日本大学を卒業した留学生を大量採用したり・・・。
人口減少と内需縮小により、日本市場の拡大が見込めない中、「海外進出」を経営戦略にかかげ、そのための人材マネジメント、言語政策の転換を図っているのです。
例えば、数日前のニュースでは、日本の大手企業が、幹部候補の外国人を積極大量採用するというニュースが流れました。
パナソニックは前年比5割増の1100人。ファストリは新卒採用の5割にあたる300名。東洋エンジニアリングは170人、ダイキン工業は中国でエアコン開発者を160名、楽天は新卒採用の1割から2割の100人。IHIは10人以上を採用するとのことです。
一時のブームのようにも思いますが、昨今の経済状況を考えると、かつて80年代におこった「国際化ブーム」とは、また異なる趣も感じます。今回は「やむにやまれぬ」幹事が漂っているように思うのは、僕だけでしょうか。
もちろん、すべての業種で、このような動きが起こっているわけではありません。ですので、すべての企業がグローバル化すべし、という議論ではありません。
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さて、こうした民間の動きを見て、教育業界は「対岸の火事」ですむでしょうか。
いいえ、経済界が動き出せば、おそらくは、早晩、その影響が教育業界にも及ぶのではないか、と推察します。それは、望むと望まないとにかかわらず。
学校教育と職業教育の関連性を密接にするべし、という議論は、経済界を中心に非常に大きいうねりになっています。もちろん「うねり」の主張が、「すべて妥当である」という風には僕は思っていません。しかし、それに対する、異議申し立てがあるのであれば、今まさに、声をあげるべきですし、議論をなすべきです。
実際、楽天の三木谷さんは、下記のような発言をなさっています。
■楽天と同じことを多くの日本企業がやり始めたら、日本が本当に変わり始めるかもしれない。
いちばん重要なのは、中学校の英語の先生をみな外国人か本当にペラペラしゃべれる人に替えること。今の先生を教育し直すのは、時間とカネのムダなので、別の科目に移ってもらったほうがいい。そうしたら絶対に変わる。日本の競争力が上がる。小学校からの英語教育と併せて、すぐにでもやるべき。
小学校に英語教育が導入され、中学校の英語の先生がそうならざるを得ないのであれば、高校だって、大学だって、検討に値するのかもしれません。
ちなみに、本学では、授業・教育サービスのグローバル化・英語化の議論が、今年になって様々なレベルで議論されています。僕は、センターで、東京大学全学の教育企画に関与していますので、様々な学内の機関・教員から、グローバル化に関する議論を耳にします。
例えば、東京大学工学系研究科は、英語による授業や事務の推進を図る「国際教育機構(仮称)」を立ち上げ、大学院の授業のうち5年で3割強、10年で7割を英語での講義に転換するとしています。いくつかの学科は、講義の英語化を検討しています。また、あまり知られていないですが、すでに完全に英語化しているコース、学科もいくつか存在しています。
いずれにしても、教育業界に対しては、「学校の世界」と「仕事の世界」の間の「スムーズな接続」が、社会的ニーズとして求められています。くどいようですが、それは、望むと望まないにしろ、です。
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この動き、今後、どのように広がるのでしょうか。
とても、興味深いところです。
否、違う。
そういう「他人事の問題」としてではなく、本当に今なすべきは、「自分の問題として考えること」なのかもしれません。
組織や社会や業界が、いかに、それと向き合うかは、個人には決められません。それは個人のあずかり知らないところで、決まってしまうことも多いでしょう。
しかし、「あなた」が、それにどう向き合うかは、個人の意思・選択の問題で可能なことです。もちろん、そこには「正解」も「不正解」もありません。もちろん、意思を持たない、選択しないというのも、「選択」のうちです。
あなたは、グローバル化にどのように向き合い、今、何を、なしますか?
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■2010年6月18日 中原のTwitterタイムライン
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