2009.6.18 07:02/ Jun
この世には、問題解決のプロセスを、自分でまわすことのできる人と、そうでない人が、います。
Bransford & Stein(1984)によると、よい問題解決者とは、IDEALとよばれる下記のプロセスを回すことのできる人です。
I:Identifying problem
問題を同定する
D:Defying problems
問題を定義する
E:Exploring alternative approaches
あーだこーだ方略を試して吟味する
A:Acting on a plan
実際に計画を実行にうつす
L:Lookin at the effect and learn
結果を見て、さらに改善する
これは、俗にPDCAともよばれるプロセスそのものかもしれません。PDCAのプロセスがまわるかどうかは、効果的な仕事のやり方につながるだけでなく、職場における学習にとっても大きな影響をもたらすのではないでしょうか(松尾・中原 2009)。
しかし、何だか気になるのは、このプロセスのなかに「他者」という次元がないことです。もともと「他者」「対話」ということが好きな僕としては、どうもそのあたりが気になります。
大人を考える場合、たいていの問題解決プロセスは「個人ひとり」が担うのではなく(もちろん個人がひとりで担うものもありますが)、「他者」をともなって、あるいは「他者」とともにおこります。
つまり「IDEAL」ではなく、「IDEAL with others」というプロセスではないかとも思うのです。
I:Identifying problem with others
他者と話し合い、問題が何かを同定する
D:Defying problems with others
他者と話し合い、問題を定義する
E:Exploring alternative approaches with others
他者と話し合い、あーだこーだ方略を試して吟味する
A:Acting on a plan with others
他者と協働して、実際に計画を実行にうつす
L:Lookin at the effect and learn with others
他者と結果を見て話し合い、さらに改善する
先ほどのIDEALを上記のように変更し、じっと見ていると、だんだん、そもそも最初は問題解決プロセスであったはずの「IDEAL」が、「リーダーシップのプロセス」のように見えてくるから不思議です。リーダーが大きな絵をみんなと描き、それを実行するプロセスそのものに見えませんか?
てことは、「リーダーシップ」とは、「他者を巻き込んだ問題解決プロセス」なのではないのか、なんてしょーもない妄想が広がります。
問題解決は学習研究の中心領域。そして、リーダーシップは組織論ですね。全然別のものとして考えられているけれど、実は「接点」がありそうな気がしてくるから不思議です。
まぁ、これはアタリマエのことなのかもしれません。問題解決にしろ、リーダーシップにしろ、どちらも「人間」に関して研究しているのですから。
なんとか学や、ほにゃらら論なんて、学者が勝手に「線」をひいているだけなのですから・・・。
とにもかくにも、面白いですね。
ところで、リーダーシップのLearning bar、いよいよ明日金曜日になりました。参加予定者は250名。大変申し訳ないですが、なるべく多くの方々のご要望にお応えするため、非常に混雑することが予想されます。なるべく軽装で、なるべくお早めにお越しください。
Learning bar「みんなでリーダーシップ開発を考える」
http://www.nakahara-lab.net/blog/2009/05/6learning_bar.html
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追伸.
昨日はNPO Educe Technologiesの総会でした。総会は、企業でいえば株主総会。年に一度開催されます。「もう一年たったのか」と思ってしまいました。嗚呼、時が流れるのは早すぎる。
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