2008.7.2 01:34/ Jun
先日、慶應MCCでの講演の質疑応答の時間、ひとりの参加者の方から投げかけられた「質問」が、ここ数日、「僕のアタマ」を支配しています。その方は、大変嬉しいことに、教育工学という学問に興味をもってくださり、下記のような質問をしていただきました。
—
先生のご専門の教育工学が「工学する対象」って、「教材」とか「教育システム」だけなんですか?
「教材」や「システム」や「研修」が効果的に機能し、その場の「学び」が変わるためには、それを支える「人々のつながり」、それを支えるような「組織のデザイン」が重要ではないでしょうか。それって「運用」という一言で片付けられるほど簡単な問題ではないですよね。
教育工学は、そうした「組織のデザイン」も研究対象に入るのでしょうか、それとも個々の「教材」とか「教育システム」だけなんですか?
—
ICレコーダを持っていたわけではないので、一字一句、正確というわけではないですけれど、要旨は上記のとおりです。
この質問はね、悪いけど「マリアナ海溝」なみに「深い問い」ですね。
これまでの「常識」をもって断定するのは簡単。
答えは、
「組織デザインは教育工学の研究対象ではありませんけど、それが、何か?」
ですね。
しかし、「それで本当によいのか」という問いがアタマをもたげます。ホントにホントにそれでいいのか。教育現場が苦慮している問いを前に、実務家が悩んでいる問いを前に、「それが、何か?」でいいのか。
しかし、同時に「熱意」だけで突き進むわけにはいきません。「思春期ムラムラ、鼻血タラ夫」だった頃の僕だったら、「おかしいんじゃー、コラー。アチョー!」と突き進んだかもしれないけど、僕も、世間的には「ミドル」という年代に片足つっこんでいるのです(笑)。
これを教育工学の研究対象とするには、「理論的考察と位置づけ」がどうしても必要になります。それには「冷静な思考」が必要です。
必要なのは
クールなアタマと、ホットな心
でしょうか。ここ数日、自分に言い聞かせます。
で、これをアカデミックな理論の中に位置づけようとすると、ものすごい「困難」が予想されます。誰が、誰と一緒に、どのような手法で、現場に「介入」するのか、どのように「評価」するのか・・・。問題は山積です。
まだ、見えていません。
研究は、いつも「闇の中」です。
わかっていること、できることなんか、本当に少ないのです。
自信をもって答えられることなんか、本当はあんまりないんです。
そして、ウィーンにて「煩悶」は続く。
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