2008.6.25 13:20/ Jun
いやー、最近、うちの職場は元気がないって、上が言い出してね。やることになったんですよ、”職場活性化”研修。
職場のモティベーションがめちゃめちゃハイになりますよ、って話なんですよ、それ。
それがやってみると、面白いんですわ。1泊2日の研修だったんですけどね。研修中は、ゲームやら何やらで、やたら盛り上がって、確かにノリノリになりました。
雰囲気も気分も最高潮、明日から働くぞ!、やるぞー!って気分にみんながなりました。
でもね、問題はその後なんですよ。
次の日、職場に戻ったらね、面白いくらいに”静か”なんですよ。しーん。しーん。音もしない。誰もしゃべらない。
研修中はあれだけ盛り上がったのに、職場はしーん。
あれはいったい何だったのでしょうか?
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先日、研究室にいらっしゃった方が、こんなお話をしていました。ICレコーダをもっていたわけではないので、一字一句正確に記録していたわけではないですが、趣旨は上記のようなことでした。
もちろん、上記の出来事がどれだけ一般性があることかはわかりません。が、少なくともひとつの職場では、事実としておこったことのようです。
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「活性化」という概念が、最近、キーになっているそうです。
協力しあえない職場
何だかやる気を失っている人の多い職場
正確な調査データをもっていないので実態はよく知りませんが、いわゆる「雰囲気盛り下がりな職場」が増殖しているのだそうですね。
「活性化」という概念は、こうした職場を、「外部からの介入」によって元気にしよう、そこで働く人々にモティベーションを「つけて」もらおうということのようです。
民間教育企業につとめる方から、何人かにも、同じような話を聞きました。最近、企業訪問をすると、よくマネジメント層から、こんな台詞を耳にするそうです。
うちの職場を「活性化」してください!
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くどいようですが、先のようなエピソードがどれくらい一般性がある出来事なのか、僕にはわかりません。また本当に、日本全国の職場の雰囲気が「盛り下がり気味」なのかも、経年比較できるデータを手にしていないので、判断はできません。また「活性化」という名目で、どんな研修をなさっているのか、僕は網羅的に把握しているわけではありません。
よって下記に書くことは、上記の個別のエピソードに対する僕の感想であることを断っておきます。
その上で自分の印象を述べるとすると、いくつもの疑問がフツフツフツフツとわいてきます。「自分の研究室」を、仮に、ここでいう「職場」に見立てて、想像力を働かせて思考実験してみても、なんだか腑に落ちないのです。
以下、もっとも大きな疑問だけを4つだけ書きます。
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1.まず、仮に職場が「不活性」の状態だとして、活性化していない状況はなぜ生じたのでしょうか。その原因は探求されているのでしょうか。「不活性の状況」は、長期間かけて、組織メンバーに「学習された結果」なのではないのでしょうか。そうであるならば原因の「探求」は不可欠であるようにも思います。
もし、仮に原因の探求があった場合には、どのようにその原因に切り込んでいるのでしょうか。探求がなかったとしたら、対処療法的に「活性化施策」を施すことに、本当に意味があるのでしょうか?
2.職場を、短期間のうちに、しかも研修というスタイルで、活性化できるのでしょうか。もし仮にできるとするならば、その組織構成員は「何」に盛り上がり、「何」に興奮を感じたのでしょうか。
換言するならば、つまり、そのような「短期的介入」は、「何」に対して、どのようなかたちで、どのような原理・原則に基づいて、なされており、いつ、どのような効果がでることが想定されているのでしょうか。
そして、そこで見いだされた「介入の対象」である「何」は「不活性を生み出す元凶」に関係のあるものなのでしょうか。
3.職場の不活性の状況は、1)職場におけるマネジメントのあり方、2)仕事のやり方、3)職場がかかげる目標、4)職場での仕事の振られ方やサポート体制、5)職場における社会関係などと不可分なのではないでしょうか。
もしそうだとしたら、不活性を依頼した側が、「不活性の原因である」という皮肉はおこらないのでしょうか。またこれら諸要素と不可分であった場合に、短期的介入の妥当性は何でしょうか?
4.活性化を行ったあとで、職場に戻って「しーん」となってしまう状況は、活性化を行う前よりも、さらに深刻な状況を巻き起こさないでしょうか。
それだけ盛り上がったあとでの「しーん」は、居心地のよいものなのでしょうか。よしんば、上記のような手法で、活性化に成功された場合には、何か違和感はないのでしょうか。「短期間のうちに活性化される職場って、一体何なんだろう」と。「そのようなことを依頼するマネジメント層って、何を僕たちに期待しているんだろう」と。
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要するに、一言でいうと、本当に「わからない」のです。不勉強で本当に申し訳ないのですけど、僕には上記のエピソードを理解することが、できませんでした。
でも、いろいろな方々に聞きますと、いろいろな場所で「活性化」「活性化」と叫ばれているようなのですし、多くの研修が実施されているそうなのですね。このあたりはどのように考えられているのか、ぜひ知りたいものです。
ちなみに、マネジメント層が、自分の職場を活性化したい理由は理解できなくもありません。
でも、もし僕が社員だとするならば、「僕は活性化なんかされたくない」、と思ってしまうのではないかと思います。
また、そのようなかたちで「活性化に成功した職場で仕事をすることに違和感を感じてしまう」ような気がします。
そして、問題の本質を見ようとせず、対話を通してそれを解決しようともせず、「短期的な介入」で、何とかやり過ごそうとすることに対して、疑問を感じてしまうかもしれません。
くどいようですが、上記は僕が耳にした個別のエピソードに対する感想です。あくまで想像上での話ですが。
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追伸.
本日のブログには、公開後数時間で、多くの方からメールをいただきました。何人かの方がおっしゃるには、もっともシンドイのは「無理してがんばってる職場」「研修後に無理して空回りしている会社」だそうです。たしかに「活性化」はしているのだけれども、個々人はかなり参っている。
僕はメンタルヘルス系が専門ではないので、これに関するコメントは差し控えます。しかし、「活性化」の問題は、いずれにしても、一筋縄でいける問題ではなさそうですね。
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追伸2.
明日の講演、来週のウィーンの学会準備、再来週の講演下調べ・・・死にかけ人形です。何で、引き受けるときに、負荷分散しなかったんだろう(泣)。
先日マッサージ屋さんにいったら、「このまま行くと、40には肩動かなくなるよ」と脅されました。
「お客さん、体から力が抜けない人ですね、いつも不要な力がはいっている。抜いてみて、ほら、そうじゃない。だからすーっと、力抜くんです」
体から力が抜けない人に、「力抜け」っていってもね。ポジティブじゃないひとに、ポジティブシンキングしろって言っているようなもんだよなー。そう言われてもね。
困ったな。
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