2023.3.22 08:44/ Jun
人材開発において、工数がかかるうえに、最も難しいのは「リーダーシップ研修」ではないか?
ちゃんとやろうとすれば・・・(笑)
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仕事柄、たくさんの「リーダーシップ研修」のご依頼メイルをいただきますが(大変ありがたいことで、心より感謝しています。しかし、わたしは、いま、新規の研修はお引き受けしておりません)、いつも思うことのひとつに
リーダーシップって、1時間の単発講演では「教えられない」んだけどなぁ
というものがあります。
具体的には、
一方向の講演スタイルで、最新のリーダーシップ理論を、500人の全管理職に話してください!
といったご依頼をたまわるようなケースです。
どうしてもと言われるなら「話すだけなら、できます」。ただ「やっても、たぶん、現場への効果は期待できません」。なので、人材開発の専門家のひとりとしては「やらない方がいい、時間の無駄なのではないか、仕事をしたほうがいいですよ」と思ってしまいます。
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さらにいうと「リーダーシップ研修」は、シャバの世界において安易に実践されているな、という印象を持ちます。たいていは下記の3パターンなのではないでしょうか?
1.リーダーシップ理論の「伝達」研修
2.リーダーシップ・持論アプローチという名の「ぶんなげ」研修
3.それ関係なくない、というものへの「言い換え」研修
です。これらを順に見ていきましょう。
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まず1.リーダーシップ理論の「伝達」研修とは、先ほどのパターンです。
一方向の講演スタイルで、最新のリーダーシップ理論を、500人の全管理職に話してください!
というケースですね。
ここでもっとも難しいのは、管理職ひとりひとりのキャラ、置かれている状況(緊急時なのか、粛々と仕事をするモードなのか)によって「必要なリーダーシップ」は変わってくるにもかかわらず、「最新のリーダーシップ理論」という「たったひとつの武器」を、十把一絡げに全員に伝達してしまって、本当に成果があがるのか、ということです。
おそらく、わたしは「限りなくNOに近い」と思います。また、「いくら最新のリーダーシップ理論といっても、これが、わたしの部下や職場に役立つのか?」というハレーションも、現場のなかのひとに、生まれやすいものです。
「ちゃんとやろう」とすれば、複数のリーダーシップ理論やフレームワークを伝え、リーダーひとりひとりにあわせ、自分のリーダーシップを学び直す、見直していかなければならない、ということになります。ですが、そんな工数をかけるわけにはいきませんから、先ほどの「十把一絡げ・伝達研修」が生まれてしまうのです。
でも、ひとのリーダーシップを高める、というのは「そういうこと」なのです。ひとりひとりと向き合う覚悟、ひとりひとりに投資する覚悟がなければ、おそらくやめたほうがいい、と思います。
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2のリーダーシップ・持論アプローチ研修とは、
リーダーや管理職は、自分なりのリーダーシップの持論をもつときに、効果的なリーダーシップが発揮できる
とされる考え方に基づいた研修です。これは「自分のリーダーシップをきちんと見直す鏡」のようなツール、たとえば、複数回実践される360度評価、多面評価などと組み合わせられたときに効果を発します。
360度評価などを用いて、リーダーが自分のリーダーシップを見直したときには、リーダーの内面に葛藤も生じます。できれば、この葛藤を解消するワークや、理論などを教えることも一計です。それらを踏まえ、職場に戻って実践を行い、ひとりひとりにメンタリングなどを行っていけば、なお、効果も期待できます。
ちゃんとやれば、効果は、期待はできます。
でも、シャバで実際に起こっているのは、リーダーシップ・持論アプローチという名の「ぶんなげ」ではないでしょうか。
すなわち
1.リーダーシップの特定の理論を伝達した上で、
2.「持論が大事」だといい、
3.「持論にまつわる作文」を書かせて終わる
以上。
作文はできるかもしれませんが、これは「本当に現場で実践される」でしょうか?
その効果には「香ばしいかほり」が、漂っている気がします。
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3の「それ関係なくない」というものへの「言い換え」研修は、最近は、さすがに少なくなってきたかも知れません。
たとえば、
軍隊に1日体験入隊し、リーダーシップ精神を涵養する
とか
一晩で50キロの山道をチームでのぼり、リーダーに必要なマインドを醸成する
とかいうやつですね。
冷静になって考えてみてください。
これらは、どの点が、リーダーシップに関係あるんでしょうか?
それ「軍隊に1日体験入隊しただけ」だし「山道歩いただけ」だよね・・・それ関係なくない?(笑)
すなわち「リーダーシップ研修」とは「コーティング」なのです。たいてい、こうした研修の説明書きには「リーダーシップ精神を涵養する」とか「リーダーマインドを醸成する」とかいう言葉が用いられています。「醸成」とか「涵養」とかいう「ヌルイ言葉」が出来たら、注意が必要です。
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今日は、リーダーシップ研修についてのお話をしました。リーダーシップ開発理論は、この20年で猛烈な勢いで発達しており、レビュー論文も出てきています。効果性にまつわる論文もあります。そうした研究知見をしっかり踏まえてカリキュラム設計を行う必要があるでしょう。
また「ちゃんとやる」には、結局、「ひとりひとりのリーダーに向き合うこと」が求められます。ここをはしょってしまうと、組織には間違ったメッセージを発してしまうケースも、ままあります(自分とまったくあわない武器を手渡してしまうことになる)。
そして人生はつづく
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