2021.10.15 08:26/ Jun
組織開発という言葉が現場に根付けば、その言葉は消えてなくなる!?
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組織開発には「外部のプロフェショナルが行う組織開発(いわゆるProfessional OD)」と、「現場の管理職が担う組織開発(Manegirial OD)」があります。
組織開発とは、組織が「WORK(よりよく機能する)」ことをめざして、「組織の状態」を見える化しつつ、組織のメンバーが「対話」をまじえて、「組織の未来」を決めていくこと、です。
あなたの組織が「ゲティスバーグなみの激戦地的・阿鼻叫喚の修羅場組織」なら、その組織開発は、外部のプロフェッショナルが担うのがいいでしょう。ここまで「荒れて」しまえば、組織を内部が変えることは極めて難しくなります。
あるいは、組織開発を1度もやったことがなくて、その仕組み・習慣を組織内につくりあげていくためには、外部のプロフェッショナルが役に立つと思われます。
しかし「組織開発の本丸」は「外部のプロフェッショナル」ではなく「現場の管理者」である、という通説です。
なぜなら、
自分のチームを率いる管理職やリーダーこそが、自らのチームを、日々日々、組織開発できること
がもっとも効率的であり、パワフルだからです。
外部のプロフェッショナルは雇用にお金がかかりますし、クライアントとはいつかは必ず「別れる運命」にあるひとです。
よって、現場マネジャーが組織開発を行うことを支援することは本質的なことであり、望ましいことです。
昨日の大学院ゼミで、斉藤光弘さん(中原研OB)がレビューしてくださった論文にも、そのことが書いてありました(要約感謝です)(Shani and Coglan 20218)。
同論文のなかで、ODプロフェッショナルのワイスボードさんは、下記のように述べます。
「組織の問題を専門家が解決するのではなく、すべてのひとびとが組織の問題を解決する時代へと変化してきた」
ワイスボードさんが、この論を展開したのは1970年代後半でしたが、まさにおっしゃるとおりだと思います。
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しかし、ここには学問上の、概念上の問題点も残されます(学問上の、概念上の問題です、実務では気にする必要はありません)。
それは端的に述べてしまえば、
「すべての管理職が行える組織開発」とは、もはや「組織開発」なのではなく「マネジメントそのもの」なのではないか?
ということです。
実際、自分の組織を把握して、自分の組織のあり方を自己決定する、なんてことは、組織開発という概念を用いずとも、マネジメントそのものである、ともいえます。
管理者は成果をだすために「組織開発」をしようとするのではなく「マネジメント」をしようとするはずです。そうならば、「組織開発」という営為は、おそらく「マネジメント」の中に溶解していくことになるでしょう。
かくして、
組織開発という言葉が現場に根付けば、その言葉は消えてなくなる
という「謎の状態」が机上の空論としては生まれうることになるのです。
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まぁ、ここには、ある皮肉(アイロニー)もございます。
このまま組織開発が現場マネジャーに普及していけば、「組織開発」という概念自体なくなってしまうのかもしれませんが、おそらく、そのことは実際には「起こらない」ということです。
なぜなら、
すべての管理職が、組織開発をきちんと行えるほどのスキルを持ち合わせるようには「決してならない」であり、今日も明日も、組織には順調に「グダグダな組織課題」が生まれ続けるから
です。悲しいかな、それが現実です。
組織開発どころか、日々日々のマネジメントすら、グダグダ・グズグズな管理職が数多くいるなかで、組織開発などという「名刀・村雨」並の「とがった武器」を用いることのできるひとは、そう多くはありません。
どんなに経営から働きかけようとも「学び直そうとする管理職」ばかりではないのです。だから「グダグダな現場」が生まれます。
だから、机上の空論では、組織開発は「死にません」
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ここまでをまとめます。
組織開発なんていう言葉を用いずとも、そもそも組織開発を行ってきたスーパー管理職のもとでは、組織開発という言葉はいったん、死にます(死ぬというより意味がなくなります=マネジメントそのものになります)。
しかし、一方、組織開発的なことをきちんと行えなず、日々のマネジメントもグダグダな管理職の率いる現場は、たくさんの問題を、今日も、明日も、順調に引き起こします。
そこには、外部から職場を改善するべく働きかける力が必要になります。それが「外部プロフェッショナルによる組織開発」です。ここで組織開発は生き残るのです。
組織開発は「グダグダな組織」を減らすことを目標にしている試みです。
しかし、その概念の生存のためには「グダグダな組織」が必要である
というまことにアイロニカルな状況が生まれます。
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さて、今日の問題は、たくさんの前提と仮説を含む私論です。みなさんはいかがお考えでしょうか? いつも思いますが、組織開発のこの手の理論研究、学説史研究は、いつも「中2病」、すなわちアイデンティティクライシスにかかっています。「自分たちが何者か?」「自分たちは誰の役に立てばいいのか?」「自分たちはいかにサバイブしていけばいいのか?」がいつも「見えない、見えない」と言っている(笑)。まぁ、気持ちはわかりますが、この「煮えきらなさが組織開発」です。まぁまぁ、現場を裏切らず、実践なさいな。
ちなみに、最後に申し上げておきますが、わたしは「組織開発」という言葉を「守りたい」とは思いません。これは「人材開発」に関しても、同じです。「守りたい」とは思いません。概念と心中する気はわたしはありません。
組織開発や人材開発という「言葉」が普及して消えてなくなるなら、それも本望。それが目の色の黒いうちにおとずれれば、我が人生、大成功です。
しかし、組織開発や人材開発という「言葉」がなくなったとしても、その営為(行動)は、人が生けとし生きる限り、誰かが担い、実践しなければなりません。そこには新たな概念をつくらなくてはなりません。そこには貢献したいと思います。
地に足をつけて現場を変えようとする人々の、地道な取り組みを応援するべく、残された時間、学問的・実務的貢献をしていきたいと思っています。
残り20年(20秒)・・・長いか、短いか。
そして人生はつづく
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相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
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中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約34000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
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