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2021.7.27 08:18/ Jun

「詩人のつとめ」と「研究者のつとめ」!?

 詩人である私のつとめは
 すべての言葉を
 われわれの「からだ」と「暮らし」に
 根づいた言葉に
 どうしたら、できるか、である
 (谷川俊太郎)
  
  ・
  ・
  ・
  
 こちらは、谷川俊太郎さんの言葉です。
  
 詩人の役割について、これほど明確、かつ、簡便に、わたしたちに「腹落ち」することばで説明したひとを、僕は知りません。
 谷川さんにとって、詩人の役割とは、わたしたちの「からだ」や「暮らし」に根付いた言葉を、いかにつむぐか、ということにある、といいます。
  
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 この言葉をはじめて目にしたとき・・・僕は、「研究者のつとめ」について考えていました。「研究者のつとめ」とはいったい何なのだろうか、と。いったい自分とは、なぜ存在しているのだろうか、と。
  
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 理系、文系、学際系・・・研究分野によっても、研究者によっても、この問いに対する答えは違うのだと思いますし、それでいいのだと思います。
 大の大人なんだから、お好きになさいな。他人のことは、わたしは興味はありません。自分で、自分を、自己定義すればいい。大切なことは、それだけです。
      
 僕に関していえば、この問いに対する答えは、下記のとおりです。
 谷川俊太郎さんの知性をリスペクトしつつ、言葉をすこしだけ言い換えるのであれば・・・
   
 研究者である私のつとめは
 すべての物事を
 われわれの「理性」と「論理」に
 根づいた言葉で
 どうしたら表現できるか、である
  
 ということになるのかな、と思います。
  
 パクリじゃん(笑)
 いや、パクリじゃないよ。
     
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 このセンテンスを考える際、真っ先に頭に浮かんだのは、カントの思想でした。
 高田明典さんは「現代思想のコミュニケーション的展開」(筑摩書房)において、カントの思想の要所を、下記のように明瞭に説明されています(以下、引用しつつ、紹介させていただきます)。
    
 曰く、
   
 カントの生きていた時代、多くのひとびとは「太陽は東から登り、西に沈む」という事実から、「太陽が地球のまわりを回っている」と考えていました。これが一般のひとびとの認識です。
  
 しかし「真実」は、まったくその逆です。「太陽が地球のまわりを回っている」のではなく「地球が太陽の周りを回っている」というのが「真実」です。
  
 カントは、直接わたしたちが観察しうる現象を「仮象」とよびました。このなかから「真実」をつむぐためには「理性」や理性に駆動された「論理」が必要だとしました。
  
 「仮象」のなかから「理性」の力で「真理」に到達する。
 観察される現象そのものから考えるのではなく、観察される現象にむきあい、それを理性と論理で「真実」をつむぐ。これが重要なことなのだ、と。これがカントの為した「超越論的転回」というものだそうです。
  
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  ・
  ・
  
 僕の考える研究者は「観察される現象」と向きあいます。
 しかし、彼/彼女は、観察を信じますが、観察を信じません。
  
 そこで必要になるものが理性と論理です。
 観察したものを、そのまま信じるのではなく、理性と論理の力で、その背景にある理を「表現」するのが、僕の理想です。
  
 ま、理想は果てしなく遠く・・・
 実際の日々の生活は、地味すぎるのですが・・・。
  
  ▼
  
 今日は「詩人の役割」を下敷きにしながら、研究者とは何かを考えてみました。くどいようですが、これは、わたしの考えです。
  
 とりわけ重要なことは、こと僕に関していえば、自分の仕事の本質は「表現」であると思っています。表現の形式や様式は、この際、どうでもよろしい。理性と論理を信じて、言葉を用いて表現することが、僕の仕事です。
    
 あなたにとって、研究者とは何ですか? 
    
 そして人生はつづく 
    
  ーーー
    
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