2021.6.30 07:51/ Jun
あなたが、最も「能力発揮」できる場所はどこですか?
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仕事柄、講演などを行わせていただくことがあります。
ここ1年ほどは、コロナ禍につき、講演は、自宅からオンライン配信する、といったことが、ほとんどです。自宅の、狭い部屋の、自席から、多くの方々を対象にお話をさせていただいています。
ところで、ここで非常に面白いことに気付きます。
講演を依頼なさる方によっては、気をきかせて、
「ご自宅だと、カメラなどの画質にも限界があるでしょうから、こちらでスタジオなどの収録施設を用意しましょうか」
と申し出ていただける場合があります。ありがとうございます!
せっかくお声をかけていただいているので、ただちにお断りすることはありません。とはいえ、たいていの場合は丁重にお断りします。
しかし、依頼なさる方によっては、「自社で施設を新たにつくった」とのことで
「ぜひ、今回の収録で、使って欲しい」
とおっしゃる場合もあります。
そうした場合は、やむを得ませんので、自宅を出て、いつも使い慣れていないコンピュータ、マイク、マウス、モニタを使って、講演の収録を行わせていただきます。
しかし、実際には、わたしとしては、あまりこれを行いたくありません。
なぜなら、
私自身が、ベストな状態で、能力発揮を行うことができないから
です。
カメラやモニタの位置が異なると、視線がずれます
マウスが違うと、スライドの操作が遅れます
コンピュータが異なると、転換の速度が異なります
マイクが異なると、声色が変わります
微妙な差なので、聞いている方にはわからないかもしれません。が、すべてが、少しずつ「ちぐはぐ」になるのです。
さすがに、わたしも講演を数百回、数千回こなしているプロ!?(キラーン)なので、そういう時間は短いです。しかし、少なくとも、一瞬は「ちぐはぐな時間」を経験します。
このように、わたしの講演能力のディテールは、僕が講演をするデバイスやシステムに深く依存しています。だから、それが異なり、そこから引き離されると、能力発揮ができません。
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一般に、シャバの世界では、能力の発揮とは「個人が内部に有しているもの」と考えられています。が、実際は、そうではありません。
むしろ、能力発揮の程度は、個人と、個人が埋め込まれている状況に深く依存します。
なので、僕がベストに能力発揮できるのは、僕がふだん使い慣れているテクノロジーと「ともにある」ときです。
すばらしいスタジオをご用意いただいても、わたしが「ちぐはぐ」になるのです。僕には自宅の狭い空間が一番。
なぜなら、ここには、いつも「ともにあるテクノロジー」があるからです。
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今日は講演のことをネタにしつつも、能力発揮とテクノロジーの関係について書かせていただきました。コンピタンス(有能さ)とは、個人の内部にのみ存在するのではなく、個人と個人の周囲にある状況に深く依存しつつ、達成されている、ということです。
ははーん、と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、今日のネタは、かつて、エドウィン・ハッチンスやルーシー・サッチマンなどの認知人類学者たちが明らかにした、状況的認知、分散認知の研究に近いものです。僕が学部時代には、このような研究の文献をよく読んでいました(懐かしいものです)。
有能さの発揮は、テクノロジーに分かち持たれています。
あなたが最も能力発揮できる場所とはどこですか?
そして
あなたの能力は、何に分かち持たれていますか?
有能さが環境に依存するのならば、そういう環境をあなた自身が工夫してつくりあげることも、また能力の一つです。パフォーマンスが最大化できる環境を、あなた自身がデザインするのです。
あなたは、自分が最も能力出来る環境を、自らつくりだしていますか?
そして人生はつづく
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