2021.6.9 07:52/ Jun
「働くみんなの必修講義 転職学」という本を世に出せていただいたせいでもあるんでしょう。転職という言説空間に跳梁跋扈する、様々な「風説」が、ときに、気になることがあります。
最近気になっているのは、
「転職するために、自分の市場価値を高めよう」
という言説です。
この命題は、手をかえ、品をかえ、転職のためのセミナー、転職をあおる言説のなかでは、繰り返し、語られます。
しかし、へそ曲がりな僕は、この命題を見るたびに、こう思うのです。
端的に言うと、これ「ウソ」じゃないか、と(笑)。
本当に「転職という目的」を達成するために、「自分の市場価値」などという「ゆるふわな指標」を、ひとは高めようとするんだろうか、と(笑)。
むしろ、シャバの現実は、こうではないか、と思うのです。
ワンセンテンスで申し上げれば、
市場価値が高いひととは、決して「転職の目的」ために、自分の市場価値を高める努力をしたひとではない
ような気がします。
むしろ、
市場価値が高いひとというのは
1. やるべきことをこなすなかで
2. やりたいことを仕事にできるチャンスに出会い
3. それがたまたま世の中の流れと「同期」したひと
ではないか、と思うのです。
彼 / 彼女は、やるべきことをやり、やりたいことをするチャンスをつかみ、頑張っただけ
なのではないかと思うのです。
そして、世の中は「不条理」で「気まぐれ」です。
頑張ったその成果が「世の中の時流にのれるか、いなか」また別の話です。
市場価値の高いひとは、「彼 / 彼女のがんばり」に対して、たまたまスポットライトがあたる同時代を生きていたのでしょう。
ひょんなことから生まれたチャンスをものにして、結果として、たまたま生まれるものが「市場価値」ではないでしょうか。
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逆に、「市場価値の高いひと」が、仕事に奮闘しているときに「絶対に」考えなかった問いとはなんでしょうか。
それは、冒頭の「煽り言説」に関係します。
市場価値の高いひとが、おそらく「絶対に考えなかった問い」とは、「自分の市場価値はいくらで、それを転職のために、どのように高めることができるだろうか、しめしめ」という問いではなかったかと思います。
彼 / 彼女は、やるべきことをやり、やりたいことをするチャンスをつかみ、頑張っただけ。それは、結果として、そうなっただけ。
わたしの周りには、いわゆる「市場価値」がはちゃめちゃ高いひとがいます。が、彼 / 彼女のなかで「自分の市場価値はいくらで、それを転職のために、どのように高めるか」という問いと格闘していたひとは、残念ながら、1人もいません。もちろん、N=10くらいですが。
▼
今日は転職業界に蔓延る「市場価値言説」について私見を述べました。何も実証されたわけでも、はたまた、今後、僕が、これを実証したいわけでもありません。
ただ、「転職するために、自分の市場価値を高めよう」という言説は、いったい、誰にメリットをもたらすのかを考えるとき、それは、おそらく「転職者」や「求職者」ではない、ような気がします。
それで得するのは???
もうおわかりでしょう。
それは、転職を煽り、市場価値を高めるための高価なセミナーを売っているひとなのではないか、と思います。
そして人生はつづく
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