2021.6.8 07:43/ Jun
プレゼンづくりとは「仮想オーディエンスの声」との対話である
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仕事柄、授業・講演・ワークショップなどを日々行っておりますので、本当に毎日のようにプレゼンをつくっているような気がします。
プレゼンをつくるときに、わたしがもっとも大切にしていることは、
1.仮想オーディエンス(仮想の聴衆)を「頭の中」に住まわせ
2.彼 / 彼女に僕のプレゼンを聞いてもらい
3.敢えてツッコミの「声」を発してもらう
そのうえで、
4.その仮想オーディエンスの「声」に答えるかたちで
5.プレゼンをつくりなおすこと
です。
要するに、僕のプレゼンづくりとは、
仮想オーディエンスとの対話
なのです。
今日は、このことについてお話ししていきましょう。
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たとえば、今、仮に、
新入社員向けに「リーダーシップ」を教える研修(プレゼン)をつくっている
とします。
今、8割くらいの完成度で、あらっぽく、ザクッとスライドをくみ上げました。ふぅ。
完成度が8割くらいに達したら、僕は、頭のなかに「仮想オーディエンス」をムクムクと思い浮かべます。そのうえで、彼 / 彼女に、今、できたばかりのプレゼンを聞いてもらうのです。
彼 / 彼女らに、「容赦のないツッコミ」「コテコテのいちゃもん」を入れてもらいます。「ツッコミ」や「いちゃもん」で頻出する言葉は、これです。
「いやいやいや、とはいいますけどね・・・」
「そうはいいますけどね・・・」
すなわち、僕のプレゼンに対して
「いやいやいや・・・中原さんは・・・・とはいいますけどね・・・XXXXXXでしょ」「そうはいいますけどね・・・YYYってこともあるでしょ」という風にツッコミをいれてもらうのです。
要するに「白け役」を担当してもらう。もっとも「腰の重い人」の言葉を代弁してもらう
残りのプレゼンの2割は、この白け役との「徹底対話」です。なぜなら、プレゼンの最終目的は、オーディエンスの方々に「重い腰をあげて、動いてもらうこと」でしょう。ここで、彼らとの対話に耐えられなければ、プレゼンの目的は果たせないわけです。
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たとえば、新入社員にリーダーシップを教えるというプレゼンをつくっているのだとすれば、仮想ツッコミは、下記のようなものです。
「いやいやいや、とはいいますけどね、いきなり新入社員にリーダーシップといわれても、わたしに関係ないっすよ。わたしは新入社員であって、学びモードですから」
といった「白け」もありうるでしょう。
あるいは、
「いやいやいや、そうはいいますけどね、新入社員の分際でリーダーシップなんか発揮した日には、上司から「でしゃばんじゃねー、コルァ」っていわれそう、じゃないですか」
とか
「いやいやいや、そうはいいますけどね、なんで、新入社員だけにリーダーシップを教えてるんですか? 他の職場のメンバーにもリーダーシップを教えないと、フェアじゃなくないですか? そうしないと、わたしだけ、とんがりガール、とんがりボーイになっちゃうじゃないですか」
とか
「いやいやいや、とはいいますけどね、だいたい新入社員のリーダーシップって評価されるんですか? それで、お前、今期、浮いてたね、とか言われても、困るんですよ」
とかいうツッコミを予想してきます。
そのうえで、あとの2割のプレゼンづくりは、こうした声を各所にちりばめ、プレゼンのなかで、この問いに「答えて」いくのです。そうすれば、あなたのプレゼンテーションは「対話的」になっていきます。
別の言葉でいうと、プレゼンを対話的に構成するということは、僕のプレゼンを聞いたひとが普通に「頭に思い浮かべる疑問や反論」を前もって、自分の頭で想像し、それらの「声」に答えることで、彼らの理解や共感を得ようとということになります。
だから、毎日、僕は「対話」しています。
頭の中の「仮想オーディエンスの皆さん」と、ブツブツ対話しながら、生きています(笑)。
外から見れば、ちょっと「不思議ちゃん」ですね。
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今日は「仮想オーディエンス」を使った対話的なプレゼンづくりについてお話ししました。学校では決して教えてくれない「秘伝・妄想対話プレゼン作成技法」はいかがでしたでしょうか?
あなたのプレゼンは「仮想オーディエンスとの対話」がありますか?
あなたが今日行うプレゼンには、どんな「ツッコミ」や「いちゃもん」が寄せられそうですか?
そして人生はつづく
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