2021.4.2 08:23/ Jun
ひとびとは、どのように対話を通じて、共通了解に至るのか?
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この問題に対して、フッサールを基盤にしながら、哲学的考察を行った本が、西研さんの著された「対話を哲学する」です。この本、めちゃ素晴らしかったです。
内容が哲学だし、完全無欠の門外漢なので、小生、「鬼誤読」をしているかもしれませんが、知的興奮を感じながら、読み終えることができました。
組織開発、ファシリテーション、ワークショップなどで対話の実践を行っている方にはおすすめの一冊です。
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たとえて言うのならば、本書で論じているのは、
フッサールの哲学、すなわち「現象学」を「他者にひらく」試み
です。
一般に、フッサールは「孤高のひと」と言われています。
ひとが、事柄を認識するためには、事柄そのものに対して意識を向けて、その意味を問うことによってそれが可能になる。フッサールは、このような作用を「現象学的還元」と呼びました。
ひとは「現象学還元」を通して、物事を認識し、「確かに、それは、こうである」というエビデンスを得ていきます。これ筆者は「反省的エビデンス」と名付けました。
しかし、ここに問題が起こります。
ひとは、ひとりで生きているわけではありません。
ひとは、他者と共存しながら生き得ています。
たしかにフッサール哲学では、ひとりひとりは、現象学的な還元を通して、事物を認識し、その本質を認識できるかもしれません。
しかしながら、ひとは「ひとりで行き得ぬもの」ならば、他者とはどのような関係を取り結べばいいのでしょうか。ひとが他者とどのような関係を保てば、共通了解をつくりあげ、他者と共存できるのでしょうか。
この問題は、フッサール哲学の弱点とされてきた「反省の私秘性」という問題に直結します。たとえていうのであれば、「ひとの認識が、個人に閉じてしまう」という問題ですね。この問題に対して、これまでフッサールの哲学は、明確な答えを提示できていませんでした。
これが本書のテーマ「現象学を他者にひらく」です。
詳細は本書をお読みいただきたいのですが、筆者は、この問題に対して「本質観取」という概念を導入し、「他者の体験からも、ひとは事物を認識できるようになること」を論じます。換言すれば、他者との対話からも、ひとは物事を認識し、その意味を明らかにすることができるということです。
この理論的考察は、組織開発、ファシリテーション、ワークショップなどで対話の実践などを行っている方には「朗報なはず」です。
なぜ、対話を行うのか?
対話を通じて、ひとびとが相互了解を得られるのはなぜか?
という根源的な問いに対して、ひとつの答えを提供しうるからです。
骨髄となるような思想を欲する、実践家の方にはおすすめの一冊です。
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今日は西研さんの「哲学は対話する」をご紹介しました。
この本を読みながら、僕は、大学院時代、僕が大変お世話になっていた先生、菅井勝雄先生(すがいかつお先生)を思い出していました。
(菅井先生には大変お世話になりました。この場を借りて心より御礼を申し上げます)
実は、菅井先生は、哲学のひと、理論のひとでした。先生は、当時としては非常に珍しかった社会構成主義、ガーゲンなどを読み込み、それを「学びの理論」に組み入れようとなさっていました。
当時20代だった僕は、若気の至りからか、先生が哲学の本ばかりを読まれているのを、不思議に思っていました。
我ながらアホすぎてものも言えないのですが「もっと実証的に、もっと数字を活用して、ものを論じた方がいい」のではないか、とすら、思っていたのかもしれません。
しかし、それから20年。
最近、菅井先生のお気持ちが少しずつわかるようになってきた気もします。
たしかに
フィールドと格闘すること
変数と変数の関係を追うこと
は楽しい。
しかし、その格闘に明け暮れているうちに、僕は変数の関係を追うだけのことに満足ができなくなってきています。時は流れ、今度は「自分の骨髄となるような思想」が欲しくなってきました。
最近は、書店にいっても、哲学のコーナーばかりに目が行ってしまいます。
ま、門外漢の下手の横好きなので、「はるかなる誤読、含む」なのですが(笑)。
骨髄となるような思想を!
そして人生はつづく
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