NAKAHARA-LAB.net

2021.2.19 08:04/ Jun

ニッポン社会に「対話」がさっぱり普及しないわけ!?:あなたは「対話」に、どんなイメージをもっていますか?

 あなたは「対話」に、どんなイメージをもっていますか?
 対話という言葉から、どんな光景を思い浮かべますか?
        
  ・
  ・
  ・
  
 おそらく、この20年の人文社会科学(人材開発も、組織開発も、そのなかの、ほんの一部の領域ですが・・・)で、最も頻繁に用いられた言葉のひとつが「対話(Dialogue)」でしょう。
  
 ニッポンには「対話」がない
 ひとびとのあいだに「対話の場」をつくらなくてはならない
 まずは「対話」からはじめよう!
  
  ・
  ・
  ・
  
 ここ20年、様々な人々が、対話の重要性を認め、それを実践するべく、多くのイニシアチブやプロジェクトを立ち上げています。
 僕も、それに深く共感するひとりであり、ことあるごとに、自らの著作のなかで「対話の重要性」を書き続けてきました。
 教育現場でも、次期学習指導要領のなかで「対話的な学び」の重要性が喧伝されるにいたっています。
  
 しかし、自戒をこめて申し上げますが、これほど、多くのひとびとが、対話の重要性を指摘しているのですが、
  
「対話は、それほど普及していない」
  
 とも言えるような気もします。その理由はさまざま考えられます。しかし、その理由ひとつにかかげられるのは、
  
 ひとびとが「対話という言葉」に対してもっているイメージ(ルートメタファ:Root Metaphor)が、そもそもバラバラである
  
 という問題があるな、と僕は思います。
   
 つまり「さぁ、対話をしましょう」という言葉をきいたときに、ひとびとの脳裏に喚起されるイメージ、実現したい光景が、そもそもにおいて、はちゃめちゃに「異なっている」
  
 ということです。
  
  ・
  ・
  ・
  
 これ、どういうことか、と申しますと、今ひとつの「試行実験」をしてみましょう。皆さんは、下記のような問いに対して、どのように答えるでしょうか?
    
Q.対話という言葉から、あなたは、どんなイメージをもちますか?対話を他の言葉に喩えてみてください。
  
 さぁ、皆さんは、この問いに対して、どうお答えになりますか? 一寸、考えてみてください。対話を他の言葉に喩えるとしたら、どんな言葉になりますか?
  
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  
 実は、これ、先日、ある研究ミーティングで、僕が、共同研究者の皆さんに投げかけた問いなのです。答えは、下記のようなものでした。
  
Aさん「対話ですか・・・うーん、対話とは面談のようなものですね。対話って面談してるイメージ」
  
Bさん「うーん、対話といったら、カフェのようなものですかね」
  
Cさん「対話といったら、車座のイメージですね。机をどけて、みんなで、車座になって、座っているイメージですかね」
  
  ・
  ・
  ・
  
 ほらね、バラバラでしょう。
 皆さんは、どのようなイメージをお持ちになりましたか?
  
 もちろん、どの答えがあっている、あっていない、ということが問題ではありません。
 要するに、僕が申し上げたいことは、これだけ、ひとびとが「対話」という言葉にもっているイメージが異なる、ということなのです。
  
 これだけイメージが異なっているのですから、
  
「さぁ、対話をしましょう!」
  
 といったって、何をしていいか、わからない。
 何が求められているか、わからない。
 あるいは、話がはじまった、としても、話がまったくかみ合わない、ということが言えるのだと思います。
  
 さらに妄想を激しくすると・・・こういうこともいえそうですね。
  
「ひとびとのあいだに、対話を促したいのであれば、対話以前に、対話のイメージを意識あわせする必要がある」

  ▼
  
 今日は「対話にまつわるイメージ、ルートメタファが、ひとによって大きく異なっている」というお話をさせていただきました。
  
 思うに、対話とは、わたしたちの社会において、相当、「特異なコミュニケーション」なんだと思います。
  
 なるべくまったり、言葉に頼らず、空気を読んで、背中を見て察する、忖度コミュニケーションをしてきた、わたしたちの社会においては、「対話」とは「所与」でもなければ、自明でもない。
  
 だからこそ、対話をつくりたいのであれば、対話にまつわる意識あわせを行い、安心・安全の場をつくりあげることが重要になる、ということなのだと思います。
  
 そして人生はつづく
   
【おっ、対話について学べる、こんな無料イベントもありますよ!】
今さら聞けない対話学!?:そもそも対話を考えよう!(3月14日・日曜日・無料オンライン)
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12644
 
【関連記事】
ロマンチックワード化する「対話」!?:最近、「対話」が「ロマンチックワード」化していないだろうか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/10644
  
日本初!刑務所のなかでの「治療共同体(対話)」を克明に描き出した、とてつもない映画「プリズンサークル」を見た!
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11075
  
対話とは「意見をポットンと落とすこと」!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/7372
  
対話とは「違い」であり、「非対称」である
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/2019
  
  ーーー
       
【新刊予約発売中】
新刊「学校がとまった日」の特設サイト完成!&予約販売開始中! 緊急事態宣言・全国一斉休校で「学びを継続できた子どもの特徴」は?学びをとめないために学校にできることは?:書籍の内容が概観できます!どうぞご覧くださいませ!
  

新刊「学校がとまった日」の特設サイト
http://toyokan-publishing.jp/stop/index.html
  
新刊「学校がとまった日」予約販売開始中(AMAZON)

   
  ーーー
     
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
   
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
   
  ーーー
  
ラーニングエージェンシーさんと中原研究室の共同研究により開発した「女性の視点で見直す人材育成:トランジションサポートプログラム」のご提供がはじまっています。ライフステージに応じて、役割移行を支援する、きめ細かい研修となっています。共同研究の成果は書籍「女性の視点で見直す人材育成」としても刊行されています。
  
女性の視点で見直す研修 トランジション サポート プログラム
https://www.learningagency.co.jp/service/transition/
 

 
 ーーー
    
。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
    

対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
   
  ーーー
   
「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

    
 ーーー
  
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
      
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
    
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
   
 ーーー 
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約31000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

あなたの組織は「社員の主体性を喪失させる仕組み」が満載になっていませんか?:うちの社員には「主体性」がないと嘆く前にチェックしておきたいこと!?

2024.11.25 08:40/ Jun

あなたの組織は「社員の主体性を喪失させる仕組み」が満載になっていませんか?:うちの社員には「主体性」がないと嘆く前にチェックしておきたいこと!?

2024.11.22 08:33/ Jun

最近、僕は何をやっているのか?そうね、いろいろやってます!?

2024.11.15 15:01/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.9 09:03/ Jun

なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?

2024.10.31 08:30/ Jun

早いうちに社会にDiveせよ!:学生を「学問の入口」に立たせるためにはどうするか?