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2021.1.19 07:57/ Jun

あなたが語っているのは「一番ダシのように澄みきった言葉」ですか? それとも「血合いとアクのまじったドロドロワード」ですか?

 あなたが語っているのは「一番ダシのように澄みきった言葉」ですか? それとも「血合いとアクのまじったドロドロワード」ですか?
  
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 わたしたちは、誰かにものを伝えるときに、ついつい「言い過ぎてしまう」か、ないしは「言い足りないか」のどちらかになってしまいがちです。
  
 饒舌がすぎて、言葉をついついギトギトにしてしまうか
   
 あるいは
   
 滑舌悪く、言葉や論理ををつい「はしょって」しまうか
  
 わたしたちの日常は「よい加減」になることは、極めて難しいものです。自戒をこめますが、わたしもこれまで多くの苦労を重ねてきました。
    
 そんな日々のコミュニケーションに悶絶するとき、わたしは、きまって、ある詩人を思い出します。長田弘さん、そのひとです。
   
  ▼
  
 長田弘さんの詩は、とても平易です。しかし、平易でありながらも、緻密に緻密に言葉が選ばれており、これ以上、引き算をすることもできなければ、足し算を行うこともできない詩です。優しさと人間愛に満ちた詩です。長田さんの詩は、そういう詩なのです。
     
 そんな彼の詩に「言葉のダシの取り方」という詩があります。
 おそらくは、僕のブログには、言葉を扱う方が多いと思いますので、今朝は、これを紹介しましょう。
  
 言葉と論理が軽視され、フェイクニュースすら氾濫する社会に、今朝は「一粒の清涼さ」を味わいませんか?

 ▼ 
  
言葉のダシのとりかた
長田弘
                    
かつおぶしじゃない。
まず言葉をえらぶ。
太くてよく乾いた言葉をえらぶ。
はじめに言葉の表面の
カビをたわしでさっぱりと落とす。
血合いの黒い部分から、
言葉を正しく削ってゆく。
言葉が透きとおってくるまで削る。
  
つぎに意味をえらぶ。
厚みのある意味をえらぶ。
鍋に水を入れて強火にかけて、
意味をゆっくりと沈める。
意味を浮きあがらせないようにして
沸騰寸前サッと掬いとる。
  
それから削った言葉を入れる。
言葉が鍋のなかで踊りだし、
言葉のアクがぶくぶく浮いてきたら
掬ってすくって捨てる。
  
鍋が言葉もろともワッと沸きあがってきたら
火を止めて、あとは
黙って言葉を漉しとるのだ。
言葉の澄んだ奥行きだけがのこるだろう。
それが言葉の一番ダシだ。
言葉の本当の味だ。
  
だが、まちがえてはいけない。
他人の言葉はダシにはつかえない。
いつでも自分の言葉をつかわねばならない。 
  
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 いかがでしたでしょうか。
  
 言葉を選び、意味を選び、言葉をこしとる。
 そうすれば、澄んだ言葉だけが残り、一番出汁がとれるのです。
  
 同時に、長田さんは警鐘も鳴らします
  
 「他人の言葉」はダシにはつかえない。
 いつでも「自分の言葉」をつかわねばならない
    
 とね。
  
 ひとに届く言葉とは、自分の言葉で語らなくてはならないのです。
    
 プレゼンひとつ、スピーチひとつ、文章ひとつ紡ぐときに、言葉を選び、意味を選び、言葉をこしとらなくてはならない。たかが言葉、たかが言葉なのです。
  
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 あなたが語っているのは「一番ダシのように澄みきった言葉」ですか? それとも「血合いとアクのまじったドロドロワード」ですか?
  
 そして人生はつづく
  
(清水の舞台から飛び降りる覚悟で、長田さんの詩集を先日買いました。長田さんの詩が全部はいったものです。これまでバラバラと持っておりましたが、これで、夜な夜な、長田ワールドを楽しめます!)
  

  
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