NAKAHARA-LAB.net

2020.8.21 08:47/ Jun

われわれの「未来」を動かすのは「テレワーク制度」ではなく「働き方見直しの総合パッケージ」ではないか?

「テレワーク」のあり方を「単体」で議論するのではなく「働き方見直しの総合パッケージ」を議論するべきなのではないだろうか?
    
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 新型コロナウィルスの感染拡大によって、テレワークが、にわかに進んでいます。感染拡大の規模、また、職種・業種によっては、テレワークができない(する必要もない)仕事もございますので一概には言えませんが、より多くの企業で、その是非が議論されたりしているようです。
  
 とりわけ昨今、ハダカンで感じるのは、オフィスに感染者が出てしまった企業が、日に日に増えていることです。
 そうした場合、コロナ対策の判断・その問題の深刻さが、かなり厳しく、被害にあった企業では、感染者の増加とともに、テレワークのあり方を模索するケースが増えているように思えます。
  
 たとえば、万が一感染者が複数出てしまった場合、どの規模、どの人員までを隔離・ロックダウンすればいいのか。それらのひとびとに自宅待機を命ずるのかどうか。出張先・赴任先であれば、どうするのか。最悪の場合、ひとを退却させて、事業を止めるのか。
   
 感染拡大の規模が大きくなるにつれて、僕の周囲でも、実際に、こうした問題と格闘している方も少なくなくなってきました。「事業をとめる」というのは「キャッシュがとまります」。そしていったんとめた事業は、すぐには復活できないものです。これはまことに、おおごとなのです。
   
 僕の感覚でいいますと、あくまで個人的感覚ですが、
   
 ウィルスは、僕らの知り合いの「一歩先」くらいまでは迫ってきている実感
   
 があります。
 だからこそ、みな、テレワークのあり方を模索しているのかな、と思います。
  
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 しかし、このテレワークの模索の様子を拝見していて、いつも思うことに、
  
 これからは「テレワーク単体の施策」だけを考えるよりも「働き方見直しの総合パッケージ」をつくるべきなのではないだろうか
    
 ということがあります。
    
 テレワークの程度にもよりますが、もしそれを実現するならば、テレワーク以外の人事制度もふくめ、現在の「働き方」をすべて見直すことができるはずです
    
 例えば
    
・オフィスを縮約し、フリーアドレス化を進めることができるかもしれない
・電子契約を行い、ペーパーレスを進められるかもしれない
・転勤を少なくすることができるかもしれない
・単身赴任を少なくすることができるかもしれない
・育児しながら家庭で仕事も行ってもらえるかもしれない
・定年退職後のセカンドキャリアにテレワークを選んでもらえるかもしれない
・採用を全国から行い、介護しながら働いてもらえるかもしれない
・インターンシップもオンラインで全国から行えるかもしれない
・地方の優秀な若手人材を採用できるかもしれない
・通勤手当を見直し、在宅手当を定額で支給できるかもしれない
・評価制度を見直して、よりパフォーマンス重視のものに変えられるかもしれない
      
 などなど・・・思いついただけでも、いくつもでてきます。これらの施策を「束ねて」、内的な整合性を高めて、「働き方見直しの総合パッケージ」として提供した方が、企業経営へのインパクトは強いのではないでしょうか?
    
 要するに、
    
1.テレワーク導入の単体での議論をやめる
    
2.既存の働き方を聖域なく、経営の観点から見直す
    
3.経営にとってインパクトを及ぼしそうな人材施策はテレワークと組み合わせる
    
4.テレワークの単体導入よりは、テレワークも含みこんだ「働き方見直しの総合パッケージ」を実行にうつす
   
 ことが重要なのではないかと思います。
 実際、わたしの知っている、勘のいい企業では、もうすでにこのような方向性が、模索されています。
  
 もちろん、やるべきことは満載で、これらの施策の実現は、ただちに難しいことは百も承知です。
      
 しかし、コロナ禍は、人事施策の改革にとって「ピンチ」でもありますが、「チャンス」でもあります。コロナ禍ということもあり、改革が進みやすいところもある。
     
 この機会をうまく用いて、経営にインパクトを与えるような「自社の働き方の未来像」を見いだせた会社が、結局は「優秀な人材が集まる」のだろうな、と思いますし、将来の競争優位が生まれうるのでしょう。
     
 一方、いまだに
    
 テレワークは「緊急事態」の一時的対応
    
 であるとして、ピクリとも、1ミリも動かない人事部もあります。
  
 しかし、それも「選択」です。
 コロナ禍における各社の対応は「よーいドン」でみな、均一にスタートしました。
 動くところは動くし、動かないところは動かない。
    
 そして、動く人事と、動かぬ人事のあいだで、おそらく、この間「Kの字」のように格差が広がるものと思われます。最近、そんなことをヒシヒシと感じています。
  
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 テレワークに関する数字や、その対策なども、出尽くした感があります。
  
 ここから先は(もうすでに取り組んでいる企業も多々ありますが・・・)、テレワーク単体の議論を行うのではなく、それに加えて「働き方見直しの総合パッケージ」をつくっていく段階なのかなと思います。人事施策同士の「内的整合性」を高めて、経営にインパクトを与えていく企業が、おそらく生き残るのだろうな、と思います。
  
 未来を模索する議論の本丸は、
  
 テレワークをいかに実現するか
  
 ではなく
  
 私たちの「働き方」を、未来にあわせてどのように再設計するか
  
 であると僕は思います。
    
 そして人生はつづく
    
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