2020.8.20 08:39/ Jun
コロナ禍によって、今年から、猛烈な勢いで進行したのが「研修のオンライン化」の流れです。人材開発・組織開発の領域は、いわゆる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が比較的遅れていた分野だったのですが、この半年間で、すべての「地勢」が変わりました。
これは感染拡大の状況にもよるので、全国一律には言えないのですが、いま、多くの企業研修は
1.対面研修は、中止ないしは延期
2.対面研修の実施ならば、3密を避け、少人数、消毒、マスク、シールドで実施
3.オンライン研修として実施
という方向で動いているように思います。7月までは多くが1の判断。
8月あたりになって、ちらほら、2と3を模索している印象で、ここ数週間は、ようやく再開の動きがでてきている印象です。しばらく様子見をしていたのだけれども、このままいくと、何もできない、という諦観が生まれたのかもしれません。ここ数週間は、秋冬以降の動きが見られます。
再開の場合、まず2もありえます。ただ、多くの感染拡大防止マニュアルを拝見させていただくと、参加者同士が長いあいだ話をしたり、関わったりする場をつくるのは、リスクもあります。コンテンツが一方向の講演・講義ならば対面研修も不可能ではないです。が、それなら
「わざわざ感染拡大のリスクを冒して対面にしても、一方向の情報伝達ですか。だったら、Youtubeに映像をあげておけばいいじゃん」
という話になります。
よって、結局、落ちつくるところは3の「オンライン研修として実施」
かくして研修のオンライン化が進むことになるのです。
ここでいうオンライン化とは、
1.Zoomなどを用いた双方向リアルタイムセッション
2.オンデマンドビデオ+双方向リアルタイムセッション
などを組み合わせた学習機会とします。
(他にもいろいろありますが、ここでは、こう考えます)
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ここで問題は「オンライン研修を実施する講師のスキル」です。研修がオンライン化されるにつれ、研修講師も、それにあわせてスキルを高めていかなければならないということになっているのです。
ただ「市場の環境変化のスピード」に比べて、人間の「学び直しのスピード」は早くはありません。
よって多くの関係者の皆様には、ご苦労がかかってしまいます。
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せんだって、ある研修提供会社の研修部門の責任者の方とお話していたのですが、現在、現場では、こんな状況が生まれている、とのことでした。
曰く、
「オンラインで、よい研修ができるひとは、オンライン以前にも、受講生のことをよく見て、やりとりをしていた講師ですよ。
一方向で自分の話をしすぎてしまう講師は、対面でも厳しいのですが、オンラインでは、さらに厳しいですね」
これをグラフに書くと、こういうことですね。
今、●と▲とふたつの実線がひかれています。横軸の時間は、コロナ前とコロナ後をあらわしていますが、時間がたつにつれ、ふたつの実線は、一方の●が単調増加しているのに対して、▲は単調減少しています。こうした状況が現場で起こっているのかな、と思います。
別の組織の責任者の方は、こんなことも言っておられました。
「でもね、先生、問題は、オンラインかどうかではないのです。コロナになる前から、常に、自分のスキルを高めることをしていたひとが、オンラインにも対応できています。
コロナになる前に、何もしていなかったひとは、いきなりオンラインと言われても、対応できません。なぜなら、学び直せといわれても、学び直しの習慣がないので、何をやっていいかわからないのです」
大変興味深いことです。
ここまでをまとめて言い得ることは、
1.オンラインをきっかけに、優秀なひとはそのまま優秀になる
2.オンラインをきっかけに、成果がでないひとは、さらに成果が出なくなる
3.この格差は、そもそもコロナ禍以前から存在していた
4.問題はオンラインか、オフラインかではなく、コロナ禍前からも学び直していたかどうかである
5.コロナ禍後は、優秀なひとと、成果がでないひとの差がくっきり明瞭になる
ということだと思います。
これが、この世の中のまことにスパイシーで香ばしい現実です。
そして、このことは、研修講師のみならず、あらゆるところで表面化しているように思います。
以前僕は、コロナ禍における管理職のスキル拡大のことを下記のように書きました。研修講師と管理職という、まったく異なる職種、専門性をもった人々のことですが、「起きている現象」は極めて似ているような気もします。
「リモートマネジメント格差拡大理論」で「刻みネギ」が「長ネギ」になっちゃった件!? : 「できるマネジャー」と「できないマネジャー」に広がる「格差」
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11787
グラフにするとこうですね。
ほら、さっきのグラフにめちゃ似ているでしょう。
要するに
1.コロナ禍以前から「格差」は存在していた
2.しかしコロナ禍は、さらに「優秀なひとと、そうでないひととの格差」を広げてしまう
3.コロナになる前から、いかに「学び直し」を意識していたかで、コロナ後が決まる
ということなのかな、と思いました。
皆さんの周囲はいかがでしょうか?
▼
コロナ禍は、まだまだ収まるところをしりません。環境変化はまだまだ起こります。
こうしたとき、敢えてチャールズ・ダーウィンを持ち出すまでもないことですが、
環境変化において、いかに生き残るかについては、
「強い種が生き残るわけ」でも「身体の大きな種が生き残る」わけでもありません。
環境変化に「適応」できたものだけが生き残る
ということなのだと思います。
そして人生はつづく
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