2020.6.3 08:48/ Jun
不肖・中原が、大学院生の研究指導を行うようになって、今年で14年目です。これまで20名くらいの修士・博士の皆さんと伴走しながら、研究指導を行わせていただきました。
今年もあらたに新メンバーとして3名の博士学生の研究指導を行うことになり、研究室にお迎えすることができました。
堀尾志保さん、筒井健太郎さん、新村和大さんのお三方です(パチパチパチ、おめでとうございます&よろしくお願いします)。
ぜひ、素敵な研究を生み出し、なるべくはやく博士号を受理いただけることを願っております。
大学院・中原研究室について
http://www.nakahara-lab.net/about
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ところで、わたしが研究室を運営していくうえで、常に気にかけていることのひとつに「研究室としてのアイデンティティをもつこと」と「研究室を閉じぬこと」の「2つのバランス」をいかにとるか、という問題がございます。
前者「研究室としてのアイデンティティをもつこと」というのは、中原研究室を「組織」としてまとめあげ、その文化のようなもの、価値観のようなものをしっかりと保つということです。
たとえば「デリバラブルな研究を為すこと」「実践的であり、理論的でもあること」「自らも登壇・実践する勇気をもつこと」などは、中原研究室がおそらく大切にしている価値観であるような気がします。
こうした価値観を中核にしつつ、研究室としての「求心力」を保つことを、僕は気にかけています。
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しかし、一方で「求心力」ばかり高めていくと、研究室というものは、だんだんと「気枯れて」いくような気がします(少なくとも、わたしの研究室の場合は・・・)。
たとえて申し上げれば「内部の血が濃くなり過ぎて、外部環境の変化についていけない、時代錯誤のような文化」が脈々と継承されたりもします。「一門」のようなものが生まれ、門閥意識がつよくなります。
これはわたしの持論ですが、
研究室には「門(門閥)」はなくていいと思います
研究室には「問(問い)」があればいい
ですので、そうしたものが生まれかねないなと思ったときには、逆に、研究室に「揺さぶり」をかけなくてはなりません。
外部の方々に来ていただいたり、研究会をやったりするなどして、外部環境の新たな考え、新鮮な情報を、研究室内部に取り込まなくてはなりません。
そのためには、
「研究室を閉じぬこと」
が重要になります。
先ほどのメタファで申し上げるのであれば、今度は、敢えて研究室に「遠心力」をきかせて、「濃くなり過ぎた内部の血を薄める努力」をしなくてはならないような気がします。
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「最近、研究室がうまくいっているな」と思うときには、冒頭申し上げた「求心力」と「遠心力」の調節が、うまいこといっている時のように思います。研究室の内部と外部がうまくやりとりが自然と行われていて、ダイナミックな動きがそこにある。
一方、最近、業績成果がでていないな・・・なんかみんなダレてるな、というときには、組織のアイデンティティが薄まっていたり、研究室が内向きになったりしているときのように思います。
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専門用語で申しますと、今日申し上げた話は、
組織の境界(バウンダリー)をいかにマネジメントするか?
ということです。
バウンダリー(境界)をクリアにして、組織間の透過性を低くすれば、内部の密度は高くなります。一方、バウンダリー(境界)をゆるめて、組織間の透過性を高めれば、内部と外部の交通がよくなります。
これらの操作を行い、研究室を、つねに「ヘルシーな環境」に保つことができれば、おのずと研究成果が高まるような気がします。
大学院生を育てるのは、指導教員だけではない
大学院生を育てるのは、研究室である
これが、わたしの持論です。
(この持論は、研究室版の「職場学習論」ですよね・・・ちなみに、指導教員として責任を放棄しているわけではありませんよ・・・どちらかというと厳しい方だと思います。昔の大学院生に言わせれば、最近、先生は「甘くなった」と評されているようですが・・・)
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2020年度も大学院のゼミがはじまり、各人の研究が本格化しています。
研究室に「求心力」と「遠心力」をうまくきかせ、さらにたくさんの研究業績を、社会にお届けする人材を養成したいと願っております。
そして人生はつづく
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