2020.3.11 07:29/ Jun
リーダーシップの基本は「見ること」です。
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このワンセンテンスは、リーダーシップの本のなかには、必ず、出てくるワンセンテンスかと思います。本によっては「見る」ではなく、「観察する」という言葉を用いることもありますね。
たとえば、
リーダーの仕事は、とにもかくにも「観察すること」からはじまる
のように。
その含意になっているのは、「見る」や「観察する」が、リーダーの行うすべての働きかけの「基層」を為すからです。
たとえば、よくリーダー・管理職層は、リーダーや管理職になりたての頃、コーチング研修などで、部下を鼓舞するような言葉かけや問いかけを学びます。
しかし、せっかく手にした「武器」であっても、「部下を見ること」「部下を観察すること」ができていない場合には、適切に、それを用いることができません。どんなによい武器をもっていても、相手のことを見ずに、やたらめったら、切り込んでいっても、相手にはヒットしないでしょう。
たとえば、はじめての仕事のとき、手順がしっかり教えられておらず、わけがわからなすぎて、パニックになっている新人君に対して
「君はどう思う?」
と聴いたりしてしまうような状況がそれに近いです。「どう思う?」も何も、何も、何にも知識がないんじゃい!
部下の状態を「見ること」ができなければ、適切な働きかけを、適切なタイミングで行うことができなくなるのです。
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しかし、言うのは簡単なのですが、この「見る」とか「観察する」の重要性を、研修などで教えること、獲得してもらうことは、容易なことではありません。
部下のマインドを鼓舞したり、考えさせたりするような問いかけであれば、スキットを提示して、ロールプレイングを行ってもらったりすることができます。これらは、研修的には、非常に教えやすいことです。
しかし、「見ること」や「観察すること」は、これに対して猛烈に教えにくい内容です。
その最大の原因は、
部下のことを「見ていないひと」や「観察していないひと」であったとしても、「おれは、部下を見ている」「わたしは部下を観察してます」
と言ってしまうことが多いからです。
つまり「視界・視野に、部下の姿が入っていること」をもって「見ること」や「観察すること」ができている、と考えてしまいがちなのです。
極端な話でいえば、
「目が、2つ、ついてんだから、部下の姿くらい、ちゃんと見えてるよ」
と言ってしまう、ということです。
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しかし、おそらく、ここで「見ること」や「観察すること」とは、そういう「受動的な行動」ではありません。
むしろ「見ること」や「観察すること」とは、「部下が視界に入る」といった受動的な行動ではなく、部下に積極的に関わり、彼らの内面を推測する、非常に能動的な行動だということになります。
つまり
見るためには、関わらなくてはなりません
観察するためには、能動的にならなくてはならない
のです。そのかかわりを通して、部下の行動を見る。部下の内面を推測する。こうしたものが「見る」であり、「観察する」なのかな、と僕は思います。
このあたりをお伝えするのが、とても難しい、と思いますが、いかがでしょうか。「能動的に見る」「積極的に観察する」・・・このあたりの機微をうまく伝えられたら、僕はすごいことのように思いますが、いかがでしょうか。
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今日は、リーダーにとって「見ること」「観察すること」が重要だ、というお話をしたうえで、これらの行為を学んでもらうことは難しい、というお話をさせていただきました。
あなたは、部下を「見ていますか?」
あなたの上司は、部下を「観察」できていますか?
自戒を込めて
そして人生はつづく
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追伸.
これに関しては、8年くらい前、超実験的なワークショップを、牧村真帆さんと実践したことがございます。当時、成城ナーサリィスクールの先生方、特に牧村さん、滝澤さん、さらには当日の記録をご担当いただいた、井上さん、池田さんには大変お世話になりました。早いものですね、もう8年です・・・
かかわりの中から、個を見て、表現する : 「プロセスの知を磨くワークショップ」第一回目が終わった!
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/2414
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