2020.1.22 06:49/ Jun
「主体性」という言葉ほど、曖昧で、多義的で、みなが、自分の都合のよいように使っている言葉はありません
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せんだっての大学院の議論では、こんな議論が交わされました。
たとえば、会社のなかの行動をひとつとってもそうです。
今、仮に、ある新人が、ある組織のなかに新規参入していく過程のことを「事例」にしながら、主体性について考えてみましょう。
組織社会化研究では、新人がある組織に参入したあとで、とる行動としてプロアクティブ行動(proactive)という概念が注目されています。
プロアクティブ行動というのは、新人が、「組織内の役割を自ら引き受けようとして、自分に足りていない知識や技術を、自らゴリゴリと獲得しようとする主体的な行動」のことをさします。
プロアクティブ行動とは「新人の主体的な行動」です。
「新人が、他人や組織から社会化されるのを、指をくわえて待っていないで、自分から動く」のがプロアクティブ行動であり、新人のとるべき「主体性」です。
ところで、問題は、この行動の中身です。
ゼミに参加していたある方がおっしゃっていたのですが(素晴らしい指摘です!)、海外の社会化研究の文脈では、プロアクティブ行動の中身のなかに、
「新人君が、自分から、職務変更を願い出る」
といった行動も含まれることもあります。
そうです。海外でいうところの主体性は、単に「自分から動くこと」だけではなくて、
「自分にあわないと思ったら、自分から環境・仕事を変えるよう、上司に願い出ること」
すらも、その範疇に入ってしまうのです。
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しかし、ところ変われば、品変わる。
これが、万が一「日本」だったら、どうでしょうか?
新人君が、
「あのー、つーか、この仕事、僕にあわないと思うんですよね。だから、仕事、替えてもらっても、いーすか?」
と上司に言ってきたとしたら、上司は、その行動を「新人の主体性」と考えるでしょうか。
もちろん、状況にもよりますし、「つーか」とか「いーすか」と言ってくる新人は希でしょう(笑・・・ここではわかりやすくしています)。
でも、おそらく、日本の上司たちは、こういう新人を、
「主体的な新人」というよりも「トンガリ勘違いボーイ」
とラヴェリングするのに決まっているのではないかと思うのです。
つまり、
1.主体性の中身は、それぞれひとによって、思い描いているものが違う
2.文化・文脈・社会的状況によって、主体性として期待される行動は、実は、中身は異なる
ということが言えるのだと思います。
結果、
1.他人から「主体的になれ」と言われたら、それが「何を期待されているのか」を確認しなければならない
2.「他人の考える主体性」と「自分の考える主体性」は、おそらく違っているだろうな、ということを前提にして話をすすめなければ食い違う
ということが言えるのかな、と思います。
もっとも「フィードバック入門」の著者としては、
「主体的になれ!」
という他者へのフィードバック(指摘?)は、あまりおすすめしません。
なぜなら、「主体的になれ」と言われても、いったい、自分のどんな行動を変えてよいのやら、わからないからです。
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今日は主体性についてお話をしました。
さらにいうと、複雑怪奇・魑魅魍魎のシャバワールドでは、
「主体的になれ!」
という上司からの指摘は、たいていの場合、
「空気を読んで、おれの思うように動け!」
と同義だったりするから、ややこしいものです。
要するに
主体性とは「中身」がない言葉なのではないか
ということです。
だから、僕は「主体性」という言葉を使いません。
(中身がないというよりも、どうとでも使えて、どうとでも解釈できる言葉ですね・・・)
そして人生はつづく
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