2019.11.25 07:44/ Jun
組織を「変える」のは、それなりの「時間」と「労力」がかかります。
まずすぐに、想定できるのは「組織メンバーからの抵抗」
組織のメンバーは、たいていの場合、できることならば「現状を維持」したいと思っている。どんなに頭や理屈で、変わらなくてはいけないことはわかっていても、こうした「現状維持バイアス」が頭をもたげ、ついつい、及び腰になります。
組織変革とは、端的に申し上げれば「心理戦」です。
こうしたひとびとの現状維持バイアスを乗り越える方法(この方法には、痛みを強いるネガティブアプローチも、ポジティブアプローチもあるでしょう・・・しかし、これらは手段・手法の話です)を考えなくてはなりません。それには時間も労力もかかる。
次に・・・そもそも「組織」というものは「簡単に変わっちゃダメなもの」なのです。
環境変化がそれなりにきても、少しくらい人の出入りが激しくなっても、「変わらず」に、事業・サービスを維持していかなければならないものが「組織」です。
ですので、「組織変革」とは、「簡単には変わっちゃいけないものを、変えること」であり、そこには「形容矛盾」が含まれます。やはり、それを成し遂げるには、それなりの「時間」と「労力」がかかります。
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最近、気になっているのは、この「組織変革」と「組織を変えるリーダー・トップの任期」の関係です。
世の中には、「変わらなくてはならない組織」は36万くらいございますが(?)、しかしながら、「変革に耐え得るだけの任期」をリーダーやトップに与えている組織は、それほど多くないな、という実感を個人的にもってしまうのです。
組織変革にとって時間は「資源」
なのにもかかわらず、その「資源」がそもそも枯渇している。
なかには、就任して2年でリーダーやトップが、ジョブ・ローテーションのように変わる組織もございます。
こうした人事プロセスを、はたから見ておりますと、いくら、口では
「あなたは、リーダーやトップに就任したんだから、組織を変えてくださいね」
と言っていても、それが「お題目」に過ぎないことを、実感します。
就任して2年で組織を大きく変えるのは、たいがいの場合「至難の業」でしょう。
よく言うように、組織変革にあたるリーダーが就任後、まず為すべき事は、1年目はビジョンを示しつつも、メンバーの声を聞いたり、現場の様子をみたり、周囲の信頼を蓄積する。2年目で仕掛けていき、3年ー5年で定着をはかる。これが巷の「フォークセオリー」です。
組織変革にも様々なものがございますが、組織のマインドやそこに働く慣性を変えるためには、それなりの時間がかかります。時間をかけずに発揮される「早すぎるリーダーシップ」は、たいていの場合、「返り血」を浴びるだけです。リーダー自身にビジョンは必要ですが、多くの声を聞き、それに応え、時にはビジョンを改善し、組織の未来を構想するには、それなりの段取りが必要です
それなのに、今、就任後2年で退任が決まっているリーダーやトップがいたとします。
この2年では、かなりやれることに限定がかかるので、たいがいは、「何も変えないこと」を「合理的に選択」するでしょう(あるいは合理的に選択したという言い訳をするでしょう)。
たとえ、変えることを選択したひとでも、相当、困ったなと思っているはずです。なぜなら、何かを変えた後、自分が退任した後の組織に、自分はいない。よって、責任が持てない、とおっしゃるのではないかと思います。
また組織のメンバーも、2年で代わるリーダーやトップのもとでは「何も変わらないこと」を「合理的に選択」するでしょう。シンドイ思いをして、変わったとしても、またすぐに次のリーダーが来てしまうのです。
すなわち、
「就任2年でリーダーやトップをジョブローテーションさせていく人事というのは、意識的であれ、無意識的であれ、リーダーやトップに「何もしなくていいこと」を伝えている
ようにも思うのです。
そして、この構図のもとでは、
人事側・リーダー・メンバーが、いずれも「変わらないこと」を選択し、運用しつづけている
ということになります。
もちろん、2年で組織を変える「剛の者」も中にはいらっしゃると思います。実際、短期決戦で組織を変えなくてはならない局面も多く存在します。しかし、それは多くの場合は、あてはまりません。通常のリーダーに「剛の者の働き」を期待しても、それは難しいでしょう。
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今日は、「組織変革」と「組織を変えるリーダー・トップの任期」の関係について論じてみました。
今日の話は「任期の短さは、何もしなくていいというメッセージを暗に伝えていないか」というお話でしたが、反面、就任後10年も20年も、業績を出せていないのにトップに君臨し、会長として50年全うするようなひともいます。
嗚呼、ひとと組織は、つくづく、難しいものですね。
そして人生はつづく
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