2019.11.14 06:52/ Jun
せんだって、研究者たちが集まった、ある会合での出来事です。
「自分たちが学生時代を過ごした25年以上前の大学」と「今の大学」を比較して、いったい「何」が違うのか?
という話題で盛り上がりました。
大学といっても、文系・理系、国立・私立、総合大学・単科大学など、さまざまにございますので、今日の話題は「僕の経験に限定」されてのお話になります。一般化はできませんので、あしからず。
▼
「25年以上前の大学」と「今の大学の違い」
表面的にすぐに思ってしまうのは、今の大学には
・15コマの授業時間が厳密に確保されていること
・シラバスなどの体裁などが確保され、書かれていること
・空調やICT的な環境も以前よりも整備されていること
などの特徴があることが思いつきます。
どこの大学からはさておき・・・一般論として?、昔は・・・「授業時間に15分遅れてきて、15分早く帰る先生」というのはおりました。
また、シラバスを見ると、たとえば「実験心理学基礎」という科目で、「実験心理学の基礎を学ぶ。以上」という・・・意味があるんだか、ないんだか、わかんないシラバスもありました。
また、少なくとも、僕が大学に入った頃は、教室にエアコンがない部屋もあったりしましたし、ICT的な環境も、今のようではありませんでした。
文系の研究室などは、30人ちかくで1台のマッキントッシュを共有していました。今のように、一人一台のコンピュータをもち、オールキャンパスでWifiが使える環境はありませんでした。
▼
このように、大学は、この25年で「よくなった」と思うところもあります。
しかし、一方で、思うのは、この25年で、大学は「残念な方向に大きく変わってしまったな」と思うところもゼロではありません。
細かいことを言い出せば、いろいろあります。
しかし、個人的には、もっとも気になるのは「時間」です。
この25年で「大学の時計が回るスピード」は、感覚的には、ものすごく早くなったような気がします。
むかしの大学は、ルーズだったし、整備もされていなかったけど、比喩的にいえば「時間」がありましたし「精神的な余裕」がありました。
比喩的ですが「大学の時計が回るスピード」は、今よりも、ずっとゆっくりしていたように思います。
たとえば、ゼミでは、重要文献の「1ページ」を一文一文精読して読み解いていく時間がありました。90分の授業時間をかけて、進んだページ数といえば、たった「1ページ」。でも、その「1ページ」に含まれる1行1行の意味をみなで考え、議論する時間があったように思います。
大学の時間は、どちらかというと「円環的時間」が流れていました。今日も、明日も、じっくりゆったりと何かに取り組むような時間が、何度も何度も繰り返されていたような気がします。それは「無限」につづくのかもしれない、と思えるほど、あまり変化はなく・・・。
(今でも学部によっては、やられていると思いますが・・・)
ジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーの「正統的周辺参加」、ルーシー・サッチマンの「プランと状況的行為」、ピエール・ブルデューの「再生産」などなど・・・難しい本を、1ページ、1ページ、謎を解き明かしていくように学んだ経験を思い出します。
こんな授業?寄り合い?的ゼミなので、プロダクトは予想ができません。
だから、シラバスは書けなかったはずなのです。
何をどのようなスケジュールで学び、どんな力がつくか、など。
残念ながら、今の大学には、そのような時間が限られています。
教えなければならないことは膨大ですし、そもそも学生たちも忙しそうです。重要文献と向き合い、読み込む時間があったら、他にやるべきことがある、と思うひとも出てくるかもしれません。今は、大学の時間は、非常に直線的に、寄り道せずに動いているともいえそうです。
大学の「時計の針の進む速度が変わった」のではないか?
これが個人的にはもっとも印象深いことです。
▼
今日は「25年以上前の大学」と「今の大学」の「違い」を書きました。
もちろん、だからといって、「25年以上前の大学」のことをノスタルジックに感じているわけでも、美化しているわけでもありません。
昔の大学は、ある意味で、いい加減。制度は未整備。昔の大学は、プロフェッサーに任せすぎ、「優秀な学生」に甘え、教育改善をする努力を惜しんでいた、ともいえると思います。
「昔にかえれ!」と言いたいわけではありません。
しかし、キャンパスのなかを忙しく走り回るとき・・・
ついつい、そんな過去のことを思い出してしまうのです。
この25年で、大学は大きく変わりました。
そして、残りの20年・・・大学はどうなっていくのかな、と。
あなたは、大学で「どんな時間」を過ごしていましたか?
そして人生はつづく
ーーー
新刊「未来を語る高校が生き残る」・・・2020年の大学入試改革、2022年の新学習指導要領改訂。社会をきりひらく人材を育成するために、高校・大学・企業に何ができるか? アクティブラーニング、カリキュラムマネジメント、そして「未来を語ること」。「未来を語ること」を通した学校づくりを提唱する中原研究室×河合塾×JCERIの研究の最新知見です。どうぞご笑覧ください。村松灯、渡邊優子編著、中原淳監修、学事出版さんからの出版です。
ーーー
新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・ラーニングエージェンシー著)が重版出来!1万部突破です!AMAZONカテゴリー1位「企業革新」「女性と仕事」を記録しました!。女性のキャリアや働くことを主題にしつつ、究極的には「誰もが働きやすい職場をつくること」を論じている書籍です。7000名を超える大規模調査からわかった、長くいきいきと働きやすい職場とは何でしょうか? 平易な表現をめざした一般書で、どなたでもお読みいただけます。どうぞご笑覧くださいませ!
ーーー
「育児は仕事の役に立つーワンオペ育児からチーム育児へ」(浜屋祐子、中原淳著 光文社新書)、AMAZONカテゴリー1位(光文社新書)、経営学カテゴリー2位を記録しました。育児と仕事の良好な関係、ワンオペ育児を乗り越え、チーム育児に転換していくヒントがあふれる書籍です。浜屋祐子さんの修士論文の知見をモティーフにした、育児の科学。どうぞご笑覧くださいませ。
ーーー
新刊「データから考える教師の働き方入門」(辻和洋・町支大介編著、中原淳監修)好評発売中です。1日の労働時間が約12時間におよぶ、先生方。その働き方を見直し、いかに持続可能な職場をつくりだすのか、を考えます。「サーベイフィードバック方の組織開発を応用した働き方改革」の事例として、教育機関以外の組織でも応用可能です。どうぞご笑覧くださいませ
ーーー
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
中原研究室のLINEを運用しています。すでに約14000名の方々にご登録いただいております。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
最新の記事
2024.11.22 08:33/ Jun
2024.11.9 09:03/ Jun
なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?
2024.10.31 08:30/ Jun
2024.10.23 18:07/ Jun
【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)