2019.10.11 06:32/ Jun
組織変革論には2つの流れがあるとよく言われます。
「危機ドリブンの組織変革論」と「希望ドリブンの組織変革論」というダイコトミーです(二分法)。「組織は危機によって変えるのか、はたまた、組織は希望によって変えるのか」という風に問われたりします。ちょっと前のことになりますが、大学院の授業で、これが出たので、今日は、その話をすこししましょう。
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「危機ドリブンの組織変革論」とは、1980年代にハーバード大学のコッターなどが主導した、もっとも伝統的で、もっとも有名な変革論です。
コッターは、組織を変えるためには8段階のステップがあるのだとし、その一番最初に「組織に危機感を醸成すること」を置きました。
組織は、なかなか変わらない。
それは、ひとが現状維持バイアスにとらわれ、そもそも変わろうとしないからだ。
だから、組織変革の際には、とにかく「危機感」をあおり、ひとびとの「生存不安」をあおらなくてはならない」。
端的にいえば
「このままじゃ、生きられないYO=このままじゃ、くたばるYO」
「ヘイYO、だから変わるんだYO」
という風に組織を変えようとします。
経営者、経営コンサルタントが好きなアプローチは、おそらく、これではないかと思います。
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これに対して、「希望ドリブンの組織変革論」というものがございます。
代表的なのは、ディビット・クーパラライダーらが主導するAI(アプリシエイシィブ・インクアイアリー)とか、その手のポジティブ組織開発などでしょうか。
こちらのアプローチでは、組織を変えようとするとき、「組織のありたい姿=組織の希望」を語り、対話することからはじめます。クーパライダーが、コッターをどの程度、意識したかしないかは、わかりませんが、とにかく、真逆です。
クーパライダーの理論のお話をするとき、僕は、よく「北風と太陽の寓話」を思い浮かべます。
北風と太陽の寓話とは、「北風さんと太陽さんが、あるとき、力比べをしようということになって、そこに、旅人があらわれるお話」です。北風さんと太陽さんは「旅人の上着」をどちらが脱がせることができるかを競おうとする。
北風さんはピューピューと厳しい風をおくる。しかし、この場合は、旅人は「上着」をしっかりと抑えて、決して、それを脱ごうとはしない。
一方、太陽さんは、サンサンと日光を照りつける。結果として、旅人は、自分から「上着」を脱ぐことになる
というお話です。
このように、人が変化をするときは、必ずしもハードな環境や境遇に追い込まれたときではない。むしろ、ひとは、ハードな環境に晒されると、「旅人が上着をしっかりと抑えて貝のように縮こまったように」自分を守ろうとする。こういう機制のことを「自己防衛ルーチン(Self defensive routine)」といったりします。
この立場にたつ組織変革論者は、よく
「危機」じゃなくて「希望」だ
とか、よく言ったりします。
わかるけどさ
まぁ、落ち着きなさいな。
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「危機ドリブンの組織変革論」と「希望ドリブンの組織変革論」・・・そのどちらも首肯できるのですが、プラグマティストの僕としては、こういうダイコトミー(二分法)が、あまり好きではありません。
学部時代から常に
ダイコトミー(二分法)を見たら、疑え!
と教わってきたせいもあるかもしれません(笑)
この場合、好きではない理由は2つ。
論理上の理由と実務的理由。
まず、論理上の理由としては、「危機ドリブン」でひとを変えようとしようが、「希望ドリブン」で人を変えようとしようが、結局、「段差(ギャップ)をつくりだして、ひとを変えよう」としていることには変わりがないからです。
危機をあおる
現状の暮らしとの比較をさせる
そこには「現状と未来の危機」との「ギャップ」がある
この「ギャップ」を意識させる
そして
このギャップを埋めるために
ひとに動いてもらう
これが「危機ドリブン」のアプローチです。
対して「希望ドリブン」とは
希望を語り、圧倒的プラスを語る
しかし、プラスを夢見た分だけ、現状も気になる
そこには「現状と未来の希望」との「ギャップ」がある
この「ギャップ」を意識させる
そして
このギャップを埋めるために
ひとに動いてもらう
結局、プラスに着目しようが、マイナスに着目しようが、「ひとをギャップで動かすこと」には変わりはありません。後半部の4行など、まったく同じです。
どっちだって同じだよ、そんなの、と思わず言いたくなる(笑)
一時的に「希望」を見せりゃ、「そうではない今」が「みすぼらしく」みえる。じゃあ、今はなぜ希望と違うんだ?という話になる。そうすれば、ギャップを意識し、その理由を問うようになる。
この2つは違うようでいて、結局は、「ギャップを分析」し、「ギャップを埋める方策」を考える方向にいくのだと思います。以上。
次に実務上の理由。
たいていの場合、実務の現場、シャバでは、この両者は「あれか、それか」ではなく「あれも、それも」で、どちらも、時宜を見計らって、実施されるのではないでしょうか。要するに「希望ドリブンか、危機ドリブンか」ではなく、どっちもやる、以上。
たとえば、
経営者は「危機」を語る
しかし、ひとは「危機」だけでは動かない。なので、職場レベル、部門レベルでは、いったん「希望」を語る。それで仮に動き出したとする。
しかし、どうせ人は忘れる。今度は、部門長が「危機」を語る
・
・
・
という具合に。
要するに、理論的に説明がつくこと、理論的にピュアであることを気にする学者は「希望ドリブンか、危機ドリブンか」が気になるんだろうけれども、実務上は「希望ドリブンも、危機ドリブンも」、どっちもやるんだと思う。なぜなら、人や組織は「そう変わらない」から。
むしろ「危機だけで組織が変わる」「希望だけで組織が変わる」と考えることの方が、非常にナイーブな見方なのではないか。
人や組織は「そうそう変わらない」よ。
あなた自身や、あなたの組織が、そうそう「変わらない」ように。
だから、分けることに、実務上は意味はない
どっちもやる、以上。
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今日は「危機ドリブンの組織変革論」と「希望ドリブンの組織変革論」というお話を書きました。
あなたの組織は「危機」で変わろうとしますか?
それとも「希望」で変わろうとしますか?
それとも・・・危機も希望も用いていますか?
そして人生はつづく
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