2019.7.9 06:35/ Jun
21世紀の人事には「人事の実践」が残るだけ
人材マネジメントも、組織開発も、人材開発も、その境界はとけて「統合」しあう
領域がなくなり、最後には「人事の実践」が残るだけ
(Ruona and Gibson 2004)
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これは、せんだって、神戸大学大学院のMBAコースの授業「経営管理特論」にお招きいただき、5時間(!?)の講義をさせていただいた折、皆さんに冒頭で紹介し、皆さんで考えるテーマの一つに選んだ内容です。
(お招きいただきました服部先生、松嶋先生、またサポートいただいた高田さん、そして授業にぶっ通しで受講生のおひとりとしてご参加いただいた金井先生は、心より感謝いたします。ありがとうございました)
21世紀の組織には、毎日のように「ひとと組織の課題」が生まれてきます。
これらの諸課題に対して、誤解を恐れずにいうならば、
実務家は「人材開発」がしたいわけでも「組織開発」がしたいわけでも「採用」をしたいわけでもありません
それはすべて「打ち手」です。
そうではなくて
実務家は「ひとと組織の課題解決」を行いたい
のです。
(ひとと組織にまつわる課題解決を行っていくなかで、人材マネジメント施策を用いるのか、人材開発を用いるのか、組織開発を用いるのか、それぞれの打ち手が検討されるのでしょう)
しかも、21世紀の組織におしよせる「ひとと組織の課題」は、日をおうごとに難度が高くなっているように見えるのは僕だけでしょうか。
終身雇用をいかに維持するのか、しないのか?
それらを維持するのなら、いかに変化に適応する組織をつくるか?
若年層を採用し、いかに戦力化し、いかに引き留めるか?
短時間勤務やリモートワークなどを実現し、いかに多くの人々の労働参加を得るか?
中高年の安定的雇用のために、いかに育成を行い、いかに人材マネジメントするか?
いずれも、難度は極めて高い。
そして、その課題解決のためには、各領域が、それぞれ「別々」に問題にあたるのではなく、人事諸機能が連携し、いわば「チームとして課題解決に当たること」が求められている。
もちろん各領域が発展するのは、大いに結構です。
が、こうした「人事上の課題解決」がより高度化していく現代にあっては、それらの「統合」ないしは「境界超え」をいかに実現するか、という視点が重要になってくるように思います。
しかし、実務の現場は、なかなかそうはいきませんね。
育成担当者「誰が、こんなアホな奴、採用したんだ。採用担当は何やってんだ?」
採用担当者「いい奴とったのに、ダメにしたのは誰だ、コルァ?」
とののしり合ってみたり・・・
制度担当者「いえね、僕らは人事の本流ですからね。人材開発や組織開発なんて、青臭い人たちとか、採用とかやってるキラキラ人材とは、ちょっと違うんですよ。でも、僕らが保守本流・人事の王道ですからね」
とか、「ちょっと何いってんだかわからない権力意識」(サンドイッチマン風に読んでください:人事の世界の外からみると、ちょっと何いってんだか、よくわからない)を丸出しにしてみたり・・・
人事担当者「こんな制度をつくってみました。現場の皆さん、質問は? ございませんね。以上で説明会をお開きです」
現場管理者「また人事が余計な制度つくりやがって」
とか、巻き込みに失敗していたりとか・・・往々にしてある、ようにも聞いています。
いや、風の噂ですが・・・(笑)
わたしたちは、いかにして下記の「境地」にいたるのでしょうか。
21世紀の人事には「人事の実践」が残るだけ
人材マネジメントも、組織開発も、人材開発も、その境界はとけて「統合」しあう
領域がなくなり、最後には「人事の実践」が残るだけ
皆さんはどう思われますか?
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今日は「人材開発」も「組織開発」も「人材マネジメント」も溶けてなくなる日のお話をしました(笑)。
もちろん「溶けてなくなる」のは「概念」の境界が解けて統合し合うわけで、組織に「ひとと組織にまつわる課題」がなくなるわけではありません。
組織は、どこかに「人材開発機能」や「組織開発機能」や「人材マネジメント機能」を有していなければなりませんし、将来的には、それらが統合して動きだす未来を目指さなくてはならないのかな、と思います。
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これに関する事例として、組織開発の代表的研究者であったコロンビア大学教授・ワーナー・バークは、自身の書籍のなかで、こんな事例を紹介しています。以下、それを引用しつつ、ご紹介いたしましょう。
(Burke, W.(1987) 小林薫(監訳)、吉田哲子(著)組織開発教科書. プレジデント社)
それは、バーク教授が、大手製造企業から相談を受け、同社の「品質管理の問題」に対して組織開発を用いて解決して欲しい、という依頼があったときのお話です。
組織開発の聡明な研究者であるバーク教授は、このメーカーの品質問題の原因が「部門内のコミュニケーション上のコンフリクト」に起因するものだと考え、1)ゼネラルマネジャー+ライン長のミーティング、2)エンジニアグループと製造グループのミーティング、3)製造グループのトップのミーティングといった具合に、組織の多段階に対して組織開発を実施していきました。
バーク教授の懸命な組織開発の努力にもかかわらず、しかしながら、この大手メーカーの品質問題は、まったく解決することができませんでした。
なぜなら・・・品質問題を引き起こしていた原因のひとつに「日雇いの労働者を無給解雇することはできても、彼らが頑張った分のインセンティブを追加であたえる制度が、この会社には存在していなかった」からです。
つまり、
報酬制度の改革は「組織開発の範囲外」でした
ゆえに
ひとと組織にまつわる「課題解決」はできなかったという事例になります。
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21世紀の人事には「人事の実践」が残るだけ
人材マネジメントも、組織開発も、人材開発も、その境界はとけて「統合」しあう
領域がなくなり、最後には「人事の実践」が残るだけ
(Ruona and Gibson 2004)
将来、あなたの会社の「人事部門」はどうなっていますか?
あなたがもし人事部門ならば、あなたはどのように働いていきたいですか?
そして人生はつづく
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「ひとづくり・組織づくりの大学院」新コース「リーダーシップ開発コース」では、21世紀の「人事実践」を牽引する高度プロフェッショナルをはぐくめたとしたら素敵です! 入学説明会が7月27日(土曜日)に開催されます。既存の「入学説明会」では「ない」入学説明会になると思います。どうぞお越し下さいませ!
日本初!立教大学に「人づくり・組織づくり」の大学院新コース「リーダーシップ開発コース」2020年より設置 Webサイト
https://ldc.rikkyo.ac.jp/
2019年度 リーダーシップ開発コース説明会開催
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/2019/0701-02/
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残業学プロジェクトでご一緒させていただいてきた盟友の岩崎真也さんが(議論に議論を重ね、教材をつくりあげていきました!)、「職場に対話を促しながら、職場ぐるみの組織開発で、働き方を改革するやり方」について解説なさっています!
働き方改革から組織開発へ 本当の働き方改革に求められる「次の一手」とは~
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201907020001.html
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
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フィードバック入門等で御一緒させていただいているPHPさんで、登壇の機会をいただきました。「部下育成のスキルを伸ばす」というテーマで、1on1やフィードバックのやり方、効果について講演させていただきます。9月10日・東京開催です。どうぞお越しいただけますと幸いです!
9月10日・東京開催「部下育成のスキルを伸ばすー1on1とフィードバック」
https://pages.php.co.jp/conference20190910.html
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