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2019.6.20 07:00/ Jun

サーベイフィードバック型組織開発における「データ」とはそもそも何か?

「データで変わる職場づくり入門」という、いわゆる「サーベイフィードバック」のやり方を解説する入門書を書いています。PHP研究所の宮脇さん、杉山さん(フィードバック入門の開発陣)とのお仕事で、おそらく年度内には発刊できるものと思います。
  
 「データで変わる職場づくり入門」
  
 1.職場やチームのあり方を改善するために
 2.サーベイなどの「見える化」をいかに行うのか?
 3.その上で「対話」などをいかに行うのか?
 4.どのように未来を構想すればいいのか?
  
 について解説してある本です。
  
 中原研で、ここ数年行ってきた、様々な組織開発の事例をもとに、サーベイフィードバックのやり方を具体的に解説してあります。
  
  ▼
  
 昨今では、従来の組織調査にくわえ、エンゲージメントサーベイ、パルスサーベイなど、様々なサーベイが出てきました。
  
 しかし、その一方で、
  
 現場・職場・チームの改善に1ミリも寄与しない「組織調査」も散見している
  
 という噂を耳にします。
  
 どうやら、日本全国には、組織調査にまつわる下記のような症候群が蔓延しているようですね。
 皆さんの職場ではいかがですか?
  
1.やりっぱなし症候群
 人事・経営企画が組織調査をやったんだけど、結果を現場にかえさない。結果がエグすぎて、かえすのをためらってしまう。
  
2.なかったことにしよう症候群
 現場は現場で、組織調査の結果に向き合うのがいやなので、渡された管理職は、結果を「机の奥底」にしまってしまう
  
3.「1」つけたの誰だ症候群
 悪い評定をつけた部下の悪者探しをしてしまう

 で、誰だ?1をつけた奴は?
  
4.やりすぎマンネリ症候群
 パルス(心拍)のように組織調査を「やる」も、その知見が現場に繰り返し返され、現場では、疲弊感とマンネリ感が漂っている。結果に対して「対話」が行われないことが課題。
  
  ▼
  
 ところで、伝統的には、サーベイフィードバック型の組織開発は、組織の多段に対してデータのフィードバックを、いわば「連動」しておこない、それによって、その階層ごとに「対話」を行い、組織を変えることができる、とされていました。
 
 
   
Burke, W.(1987) 小林薫(監訳)、吉田哲子(著)組織開発教科書. プレジデント社 p26
   Mann. F. C.(1957) Studying and creating changes: A means to understanding social organization. In Research in industrial human relations. Industrial Relations Research Association. Publication No.17
   
 これが古典的なサーベイフィードバックのあり方です。
  
 ところで、最近、この本を書いていて、すこし気になっているのが、この場合の「データの役割」です。
  
 といいますのは、サーベイフィードバックを行って対話を行っている様子を、様々に拝見しておりますと、「組織調査の結果(データ)」というものは、「外在化(組織のメンバーが、組織の抱える問題と自分たちをいったん切り離し、外に置くこと)」の手段として用いられているような気がするのです。
  
 すなわち、「外在化」とは
  
 1.問題を抱えている本人たちが
 2.ともすればお互いに非難の応酬をしてしまい、差し違えてしまうのを防止し、
 3.データがいわば「第三者的に職場を語ること」で
 4.「組織の抱える問題」を「本人たち」といったん切り離し
 5.客観的に対話することができるように用いられている
 
 ということです。
 
 図工2的に絵にしてみましょう。
  
 
 
 いま、左側では「データぬきの職場の対話」が行われています。ここにはデータがなく、本人たちと「組織の抱える問題」が「切り離せない」ため、相互に対話を行おうといっても、「オマエがわるい」「いや、そっちがわるい」の応酬になっています。
  
 対して、右側では、データがございます。この場合は、職場の課題は、いちおう「データ」として外在化されている。すなわち、本人たちと問題がいったん切り離され、すべての人員の目線が、相互ではなく、データに向かいます。そして、この「目線ズラし」によって建設的な対話が生まれやすくなっている、とも考えられないかなと思っています。
  
 いかがでしょうかね?
 この議論・・・まだ・・・それほど自信があるわけではないのですが・・・。
     
 ちなみに、サーベイフィードバックを行って対話を行っている様子を、様々に拝見しておりますと
  
 ひとつのデータを「共同注視」し、
   
「あー、(データによると)こういう状態だって、言っているんだよね」
  
 といったような会話が時折、耳にすることができます。
  
 すなわち、データが擬人化され、自分たちとはいったん切り離され、それに対する「建設的な対話」を行うことができるようになっている。
  
 おそらく、次なる課題は、外在化して語られた問題に対して「自分たちがそれぞれ、何を具体的にやっていくのか」を考え、行動を変えるところなのでしょうけれど、それについての理論的な考察はまだできていません。
  
 またこんどね。
  
  ▼
  
 今日はサーベイフィードバック型組織開発におけるデータの役割といったものを、すこしマニアックに考えてみました。あまり自信があるわけなのですが、
  
 どのようにデータをかえすのか?(HOW)
  
 も大切なのでしょうけれども、
  
 いったいデータとは何なのか?(What)
  
 についても思索を深めていきたいと思っています。
   
 そして人生はつづく
  
  ーーー
 
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