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2019.4.26 06:46/ Jun

あなたの組織では「希望まみれの反逆」が生まれていますか?:組織変革に必要な「抵抗」のマネジメントとは!?

「がっかり」は 期待しているときにだけ出てくる 希望まみれの言葉
 (枡野浩一)
   
 こちらの歌は、歌人の枡野浩一さんの作品です。
    
「がっかりしたな」という感情は「期待の裏返し」にこそ生まれる。そして、その底流には「かすかな、しかし、それでいて実現されていない希望」がある、という意味だと解釈しました。素人の解釈でまことに恐縮です。しかし、なかなか味わい深い作品だと思います。
    
 といいますのも、わたしのような仕事をしておりますと、ある組織の人材開発のあり方を「変える」ような局面に出くわすことが少なくありません。おおげさにいえば「組織変革」ということになるのでしょうが、この「組織変革」というものには、必ず、「セットになってくるもの」がございます。
   
 組織変革に、かならず「つきまとうもの」
 それは、人々の「抵抗」や「葛藤」といった「負の感情」です
  
 なぜ、これまでやってきたことを「変える」のか。
 なぜ、これまでの自分たちでは「ダメ」なのか。
  
 そんなとき、ひとは「がっかり」したり、「怒り」を感じたり、「反発」したり、「抵抗」したりします。
 改革の推進者としては、そうした「負の感情」をケアしたり、マネジメントすることが、非常に手間だったりします。
  
  ▼
  
 しかし「抵抗者」というものを、ひとくくりに「反逆者」と見なすことは「早計」のようにも思います。
  
 なぜなら、
  
 ひとが「抵抗」したり「反逆」したりするのは、その背後に「自分なりの強い思い」がある
  
 こともあるからです。
  
 自分なりの考えや、自分なりの思いや、自分なりの強い感情があるからこそ、それが「抵抗」という現象として立ち現れてくる、ということも、また真実である場合もあるのです。
    
 反対に、変革を志すひとにとって、もっとも手強いのは
    
 何を言っても「無関心」「無感情」といったひと
  
 です。
  
 何を言っても、のれんに腕押し。
 こういうひとが、もっとも厄介であることが、ままあります。 
  
 むしろ、抵抗者や反逆者といったひとびとは、わかりやすいだけに、扱いやすい側面もございます。
  
 そこで思い起こしたいのが、先の歌です。
  
「がっかり」は 期待しているときにだけ出てくる 希望まみれの言葉
 (枡野浩一)
  
 もうおわかりですね・・・すなわち、
  
 「抵抗」は 期待しているときにだけ出てくる 希望まみれの反逆
  
 であることも、少なくないのです。
   
 そういう抵抗者のもつ「希望まみれの反逆」をいかに説得し、「ポジティブなエネルギー」に変えるのか。
  
 組織変革を行ったことのある方なら、きっと一度くらいは、体験したことがあるかと思うのですが、
     
 変革にたいして、最初「最も抵抗していたひと」が「一番の推進者」になる
     
 という不思議な現象が起こることが、組織変革では、ままあるものです。最初は、めちゃくちゃに「抵抗」していた。しかしながら、腹を割って話し合い、相手がこちらの意図や思いを理解した瞬間に、パーンと、相手の立ち位置が変わる。結局、「最も抵抗していたひと」が「一番の推進者」になってしまった。こういうケースが、ままあるものです。
    
 なかなか難しいのでしょうけれど、ひとの「負の感情」を「正の力動」にいかに変えていくかが、組織変革の肝であるような気がします。
   
 もちろん、すべての「抵抗者」が、このような理想的プロセスをとるわけではありません。なかには「保身」「現状維持」「逃げ切り」しか考えていないひともいますので、注意が必要です。
   
  ▼
   
 今日は、ひとつの作品から、組織変革について考えてみました。
   
 端的に言ってしまえば、
   
 抵抗とは希望の裏返し
 抵抗は、うまく御せば、変革のパワーになりうる
   
 ということになります。
   
 あなたの組織では「希望まみれの反逆」が生まれていますか?
  
 そして人生はつづく
  
(4月27日から5月6日まではブログの更新をお休みします。しっかり充電して参ります!皆さん、よい休日を!)
   
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