2019.4.9 07:01/ Jun
仕事柄、多くの管理職の方々、経営層の方々にお会いして、お話をする機会があります。そのとき、いつも行っていることのひとつに、
管理職や経営者の方々が、どのような視座で「社員」を見ているのか?
管理職や経営者の方々が、何を基準にマネジメントを行っているのか?
という「管理職や経営層のもつ人間観、マネジメント観」を推し量るということがございます。
ここで人間観とは「人間をどのような存在と見なすのか」、マネジメント観とは「マネジメントそのものを、どのようなものと考えるのか」という視座(Perspective)の問題です。
相手の言葉の端々からあらわれる言葉の断片を拾い集めて、
きっと、このひとは、こういう社員観をもっているんだろうな?
このひとのマネジメント観は、きっとこういう基準で動いているんだろうな?
と、ひとり妄想するのです。
小生「ど文系のひそかなネクラ研究者」を自認しておりますので、こういう「妄想」に浸るのが、至福のときです。
くどいようですが、私はネクラですので。
写真などで微笑んでいるのは、ゴフマン的にいえば、役割演技であり、印象操作です(笑)。
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こういう妄想をしておりますと、10人に1人くらいの割合で、「すこし偏った人間観」「すこし偏ったマネジメント観」のもとで、社員を見つめ、また、マネジメントを行っている方に出会うことがあります。
その人間観、マネジメント観とは・・・
社員とは「幼い子ども」みたいなものである
マネジメントとは「しつけ」である
甘やかすか、厳しくするという2つしかない
というものです。
この人間観・・・社員から見ると「どん引き」過ぎて、思わずアゴが外れて、コーヒーをダバダーとはき出してしまいそうな人間観、マネジメントですが、これが現実です。ダバダー。
(このイラストの元ネタわかるひといるかなぁ・・・湘南爆走族のマルです。たしか、こんな感じだったような・・・懐かしい!)
こうした管理職、経営層の方々の網膜には、「大の大人であるはずの社員」が「子ども」に見えています。そして、マネジメントは「しつけ」である(しかもトラディショナルな時代のしつけ・・・イマドキのしつけは、こういう物では無いとは思いますが・・・)、と思っています。彼らには、何を言っても、「甘やかすか、厳しくするか」という二軸しかございません。
たとえば、
社員のエンゲージメントを測定して、働きやすい環境をつくりましょう
という話を申し上げても、かえってくるのは、
それって、社員を「甘やかすってこと」ですか?
社員には「厳しくしない」と。
という反応です。
何を申し上げても、「甘やかすか、しばくか」、それしかないのです。彼らが良く用いる言葉が「つけあがる」です。社員は「油断をみせると、つけあがる」のだそうです。
僕としては、なぜ、彼らが、このような人間観、マネジメント観を持つに至ってしまったのかについて、深い研究的興味がございます(笑)ただ・・・こういう人が上司になったら、部下の方は、大変だろうな、と思ってもしまいます。
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今日は管理職や経営層がもつ人間観、マネジメント観の話をいたしました。こうした視座は、注意深く観察したり、傾聴すれば、言葉の端々に、そのひとがもっている「暗黙の前提」は浮かび上がってくるような気がします。そして、こうした深層でもつ視座が、日常のマネジメントに深い影響を与えています。
深層で「視座が腐っている」のに、「表層」では「よきマネジメント行動」がとれている事例を、わたしは寡聞にして知りません。
たまに仕事につかれたら、相手にとっての「暗黙の前提」を注意深く定性的に明らかにしていく知的遊戯も、また、面白いことなのかもしれません(そんな暇人はいないですかね?)
あなたの上司は、どんな人間観、マネジメント観をもっていますか?
あなたは、どんな人間観や、マネジメント観のもとで、日々のマネジメントを行っていますか?
そして人生はつづく
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