2. CSCLComputer Supported Collaborative Learning) - 教育の試み-

2.0. 従来の学校での学び

従来の学校での学びは、どんなものであったか?(Resnick,1989)

  1. 学校外では、協同作業を達成する人の間での共有された認知(shared cognition)が重視されるが、学校では個人の認知(indivisual cognition)が問題となる。
  2. 学校外では、利用可能なリソースの利用が制限されないが、学校では道具を利用しない純粋な精神操作(pure mentation)が求められる。
  3. 学校外では、利用可能なリソースをもちい、状況に応じた文脈的推論(contextualized resoning)がなされるが、学校においてはシンボル操作(symbol manupilation)による論理的推論が価値のあるものとされる。
  4. 学校外では、状況に固有な能力(situation-specific competancies)が重視されているのに対して、学校では一般化された学習(genelized learning)を重視する。

つまり、学生さんが、計算機とかの「道具」を使わないで、「ひとり」でウンウン唸って、ようやくひねりだした「抽象的」な答えが「価値をもつもの」とされていた。

  • 人の助けをかりたり、問題を協力してとくことは、認められない!
  • 計算機やそろばんなんかの道具を使うなんて、もってのほかだ!
  • どんな場面でも使えるような法則や原理や公式を学ぶことが価値あることなんだ!
  • でもさぁ・・・学校の「外」では・・・

  • ほとんどの問題は、協同作業で解決してるじゃん!
  • パソコンだとかの道具をつかってるじゃん!
  • 問題を解決しつつ世の中をわたっていくのに法則や原理や公式があるわけないじゃん!
  • 学校の中の知識が「使える」か?

  • 苦労して獲得した知識も、結局、世の中でどんな役にたっているのかわかんない。
  • 知識を蓄積することを「勉強」だと思いこんでるから、予測不能の世の中にでて、勉強できない。
  • 世の中で人と協同作業をしつつ、問題を解決することができないl。
  • 2.1. 「黒船」再来 学校になだれ込むコンピュータ

    2002年からの「総合的な学習の時間」

  • 情報教育
  • ひとり一台のインターネットにつながったコンピュータ

    2.2. これまでのコンピュータ教育 - CAI (Computer - Assisted Instruction) -

    CAI (コンピュータによる教授支援)

    個人の「頭の中」に「知識」を「蓄積」することを、我慢強く、支援するものとしてのコンピュータ

    中には、ゲームをとりいれたり、キャラクターがでてくる「エデュテイメントソフトウェア」

    エデュテイメント(Education + Entertainment = Edutainment)とはいうけれど・・・

  • わけのわからないキャラクターがでてきて、励ましてくれる
  • だいたいの場合、「ゲーム」や「キャラクター」は、学習内容とは何の関係もない「コドモダマシ」だ
  • CAIは、従来の「学校」での「学び」をそのまま踏襲し、拡張してしまう可能性が高い

    2.3. 協調的知識創造のためには

    従来の「学校」での「学び」を変革するようなコンピュータの使い方をしなければならない

    新しい学校の学びは、「学び」を本来のカタチに「アタリマエ化」することで実現される

  • 人々の「協調」を重視する - 他者との協調 -
  • それをうまくおこなうために「道具」を用いる
  • 知識を蓄積するだけでなく、「知識を創造」することをめざす
  • コンピュータのたすけを借りて、協調的知識創造環境をネットワーク上につくりあげる

    それがCSCL(Computer Supported Collaborative Learning : コンピュータによる協調支援学習)だ!

    2.4. CSCLって何だろう?

    CSCLって何だろう?

  • 「コンピュータ」「コミュニケーションの道具」として用いることで
  • 「複数の学習者」たちが
  • 他の学習者たちと、あーだこーだ言い合いながら
  • 自分たちがマジになれるような問題を
  • 「協調して解決」し、「知識をつくりあげていく」ような試みの総称のことです
  • 1980年代後半に出現して、1990年代にブーム、2000年代にもっとも注目されている学習の方法

    北米を中心にはじまり、日本でも、近年、いろいろなCSCLが組織されています

    2.5. CSILE(Computer Supported Intentional Learning Environment) Project

    子どもたち同士で、疑問に思うことを互いにぶつけあい、協同的に探求しあいながら、協同の「知識ベース」をつくりあげていく実践。

    教師や専門家に、知識を「伝授」してもらうのではなく、子どもたち同士によって、知識を構築していく(Knowledge-Building)ことをめざしている。

    そのためのソフトウェアとして、以下のようなものが提供されている。

    佐伯胖(1997) 新・コンピュータと教育. 岩波新書 p180 - 181より転載

    2.6. YSN(湧源サイエンスネットワーク)

    若手の科学者たちとフツウの高校生が、「科学すること」を楽しむ場をネットワーク上につくりあげる

    フツウの授業の中で、アタリマエのようにネットワークを利用する

  • 科学的な「知識」を学ぶだけでなく
  • 科学ってこんなに「オモシロイ」
  • 科学することって、こんなことだったのか・・・
  • 科学者って、こんな人たちだったんだ
  • フツウの学校での「科学教育」は・・・

  • 先生はすでに答えをしっている実験を、あたかも未知の実験のようにやる
  • 実験で「たしかめられた」公式や原理を「個人の頭の中」に暗記する
  • テストでは、それら公式や原理を「暗記していなければ」できないような抽象的な問題がでる
  • 科学者や他の学習者とコミュニケートすることによって、学校の「科学教育」が「科学する営み」に変わってくる


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    NAKAHARA,Jun
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