2019.2.15 06:40/ Jun
「学費ですか?、正確には、いくらかかっているか、わかりません」
「勉強会に参加費かかるんですね・・・1000円ですか・・・高いなぁ」
「研修って、組織が出してくれますよね。無料じゃないんですか?」
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今から15年以上前のことになります。
当時、僕は、米国マサチューセッツ工科大学に1年弱、「フルブライト小学生!?」じゃなかった、間違い!「フルブライト奨学生」として留学の機会を与えていただき、同大学に客員研究員として滞在させていただく機会に恵まれました(心より感謝です!)
アメリカでは、語り尽くせないほどいろいろな経験をさせていただきましたが、当時の僕が試みた挑戦のひとつに、
「自分が参加したいと思ったワークショップ、カンファレンスには、どんなことがあっても参加しよう」
というものがございました。
「せっかくいただいた学びの時間」なのです。これを逃す手はない。大学の研究室に閉じこもるのではなく、足りない英語力であっても(本当に足りてない・・・泣)町にでよう。「機会があったら学んでみたい」と思っていた研修・ワークショップ、「いつか参加したい」と思っていたカンファレンスには、片っ端から参加することにいたしました。おかげさまで、この時期に仕入れた様々な知識が、人材開発という研究領域をその後に探究していく原動力になります。
参加してすぐに気がついたことがあります。
それは・・・「お金」が「飛ぶ」ようになくなっていくことなのです。
いつも財布はすっからかん。
あれよ、あれよ、というあいだに10万円。あれ、あれ、あれという間に20万円。なんだ、なんだ、なんだという間に30万円。
結局、この滞在中には、おそらく「車を余裕で買えるほどの貯金」を僕は使い果たしたような気がします(奨学金は生活費にはなりますが、学ぶための費用をカバーはできません)。
まぁ・・・貯金はなくなった。お金はかかった。が、得たものも多かった。このことに、今となってまったく後悔してはいませんが、つくづく思ったことが、これです。
「学ぶことって、お金がかかるんだな」
としみじみ思いました。
大学・大学院のうちは、奨学金をもらいながら、アルバイトをしつつ学んでいた方でしたので、「そんなことはわかっていた」つもりでした。でも、当時、大学・大学院の学費だけは、親が支払ってくれていたので(ないしは免除だったので)、「生活することにはお金がかかること」はわかっていても、「学ぶことにはお金がかかる」とは、今ほどまでには思っていなかった節があります。汗顔の至りです。
我ながら情けない気持ちにもなります・・・アメリカにまで行って気づいたことが、
「学ぶことって、お金がかかる」
なのですから(すみません・・・)。
でも、実際、そうなんです。
「学ぶことって、お金がかかるのです」
考えてみれば、米国滞在中、様々な学生に出会い、話をしましたが、「学費のことを話題にするひと」は多かったような気がします。みんな「なけなし」のお金をはたきながら、自分の将来を夢見て、学んでいる様子が印象的でした。
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ひるがえって日本。
おそらく、この記事をお読みの方のなかには、
えっ、学ぶことにお金がかかるの?
今、わたしは研修とか、授業を受けてるけど、1円も払っていないよって?
という方もおられるのかな、と思います。
しかし、それは「誰か(他人)が、あなたが学ぶためのコストを支払ってくれている」だけなのです。
公教育ならば国(税金・国民)が支払っている。児童・生徒一人あたりにつき、だいたい年間で100万円ほどになりますでしょうか。大学教育ならば、親と国が支払っている場合が多いと思われます。めちゃくちゃざっくりした計算ですが、おそらく授業1回をブッチした金額は5000円ほどになるはずです。企業教育ならば、企業が払っている。
しかし、誰かは払ってくれているんだけど、自分では支払ってはいない。
多くの場合、わたしたちは「学ぶこと」に対して「自分の腹」を痛めた経験が少ない。
つまり「自腹で学んだわけではない」。
ですので、
「学費ですか?、正確には、いくらかかっているか、わかりません」
「勉強会に参加費かかるんですね・・・1000円ですか・・・高いなぁ」
「研修って、組織が出してくれますよね。無料じゃないんですか?」
といった言葉がつい口にでてしまうのです。
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今日は「学び」と「お金」のお話をしました。
誤解を避けるために言っておきますが、何も高額なセミナーやら研修やらに行けといっているわけではありません。また、社会には、支払いたくても貧困ゆえに学費を支払えないひともいます。そういう方に対する社会的支援は、あってしかるべきです。僕がお話ししたかったことは、そういうことではないのです。
むしろ、僕が問題提起させていただきたかったことは、
自戒をこめて申し上げますが(さきほど懺悔したばかりです)
わたしたちは、自分の「学び」を「他人の財布」で実現しつづけてきたために「学ぶことに、お金がかかること」を忘れがちではないだろうか?
そもそも「学びは自腹」という感覚を思い出すべきなのではないだろうか?
そして
「学びにはお金がかかる」が、その場合は「学びはコスト」と考えるのではなく「学びは投資である」と考えることができないだろうか?
ということです
「他人の財布」は「あなたの将来」に投資しているのです。同様に、「自分の財布」をつかって「自分の将来」への投資するという感覚をもったほうがいいのではないだろうか
と思います。
皆さんはどう思われますか?
あなたは「学ぶこと」が無料だと思っていませんか?
あなたには「学びは自腹」という感覚がありますか?
あなたにとって「学びのお金」は「投資」ですか「コスト」ですか?
そして人生はつづく
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