2019.2.6 06:24/ Jun
『リフレクション入門』(坂田哲人、中田正弘、村井尚子、矢野博之、山辺恵理子 著、学文社、2019年)を読みました。ユトレヒト大学名誉教授のフレッド・コルトハーヘンが体系化したリフレクション論を、著者らがコンパクトにまとめ、また独自のワークショップやツールなどをつくり事例として編んだ、おすすめの一冊です。
僕自身は2014年のコルトハーヘンの来日のときに、彼のワークショップに参加させていただいたり、また、東大時代の元・同僚に著者の山辺恵理子さんがいらっしゃったので、本書の内容は、朧気ながらわかっているつもりでした。
しかし、これまでその理解は「点」と「点」であったような気がします。今回の著書をもって、「点」として理解していたコルトハーヘンのリフレクション論がむすびつき「点が点でつながった印象」があります。本書を編んでくれた著者らに、心より感謝を申し上げます。
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個人的にもっとも興味深かったのは「教えるひとにとっての不都合な真実」というコルトハーヘンさんの指摘です。
ここで「不都合な真実」とは、
1.まったく同じようにみえる教育実践を行っても、「同じ結果」が得られないことが多々あるということ
であり
2.その「効果の違い」は「教えるひと」の「あり方」が関係している
ということです。
教えるひとの「教える技術」とか「教えるスキル」とか「教える内容的知識」が多い、少ない、という議論をしているのではありません。「教えるひと」の「あり方」≒「存在の仕方」が実は、教育効果に影響を与えている、ということを指摘しています。
これは、「それを言っちゃえば、身もふたもない」とおっしゃる方もいらっしゃるかとは思いますが、「ハダカン」的には「そりゃ、そうだよな」と思い当たる節もありませんか。
「何を学ぶのか(What)」も大切だけど、「誰から学ぶのか(From whom)」は、学びの質に大きな影響を与えます。
このひとは、人間として、その「あり方」が尊敬はできない。
だから、どんなに「教えられて」も、入ってこない。
このひとは、人としてもはや「いかにあるか」という問いを捨てている。
だから、どんなに「教えられても」、学べない。
そういうことは、シャバの世界では、そこら中に広がっているような気がします。
だからこそ、「教えるひと」は自らの「あり方」を振り返り(リフレクション)し、時に補正していかなければならない、ということになるのでしょう。その具体的なやり方や考え方は、本書をご覧いただければ幸いです。
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最近、入試等々がはじまり、また、来年度の授業準備などで、忙しい日々が続いています。
僕自身にも「パサパサに乾いていく心」を見直し、「あり方」を振り返る時間が必要なようです。本書を読みながら、そのような必要性を、痛感しました。
あなたは、最近、「いかにあるか?」を振り返る時間をもてていますか?(自爆)
そして人生はつづく
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