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2019.1.23 06:42/ Jun

日本人が「グローバルリーダー」になりきれない、たったひとつの「理由」とは何か?

「グローバル企業で、日本人が最も苦手とすることはですね・・・英語じゃないんですよ。それが決定的に不足しているので、本社のリーダーには登用されない。苦手なこと、何だと思いますか? それはね・・・」
   
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 せんだって、グローバルに展開する企業の、ある人事担当者の方が、こんな意味深な問いを投げかけました。この方は、海外に本社をもつ企業で、かつて、リーダー養成を担当なさっていた方です。
 その方がおっしゃるには、日本人リーダーが、本社の人事責任者と面談して、本社のリーダーとして登用されない理由は「英語ではない」といいます。
   
「もちろん、英語能力も大事ですよ。でも、それは決定打にはならないし、ある程度、できれば、あとは仕事をアサインすれば大きく伸びる。だから、英語じゃないんです」
  
 じゃあ、何なのか?
 皆さんは何だと思われますか?
  
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 曰く、
  
「日本人リーダーが、グローバル本社でもリーダーとして登用されない理由は、社会を自分はどうしたい、と考えたことがないからなんです。面接でよく問われるのは、この3つの問いです。
  
 あなたは、社会のなかで、何が問題だと思うのか?
 あなたは、自分のビジネスで、社会をどのように変えていきたいのか?
 あなたは、ビジネスパーソンとして、社会にどのような貢献ができるのか?
  
 この3つの問いを考えたことが決定的に不足している。だから、この問いを上級管理職から面談で投げかけられても、答えに窮してしまうのです。たとえば、よく出てくる答えが「競合他社(コンペティター)に勝ちます」とか「課長として貢献できます」といったものです。それでは、さすがに、これ以上のポジションは厳しい」
  
「要するに、仕事を一生懸命しているのは素晴らしいことなのですが、目線が下がってしまっているのです。目線をあげて、社会を見なければ、それ以上のポジションにはあがれません。もちろん、アサーティブネス(自己主張)とか、他にも弱いところはありますよ。でも、決定的なものを1つ選べと言われれば、わたしは「社会を語る経験」が不足していること、と答えます」
  
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 この方のおっしゃっていることは、どの程度一般化できるかどうかは、僕にはわかりません。でも、「一生懸命仕事をするあまり」目線が下がってしまい、社会を見ることができない、というのは、なんとなくさもありなん、と思ってしまいますが、いかがでしょうか。こうしたことは、以前、過去にもいろいろ耳にしたこともありますが、現状が知りたいところです。
  
 ▼
  
 今日は日本人リーダーが苦手とする、たったひとつのことー「社会を語ること」についてお話ししてみました。
 社会を語るためには、常日頃から、社会課題を考える経験をもつことです。あるいは、一生懸命仕事をした際には、折に触れて、内省を試みることしかないのではないか、と思います。
  
 あなたの周囲のリーダーは、社会を語ることができますか?
 あなたは、自分の仕事で、社会をどうしたいですか?
 あなたは、一所懸命仕事をするあまり、最近、目線が下がっていませんか?
   
 そして人生はつづく
  
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