NAKAHARA-LAB.net

2019.1.9 07:01/ Jun

学会で「掟破りの逆サソリ」を期待される「色物」たちの悩み!?

「学会」のシンポジウムには「色物枠」というものがあります。
   
 学会のシンポジウムは、「学会の顔」であり「表舞台」。たいてい、大御所といわれる「大先生」が登壇し、いつも同じようなメンツ(イツメン)で、いつもと同じような話をしている(笑)・・・と仮に、します。「そんな学会は存在しない」とは思いますが、仮に・・・そういう学会が、あるのだとします(笑)。
      
 そういう「変わりばえのしない学会」の様子を見ていると、学会内部の、とりわけ若手の研究者としては、面白くない。刺激がない。なんか、「ちょっと変わったことをやっている奴」を「学会の外」から読んできて、ちょっくら「学会」に刺激を与えて欲しい。「僕らの七日間戦争(古い!)」の宮沢りえちゃんのように「みんなに一泡、ふかせてやろうよ」と言いたくなる。そこで登場するのが「色物枠」です。
   
 で、こういう「枠」になぜか、大変光栄なことに、お声をかけていただける機会が、一時期、大変増えました。
 まぁ、今から、10年くらい前のことです。
 不肖、中原に声をかけるとは、まことに勇気のいることです。
 心より感謝いたします。
   
 色物認定(笑)。
 色物だぜーウェイウェイ!(笑)。
     
  ▼
  
 ところで、一般に「色物」は「自由人」だと思われています(笑)。
  
 なぜなら、色物は、学会という権力や権威には、いっさい縛られていませんので、「学会の外」から好きなことを言える、と考えられています。そして、ここに「厄介なこと」がおきます。
  
 登壇の依頼者からは、最初、
  
 先生の立場から、この学会の問題を「ズバーン」と指摘してください
  
 と言われてしまうのです。
 が、、、まことに恐縮に存じますが、「色物」には、そもそも「学会の問題」はわかりません(笑)。
 申し訳ないけど、「学会の外」の人間なので、そもそも「知らない」のです。
    
 やれやれ困った・・・なんか、雲行きが怪しくなったぞい・・・と思いつつ、しょうがないので、
   
 じゃあ、依頼者のXX先生自身は、何が「学会の問題」だと思っているのですか?
  
 と、逆に、うかがうことになります(笑)。
  
 そしたら、たいていの場合、でてくるわ、でてくるわ。
 学会への「不満」が・・・(笑)
  
 この学会は、ホゲホゲのところがチョメチョメでだめなんですよ
 この学会の悪いところは、ホニャホニャしているところですし、ちょっとチョメチョメなんですよね
 この学会はですね、むかしはホゲホゲだったんですが、最近はニョロニョロしてて、元気がないんです
  
 だからこそ!、中原先生に、こうした問題点を
 ババーンと、学会のみんなに言っていただきたいんです!
 お願いします。学会のシンポジウムに登壇してください!

    
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   
 あのさ・・・ひとつ言っていい。
   
 それ、自分で、言いなよ(笑)
 なんで、オレが、代わりに言うのよ(笑)
 恨まれるの、オレじゃん(笑)
   
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
    
 しかしながら、そういう「パッション」に「色物」は弱いのです。 
 色物は、ついつい若手研究者?、改革者が「目をうるうる」させて訴えてくる、この「熱意」にほだされて、学会に、しぶしぶ「登壇」することになります。気乗りはしません。しかしながら、依頼されたことは、しっかり果たします。それがプロです。
 自分に課せられた役割と、台詞をしょって、敢えて「ヒール役(プロレスで悪役を担うレスラーのこと)」を「演じる」のです。
   
 で、学会で、ババーンと言う。
 学会員ならとても言えないことを「掟破りの逆サソリ」的に、ブチかます。
  
 会場、ざわつく。
 大先生、激怒。
 司会者、とんずら。
  
 ぼく、無駄に、恨まれる(泣)。
 依頼者、喜ぶ(笑)。
   
 ぼく、トボトボ帰る。
 その学会に、二度と呼ばれなくなる。
  
 これが悲しき「色物道」です。
  
  ▼
   
 最近は、めっきり学会にうかがうことも少なくなりました。
  
 共働きの子育てをしておりますので、極力、週末をあけるイベントには、僕は登壇しないことにしているせいです。また、研究知見の発表ならうかがいますが、「掟破りの逆サソリをブチかます的な活動」を期待されている場合には、極力「行かない」という選択肢をとることにしています。
  
 でも、「色物」としては思うこともあります。
   
 自分の学会がいかにあるべきかを、
 自ら問えなくなってしまった学会は、
 たぶん、遅かれはやかれ、消滅の方向にあるのだ、と
  
 イツメンばかりが集い、
 いつもの話を永遠としている学会は、
 遅かれはやかれ、沈滞の方向にあるのだ、と。
  
 まぁ、色物に頼りたい気持ちもわかるけれど、
 そこは、ちゃんと構成員同士で向き合って、話をしなさいよ、と。 
 僕は、恨まれるの、嫌だよ、と(笑)。

 「色物」にも悩みはあるんですね(笑)・・・ははは。
 というわけで・・・今年も、「色物枠」で、いくつかお邪魔させていただきます。
 
 石、投げないでね。
 演じてるんだから(笑)
  
 そして人生はつづく
  
※「掟破りの逆サソリ」は、この場合の表現としては、プロレス的には不適当だそうです。ご指摘ありがとうございます。「怒りのアッパーラリアット」とかに訂正したいのですが、こうすでに流通しておりますので、このままにしておきます。皆さんがお使いの場合は、他の「技」になさってくださいませ!

 ーーー
  
新刊「残業学」重版出来です!(心より感謝です)。AMAZONの各カテゴリーで1位を記録しました(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
  
新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・トーマツイノベーション著)が、ついに刊行になりました。AMAZONカテゴリー1位「企業革新」「女性と仕事」。女性のキャリアや働くことを主題にしつつ、究極的には「誰もが働きやすい職場をつくること」を論じている書籍です。7000名を超える大規模調査からわかった、長くいきいきと働きやすい職場とは何でしょうか? 平易な表現をめざした一般書で、どなたでもお読みいただけます。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
  
新刊「組織開発の探究」発売中、重版3刷決定しました!AMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しています。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
  
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
中原研究室のLINEを運用しています。すでに約10000名の方々にご登録いただいております(もう少しで1万人!)。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
  
友だち追加
   

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.25 10:57/ Jun

「最近の学生は、昔からみると、変わってきたところはありますか?」という問いが苦手な理由!?

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.29 08:36/ Jun

大学時代が「二度」あれば!?